序章 第四話 追憶
「思い出した…俺がここに連れてこられる前のことを。」
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これは3年前のこと…光がまだ4歳だった頃の話。
彼の家族は3歳の妹と、父親と母親の四人だった。ごく普通のマンションの一室で暮らす、世帯年収も食うには困らないが、あまり贅沢はできない、そう言った具合の普通の家族だった。
彼らは東京に住んでいたが、当時はそれほど物価も高くなかった上、土地での投資が今ほど流行る前のことだったから、ある程度の収入があれば家を買うのも難しいことではなかった。
夏のある日、その家族は滅多にしない家族旅行をしに行く決意をした。そのために、交通状況の確認や宿の準備をした。
「ねえねえ どこに行くの?」
そう光が父親に聞くと、すぐに答えが返ってきた。
「神戸だ!…..って言っても、わからないか?」
「こうべ…ってどこ?」
神戸…兵庫県神戸市は、当時人口約154万人の地方都市で、明治時代から港町として栄え、阪神淡路大震災直前には東洋一の貿易港と言われるまでに発展した、あの都市だ。
「神戸はここよりも西の方、遠くにあるところ。」
そう教えてくれたのは、母親だった。4歳ぐらいであれば、その説明である程度理解できるだろう。彼はそれで十分に満足した。
翌日、彼ら家族は神戸へと出発した。交通手段は、車…と言いたいところだが、何時間も運転するのは流石に辛かっただろう。だが、車で神戸まで行ったのだ。
途中、静岡や名古屋へも寄り、一時休憩もした。そして….まず、神戸市に着いて最初にしたことは他でもない。
何時間も車で走っていたためすでに夜だったので、彼らは神戸港、ハーバーランドで夕飯を摂った。
その後、宿泊先のホテルへ行った。
「ここに泊まるの?」
「すまんな…宿はあまりゴージャスだと出費が嵩むんだ。一見質素に見えるが、普通に評価は高いぞ。」
当時はあまり気にしていなかったが、よく考えればあの時に泊まったホテルはかなり豪華な感じがしただろう。なんたってホテルオークラだ。質素なはずがない。あの時の父親は一体なんてことを言っていたんだ。
とにかく、その後チェックインを済ませ、彼ら家族は皆就寝し、それで1日目は終わった。
2日目はまず、ホテルオークラで朝食をとった。光は長田ぼっかけのオムレツを、母親はビーフンを、父親は出石そばと、それぞれ全く違うものを食べた。
そして、ホテルから出発すると、北野へ向かった。北野には見慣れない洋風の、豪華な建物が多く、そして何より坂がきつかった。
「疲れた〜」
「頑張れ〜 車を使う手も考えたが、それだとなんだか味気なさそうな気がしてな。我慢してくれ。」
東京にも坂は多いが、神戸は山と海に囲まれている地形だからか、勾配がきついし山の方はどこに立っていても常に坂のような感じだ。
北野異人館街を一通り回った彼ら家族は、北野坂を下り、南京町というところへ行った。そこには、観光客が大勢いて、活気に満ちた様子だった。店がたくさんあり、手軽に食べることができる揚げ物や点心を売っている店も多く並んでいた。その周りでは、鳩がおこぼれをなるべくたくさん貰おうとして、鳩同士で喧嘩もしていた。
俺たちは昼を老祥紀で食べた。老祥紀で食べたと言っても、あの店には豚饅頭しかないので、豚まんを食べたのだが。
そのあとはカワサキワールドや、神戸駅周辺を楽しんだ。そのあとは特筆すべきこともなく、2日目も終わった。
問題は最終日だ。3日目なのだが、ある程度観光したし、みんな疲れ始めていたので帰ろうかと思い、実際ホテルを予約したのは三日間だけなので、チェックアウトして、その後は車に乗って帰路へついた。
しかし、車に乗って帰っている途中、何者かに襲われたのか急に車の軌道が少し横方向へ外れ、俺たちの乗っていた車は高速道路の壁に衝突してしまった。
幸い、父親も母親もあまり大きな怪我はしておらず、すぐに警察を呼んだ。
警察を待っている間のことだ。謎の、悪そうな人物が現れ、突然妹の方に手を伸ばした。
「何するつもり?」
「誰だか知らないが、俺たちの子供に勝手に触るな!」
そう言って父親と母親はその人物を牽制した。しかし、その男はあまり動じた様子は見せず、即座に次の手にうつった。何をしたかと言えば、武器や手錠などを取り出し、両親を脅しながら俺たちを拘束しようとしたのだ。
「ライト…フィリア…お前たちだけは、誰にも連れて行かせない。殺させもしない。」
「だから、早く逃げて!」
「でも…..」
「頼む….今回だけは絶対に言うことを聞いてくれ。」
「いやだ!お母さんとお父さんと、一緒に家に帰るんだ!」
その不条理な状況をもたらした、謎の男に対する怒りと、早く逃げなければいけないと言う恐怖、このままでは家族がいなくなってしまうかもしれないという焦燥感で胸がいっぱいになった。
その時、初めて俺は魔力を獲得し、その力で謎の男と対峙した。
「俺の家族は….俺が守る。」
「素晴らしい!膨大な魔力だ!この魔力があれば!我々の実験も最終段階へと移ることができる!」
「空を臼として、視界の敵をすりつぶせ…エル・へームル…」
なぜ昔自分が使えたのかわからない、非常に強力な魔法を使いこなしていた。しかし、男も負けじと抵抗し、実力がほとんど同じだったため、お互いの魔力が残りわずかとなるまで戦闘が長引いた。が、しかし俺はなんとか勝った…と思っていたが
「はぁ…はぁ……..あれ?….みんなどこ?」
勝ったと思って、みんなを探したが、見える場所にはどこにもいない。確かに戦っている時にはすぐそこに家族全員いたはずだし、しっかり攻撃からは守っていたはずだ。なぜか分からなかったが、それに気づく前に倒したはずの敵が生きて目の前に立っていた。
「ふっ….油断大敵って言葉……知ってる?」
その男が持っていたのは、俺の家族だった。しかし、フィリアは居らず、父と母のみだった。男はまだ息のある外れを勢いよく放り投げ、俺はそれに衝撃緩和魔法をかけた。そのおかげで、衝撃によって怪我をしてしまうのは防げた。しかし、魔力がもう残りわずかなはずの男は、今がチャンスだと言わんばかりに大技の準備を始めた。
「なにをするつもりだ….」
「何って…いい加減飽きたし、お前達を生捕りにするの難しそうだから、始末しようと思って。」
そう言った直後に、大技の準備すらも終わり、その渾身の大技を俺たちに向かって放った。俺は残りの魔力を全て使い切り、なんとか家族を守ったが、魔力切れで気絶した。
その後の記憶は、実験施設に連れて行かれてからの記憶だから、連れて行かれる前の記憶はここで最後だ。
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「思い出した….ここに連れて行かれる前の記憶を」
「あっ!やっと目が覚めた!」
俺はあの後、どうやら気絶していたらしい。
「あなたが気絶したあと、しばらく我々が応戦し、敵にとどめを刺してくれたのは、エリスさんでした。」
「大変だったんだから….」
今どうなっている?早く状況の確認をしないと。ここは….実験室ではないようだ。どうやら俺が気絶している間に俺を運んで作戦を次の段階へと移してくれていたようだ。
「それより…これは…..相当まずいことが起きたぞ….奴が来やがった!」
「なんだ…まずいことって…..それに奴って….」
待て…あの男は誰だ….見たことがない。髪は至って普通の黒髪だが、瞳は赤く、かなり鍛えた体をしている。そして彼から感じられる気配はどこか涼しげだが、しかしドロドロとした黒いものがどこかで渦を巻いているような、そんな気配だ。しかしここに居て、ここの制服を着ていると言うことはここの研究員か何かか?
「ここ全体を統括する、統括官。名は、ジュピター・クラウディオスだ。」
この回想シーンでは、わざと一人称視点の地の文と三人称視点の地の文をごちゃ混ぜにして書いています。
(本当は自分でもよく分かってなかったなんて口が滑ってもいうもんか!)
しかも….なんか観光パート多くしすぎたかな….いや きっと気のせいだ。うん….気のせい…気のせい…




