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アーセナル  作者: 大質量黒穴
序章 脱獄
3/5

序章 第三話 探索

「探索というが、まずはどこへ行く?このまま脱出するか?それとも地下五階に降りるか?」

「そうですね…地下五階からでも地上への近道があるのならば、地下五階を探索してからの方がいいと思います。」

じゃあまずは階段を降りることから始めるが、やはり監視の目は多い。どうにかして監視を抜けなければならない。

一人程度ならなんとかなるが、流石に数人相手だと対応できないため、できる限り戦闘は避けたい。

「煙幕よ。」

耳を疑うような発言をしたのは、エリスだった。しかし、彼女の表情を見るに真剣なようだ。

何か考えがあるのだろうと思い、

「どういうことだ?何か作戦があるのか?」

「煙幕を使うの。そうすれば、相手の目を盗めるわ。」

「煙幕って…煙幕弾でもあるのか?」

「そんなの無いに決まってるでしょ?散歩中に連れて拉致されたんだから。」

となると、魔術の類かもしれない。でも、煙幕なんて撒いたらこっちも仲間の居場所がわからなくなる。

そこらへんの対策はあるのだろうか?もしかして、術式の対象を選択してその対象だけに効果のある術を持っているとか?

「技の対象を監視役のみに絞ればできるわ。さっさとやりましょ。」

「そうだな。じゃあ、任せた。」

「धूम(ドゥーマ)」

は?今何つった?聞き取れなかったんだが。

「え?サンスクリット語!?今サンスクリット語使いましたよね!?」

「声がでかい!」

「そういうお前も声を抑えろ。」

サンスクリット語…が何かは俺にはわからないが、とりあえず先を急ぐ。でも、濃い煙のせいで前が全く見えない。今一体どこにいる?

「ターゲットセレクト…煙払い(ドゥーマ・ソーダヤティ)」

そうエリスが唱えると、選択されたメンバーのみ、煙に覆われた視界がクリアになった。


お?見えるようになった…エリスの魔術か。でも相変わらず聞いたことない言語だ。だがそんなことはどうでもいい。先へ進むことが今は取り敢えず重要なのだから。

「今のうちに急ごう。いつ効果が切れるか分からん。」

そう言い、一行は地下五階へ続く階段を駆け降りていく。途中途中罠が仕掛けられていたり、監視カメラがあったりと色々とあったが、基本的に英次郎が全ての構造を把握しているため、なんとか引っかからずに進んでいけた。

だが…

「地下四階まで来たはいいものの….これが地下五階に続く階段か?」

「おそらくそうだと思います。」

地下四階までの階段を降りた先に広がっていたのは、地下へと果てしなく続いている一つの広い階段である。

途中までは灯りもついているようだが、それよりも下は少しづつ灯りが置かれている頻度が下がっていき、最終的にはほとんど何もない状態になっている。

「本当にこの階段であってるの?なんかすごく不安なんだけど。」

「この下には通常見られないようなものが多く隠されている。実験施設の内容が漏れてはいけないから、普段はこのように見えないようになっている。」

通常、この階段の先に続くのは自分の部屋。実験施設の内容が漏れないように、一般の人間には視認あるいは接触ができないように、実験施設のみ異空間に転送されている。しかし、ここの職員たちは別だ。

彼らには、実験施設が見えているし、異空間ゲートも通る必要がない。なんらかの鍵によって実験施設側が異空間から本来の場所へと戻ってくるような仕組みになっている。


「ここは俺が先に行こう。お前たちは後からついてくるだけでいい。そうすれば実験施設にも一緒に入れるだろう。」

「了解」

そういいながら、階段を降りていく。しばらくすると、急に目の前に謎の壁が現れた。その壁には扉もなければ開けるためのギミックもないように見える。

しかし…実験施設の関係者が壁に触れただけで、その壁は取り払われた。

さらにしばらく階段を降りていくと、今度は左右に続く廊下が現れ、ようやく地下五階に辿り着けたと認識した。

「やっぱりここで良かったんだな。」

その少しの安堵も束の間。数人の監視役に取り囲まれた。

「このぐらいなら…まとめて相手…する必要もないわ。転送(トランスポート)

そうエリスが唱えると、見事に監視役が目の前から消えた。少しは魔術に対する対抗手段があるのかと思っていたが、実際はそうではないらしい。手も足も出ず、瞬時に魔術が効いたようだ。

「これは、どっちにいけば良い?」

「左だ。左に行けば実験施設の入り口がある。」

廊下を左に曲がり、進んでいくとすぐに実験施設の入り口が見えた。しかし、実験施設に入るには12桁の暗証番号と管理者の遺伝情報、そして顔認証や指紋認証、数個のクイズなど大量の認証が必要であり、そこで英次郎は辞退したようだ。

今回は実験施設の管理者がいるため、それに手こずる心配はなさそうだ。

「なんか不安だな。ここまで対して強い相手と出くわしていない…」

「このメンツが強いからじゃないですか?」

「そうだと良いんだが….」

管理者は猛スピードで解除の作業を行なっている、と思っているうちに数秒で実験施設の入り口が開いた。相当手慣れているようだ。もしくは何かの裏技か?

「ここが、その実験施設だ。」

「なんだか…すごく綺麗ね。」

研究所というのは、一般的に綺麗でないと実験に支障が出る。だからかもしれないが、しかしそれ以上にそもそもあまり使われている感じがしないぐらいの清潔感がある。

中へ入ると、幾つもの部屋がありそれぞれの実験テーマごとに部屋を分けているようだ。

「魔術と感情に関する、記憶改竄による魔力量の変動?」

「どうやら研究結果を発表しているポスターのようですね。」

「ってことは、ここが目当ての実験室ね?」

「じゃあ、入るか。」

部屋に入ると、そこに並んでいたのは人が入るような大きさの無数のポッドのようなもの…とそれに関する実験用の器具がたくさん並んでいる。

「おいおい…なんの権限もない収容者を事前申請なしに連れてきてどういうつもりだ?」

「誰だ。」

そこにいたのは…どうやら別の研究員のようだ。見つかってしまった。捕まえた方の管理者とは仲が良さそうだが、それもここまでのようらしい。

「こんな研究、もうやめよう。」

「なるほど….俺たちを裏切るっていうことか。なら生かして置く理由もない。お前は良い研究パートナーだと思っていたが….どうも違ったらしいな。」

彼らが言い争っているうちに、俺たちは実験施設にある端末のロックを開けようと試みた…が言い争いもすぐに終わりそのような余裕も無くなった。

「おい!光、エリス!こいつを頼む!その間に俺は端末にアクセスして、この実験施設のシステムを出入り口に関連するもの以外全て停止させる!」

「俺は戦えねぇぞ…まあいいか。そういうなら、俺も少しぐらいは戦わないとな。」

「だめ!光には荷が重すぎるわ。」

「でもエリスにばっかり戦わせるのも悪いし…」

そう話していると、隙ありと言ったかのように一人の研究員が襲いかかってきた。

「おい!始末する前に聞いておく!貴様の名前はなんだ!」

「俺?なんの権限も持ち合わせない収容者なんかに教える名前なんざねぇよ。」

そう言いながら、研究員は光の腹に重い拳を一撃入れ、俺をノックダウンさせようとしたが、その直前にエリスが防御魔術を展開し攻撃を防いでくれた。

「ちっ….面倒だ…まずは魔術使いからだな!」

そう言った研究員はさらに殺意極まった表情で今度はエリスの鳩尾を狙った拳を入れようとすると、またもやエリスが防御魔法を展開した。

「後3回…俺の攻撃を防げるのは後3回までだ。」

どういうことだ?なぜ後3回までなんだ?

「俺の攻撃は相手の魔力を吸収して、自身の攻撃に転用するんだよ。さて…トドメだ!」

同時に三発の拳がエリスの方へ向かっていく。エリスは防御魔法を展開したが、最初の時よりも薄くなっており、彼の一発目の拳で割れてしまった。

エリスに二発目の拳があたろうかという瞬間、光の体が咄嗟に動き、エリスを庇って残りの二発の拳を一発は頭に、もう一発は肩に喰らってしまった。

頭に拳が当たり、頭に衝撃が走った瞬間、謎の記憶が頭の中に大量に流れ込んできた。

「そんな…早く治療しないと…でもまだ彼を倒せてないし….もうちょっと待ってて。すぐに助けるから。」


「うっ…痛ってぇ….なんだ…この記憶は….」

衝撃によって流れ込んできた記憶の中から、これが誰の記憶なのかを推測する。するとすぐに、ある結論に辿り着く。

「思い出した…俺の…ここに連れてこられる前の記憶を。」



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