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アーセナル 〜God’s gate〜  作者: 大質量黒穴
第一章 勇者と闘志の烈炎/勇者と静かなる清流
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第一章 第一話 9年後

俺はライト。16歳だ。あの実験施設から抜け出してこの家に住んでからもうはや9年が経過している。その間にも色々あったが、特筆すべきことではないかもしれない。

一応、スペルマータの初公判があの2年ほど後にあって、その判決が少し驚くものだったことだろう。

何せ、あんなことをしたのだ、当然無期懲役や少なくとも懲役20年は下らないだろうと思っていた。だがしかし、その予想は見事に外れた。懲役10年という、短いと思えば短いが長いと思えば長い、そんな実刑判決が出たのだ。

あとは、エリスの力が最近さらに強まってきたことぐらいだろうか。9年前に邂逅したエリスだが、それは実は力を使い果たした不和の女神の抜け殻のようなもので、精神面でも元神とは思えない、見た目通りの年頃の少女のような感じになっていた。しかし、9年も経っているのだから少しは見た目に変化があるだろうと思いきや、神の力によるものなのだろうか、不思議なほど歳をとっている様子がない。つまり、9年前の17歳の時点から全く見た目が変わっていないのだ。おかげでエリスと一緒に出掛けている時に同級生に会うと必ず、「お前彼女いたんだな!? しかもめちゃくちゃ可愛いじゃねぇか!」みたいなことを言われたりもする。その時は必ずすぐに否定をするのだが、何度か「彼女ではない」というには無理があるような場面もあった。

ある月の出来事だが、俺が朝起きたらエリスが俺のすぐ隣で寝ていたのだ。服は非常にシビアなレベルで肌けていて、その姿に思わずエリスを襲ってしまいそうになったが、なんとかその煩悩を振り切って部屋から立ち去った。

しかし、今に思えばその状況は第三者から見ればいわゆる「朝チュン」と言われる状況になりかねなかったわけだ。幸い、エリスが基本的にはショタにしか食指が伸びないおかげで、俺の貞操は侵されなかったわけだが。

そう言うことを考えているうちに学校に行く時間ではないか。俺の家は学校から比較的近い場所に位置はしているが、学校の最寄り駅よりは遠く、しかしその隣の駅よりは圧倒的に近いので歩いていかねばならず、めんどくさいことこの上ない。

「ん?え なんでうちの制服着てんの?」

「今日からわたしも行くから。」

いや待て。保護者に当たるレクスからはそんな話は聞いていない。しかも、エリスはもう26歳ではないか。高校に入学するにはずいぶん遅い年齢だ。そもそもエリスは、俺と会った時にはもう17歳で、その後も高校には欠かさず行っていたし、大学にもいって学位も取得したのだからもう学校に行くようなことは先生になるのでもない限りは、行く必要がないはずだ。

「え 何故に。」

「なんか、学校で起きた不可解な事件を調査しろって、レクスに言われてさ?」

なんだ。レクスの客からの依頼か。レクスは大学教授だが、何故か兼業のようなことをしている。ただ、その仕事は仕事というより単なる趣味で、収入は全くない、ボランティアのようなものだ。しかし、懸賞金がかかった事件を調査すれば少なからず金が入るので、そういったことは積極的にこなすようにはしているらしい。だが、俺はレクスから仕事を請け負ったことがないし、見学させてもらったこともない。理由は単純明快。俺に戦う力がほとんどないからだ。9年前と比べてある程度身体能力は上がっているとはいえ、それでもエリスのように超人的な戦いができるわけではない。それ故、レクスたちが具体的にどんな方法で調査しているのかは知らないのだ。

「そろそろ行くぞ…..っていない!?」

どうやら先に行ったらしい。神の力とやらで瞬間移動でもしたのだろうか?それとも持ち前の身体能力で走っていったのか?また気づけなかった…..

「仕方ない…1人で行くか」

神戸というのは、日本の中でもそれなりに大きい都市だ。俺自身は中央区の北野というところに住んでいる。北野は異人館で有名だが、同時にキツイ坂がずっと続いているから、その周辺に住んでいる人は足腰が鍛えられる。

が、レクスのトレーニングでその程度の坂はなんともないぐらいまでは鍛えられているので、そんなのはどうでもいい。

そして、レクスの教育の成果ともいえよう。俺は神戸大学法学部に進学できるほどの学力はあるのだが、俺自身はそれほど法学には興味がない。何故ならば、レクスが行っていたのは魔法学部という、その名の通り魔法を学ぶ学部なわけだが、そこに入らないと自由自在に魔法を学ぶことはできないののだ。そして、理学部も捨てがたい。現代魔法と物理学や化学は密接に関わっていて、理学部の側からしか得られない知識と経験というのも多く存在する。それゆえに、法学部にはそれほど興味がないのだ。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

学校に着いた。俺が通っているのは神戸高校という、県内でもトップレベルの進学校だ。入学する前。特にあまり神戸高校について調べていなかった頃は「神戸高校は賢い人じゃないといけないから、きっと生徒もしっかりしているのだろうな」と思っていて、そこから学べることもいろいろあるだろうと思っていたのだが…あまりこういうことを言うのはいいのかどうかわからないが、期待ほど大したことはなかった。

と言うのも、公立の全日制の高校であるからして画一一斉授業と言うのがほとんどである。画一一斉授業ということは、自分でカリキュラムを組む必要がないのだ。その点において、主体性がまだまだ足りないという意味で期待ほど大したことはなかったと感じた。

「エリスはちゃんといけただろうか….」

少し心配だ。だがまあ、エリスに限ってそんな心配しても仕方がないような気がする。何せ神だ。それぐらい自分でどうにかするだろう….

「でもやっぱ心配やな….まあいっか」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

1日はあっという間だ。授業が始まったかと思えばすぐに終わる。しかしながら、今日はエリスがいたせいかもしれないが、やたらと長く感じた。そして、学校の中の時計はもうすでに午後8時を示している。どういうことだろうか?

「外はまだ全然明るいのに…帰るか」

俺は荘厳な門を出てすぐのところにある、地獄坂と呼ばれる傾斜のキツイ坂を用心しながら下っていった。そして、バス停まで後少しで着くというところで、車道を挟んで向こう側に怪しい人影を見かけた。その怪しい人影は俺に目撃されたのに気づくと、瞬きする間の時間で向かい側の歩道からこっち側の歩道まで近づいてきた。

「っ….速い!?」

予備動作がなかったようにも見えた…いや、そもそも予備動作があったとして俺が目視できるスピード出なかったといった方が正しいのかもしれない。その人影は確かに人だ。それだけはわかる。しかし、それ以外の情報が全くわからない。声も出さないし、顔もほとんど見えない。まるで幽霊のような、奇妙な不気味さがある。

「対…..s….. 任m…..行…る」

ん?聞き取れなかった。なんといっていたのかを推測してみようと思ったが、そんな暇はなさそうだ。推測している間に殴られでもしたらひとたまりもなさそうだからな。でも….ここは人通りも多いからあまり戦いたくはないし….一旦話しかけてみるか。

「あの…私に何か用でしょうか?」

「対……会話…..みている」

今度はもう少しだけはっきりと聞き取れた。だがやはり何を言っているのかわからない。ただ、何か他の場所にいる人と遠隔で話しているのだろうか、なんだかそんな感じの声だった。もう一度会話を試みてみようとするが、言葉を発しようとして口を開いたその瞬間

「対象nを抹殺する。」

対象nってなんd

「ウォエイ!!!! あっぶね〜….死ぬかおもたわ….」

考えている途中に攻撃してくるとは、卑怯な奴め!…相手はそんなこと気にするわけないよな。そりゃ当たり前か。しかし、今は気を緩めていい段階では決してない。俺は次の攻撃に備える。

「頼むぜ….」

しばらく戦闘することがなかったから、直前まで「どうしようか…ちゃんと戦えるのか?」と心配していたが、さっきの攻撃を避けれたのは幸い。この流れをしばらく維持できることを期待するが….しかし相手の攻撃が凄まじい!素人の動きじゃない。素人なのは俺も同じだが、俺は素人の中でもだいぶ鍛えられたおかげで、家々の屋根を跳んで移動するぐらいの身体能力はあるはずだ。それでも、避け切るので精一杯。しかし、避けに徹していてもジリ貧なわけなので、俺も攻めに出ることにする。

「セイッ! 」

攻めに転じて直ぐに繰り出した攻撃が、当たった。そうだ。当たったのだ。そして、相手のカウンターもまた俺の鳩尾を直撃した。

「ゴハッ!!!!」

 そしてライトが倒れ切る前にその謎の人物はライトの首を掴み、持ち上げ、そのまま壁へ押し付け、圧迫を続けた。首には呼吸をするために重要な器官が詰まっている。そこを絞められたライトは必死にその手を解こうとしたが、解こうとすればするほどにその絞める力はキツくなっていき、ライトの意識は朦朧とし始めた。あと少しで気絶、あるいは絶命しそうだった。そのとき虚空から謎のゲートのようなものが開き、そこから虹色の斬撃が飛んできて

「・・・・・・・ザーーーーーー!」

謎の人物を跡形もなく消し去った。

第一章の開幕です。以上

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