3話、公園にて契律違反
外に出ると自称天使は空を見上げていた。
「お、早かったな。もういいのか?」
「ああ。伝えることは伝えきったよ」
空を見上げると雲一つない晴天だった。
「そういえば、光秋の娘には僕が見えたみたいだ」
自称天使は感心したように頷いた。
「子供は霊感が少なからずあるからな。そいつは強いんだろう」
「僕に触れることは出来るのか?」
自称天使は考えるようなそぶりをしながら、宙に目を泳がせた。
「無きにしもあらず、ってとこだ。オレは知らねーし、見たこともない」
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絵梨の家の突き当たりを曲がり、公園の前を通った時だった。
「知らないって…ちょっとあれ見てくれ」
交差点に男の子が一人立ち尽くしていた。
見た感じ、まだ5、6歳といったところだろうか。 遊んで疲れたような表情をしている。
「あれがどうした?まさに元気盛りの子供だ」
「何か様子が変じゃないか?」
あの歳の子供がじっと一人で立っているなんてやはりおかしい。
見渡しても親らしき人影はどこにもない。
「気にするなよ、あんなのよく見るだろうが」
「なんだって?」
よく見る?そんな訳ない。今は犯罪も増えてるんだし、あの年頃の子供を一人で置いて、横断歩道に立たせておくなんて変だ。
自称天使もどこと無く変な反応をしている。
今すぐにでもこの場を離れたがってる、そんな感じだ。
「もしかして僕に何か隠してるのか?」
「ば、バカ言え!一体、何を隠すってんだよ!」
顔には明らかに動揺の色が浮かんでいる、黒だ。
一体何を隠してるんだ?
「さ、行くぞ、お前にはもう時間がないんだ」
「それは分かっ…危ない!!」
男の子めがけて猛スピードでトラックが突っ込んできた。
待てよ、ノーブレーキだ!
「頼む、間に合ってくれ…っ!」
僕は考えるよりも先に体が動いていた。全力で走り出して一気にトップスピードで駆け抜けて、男の子を抱え、車を避けきった。
僕も昔と同じぐらいの早さでまだ走れるんだな…
「よかった…」
どこからともなく母親らしき女性が現れた。
「ヒロキ!公園から出ちゃダメって言ったじゃないの!」
「今ね、お兄ちゃんが助けてくれたんだよ」
母親は涙を流しながら子供に抱き着いた。
「そんな人どこにもいないじゃない…もう心配させて…帰るわよ」
男の子は僕をじっと見つめてから歩きだした。
「うん。ばいばい、お兄ちゃん」
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ふと視線を感じて振り返ると、自称天使はため息をついていた。
「こいつは…ちょいとばかしヤバイ事になったぞ」
「僕が間違ってる、とでも言うのか?」
「命を助けるのは正しい、がいつでも正しいことが間違いと相対してるとは限らんのだ」
意味が全然分からない自分がもどかしい。自称天使もまた、それを読み取ったんだろう。
言葉を変えて再び話しだした。
「つまり、お前は死んでて、あの子は生きてる。
お前が生きてる人間ならば何の問題もなかった訳だが…。
簡単に言えば、死んだ人間が生きてる人間に譲歩してはならない。
殺人や命を救うなんて以っての外、論外だ!」
自称天使は目をつむるとまた、ため息をついた。
「なぜか知らんが助けることができた。普通ならば死が決まった人間を…」 何かに気が付いたように話すのを止めた。
「どうした?」
「勝てないな…逃げるしかない!」
自称天使が逃げ出そうとした瞬間には後ろに白いワンピースを着た女性が立っていた。
「よくそんなに規則がやぶれるもんね」
女性が手をかざすと自称天使は吹き飛んだ。




