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アーセナル 〜God’s gate〜  作者: 大質量黒穴
第一章 勇者と闘志の烈炎/勇者と静かなる清流
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第一章 第十三話 情報解析II

レクスとハルトは通信機器のデータの解析を続ける。これまでに蓄積された、大量のデータ。そこから敵の位置情報や詳細が把握できることを信じて。そして、通信機器に入っていたのは音声データやテキストファイルだけではなかった。映像データもいくつか残っていた。

「これは….10年前から、データの蓄積が始まっている….」

レクスはそれを見つけた…データ上の最古の記録。

10年前といえば、あのM&Eがライト達に崩壊させられるよりも前である。それほども前から、魔王とスクリプターの関係は始まっていたということになる。

「しかし….なぜこれほどのファイル….削除されていないんだろう…」

アイリスは疑問を呈した….アイリスの中に一つ不安がある。本当に、科学者としての性でしかないのだが、それでも無視できない疑問。罠である可能性だ。情報をわざと公開することで、それを見るであろうものを誘き出して、それを叩く作戦なのかもしれないという不安がアイリスの頭を過ぎったのだ。しかも、10年前からということは自分たちが魔王を倒す前ということだ。普通なら、その情報は見つかっててもおかしくはない。これがあればもっと魔王を早く見つけ出して倒せていたのかもしれない….そう後悔もしたが、顔にも声にもそれは出さなかった。

そして、罠である可能性だが、それもそれほど根拠のない不安でしかなかった。情報を見なければその判断はできない。ならば、情報を見て行くしかないではないか。

10年前のものから順に見ていく…..それらを全て見るのは、時間が足りないので、大部分はコンピュータに解析してもらって、それをまとめてもらう方針で進んだ。

そして、一部は目視や耳で聞いてみる。コンピュータでは、声色や話の間の置き方などから感情を推測することはできない。まずはテキストファイルから見て行った。最古のものから順に、最新のものまで。その途中、注目すべき一つの情報が見つかった。

「これは…..本人の情報?」

本人の個人情報….主に、名前や出身、あるいはそれまでやってきたこと、能力やそれに伴う技の種類などをなぜか、その場に、その機械に止めていたのだ。愚かなのか、それともただ単に杜撰なだけなのか、どちらにしてもこれは彼女たちにとって好都合以外の何物でもなかった。

そのファイルを開くと、このように書いてあった。

[名前:ロナルド・エリア 年齢:25歳 過去には武術をやっていた経験もあり、身のこなしは一流である。また、高速移動を得意として、戦いの中でもその高速移動を使いながら相手を翻弄したり、あるいは不意を突くことで確実に相手を仕留める能力を持つ。魔力はほぼない。また、昔は暗くて見向きもされなくて孤独かつ貧しかった自分を、放置せず、利用もしようとせずに純粋な心持ちで助けてくれたヘルトに心から敬意を評して接している。]

「(もしかして…..ヘルトっていい人なの?….いやいや。魔王がいいやつなわけないでしょ!)」

その文を見て、アイリスは自分が見ていた魔王像が実は全くの誤解ではなかったかと不安になった。

(だって、これだけ見たら優しそうなんだもん)

アイリスは頭を振り、自分がそんな考えに支配されるなんてあってはならない、というか魔王はすでに倒したじゃないかと思い、気を取り直して更に様々なデータを見て行った。しかし、そこにあったのは確かに魔王城やそれ以外の、所謂悪の組織という感じの映像や、通信履歴もあったが、通信履歴のほとんどはそうではなかった。

それは、ヘルトとロナルドが日常の他愛もない会話をしているシーンが多かった…..

これはそんな日常の、あるシーンであった。それは、1年前の出来事であった。

「ヘルト様….今日はどこへ出征されるのですか?」

ロナルドは問いかける….その声は少し震えているような、少し上ずっているような….声量も小さく、それは心配しているのか単に寂しいだけなのか、どのみちヘルトがどこか遠くへ行くのに不安を覚えているようなそんな声色であった。

「….心配するな。大した外出じゃない。」

そういって、彼はロナルドの肩を優しく叩き、出征に向かう….ゆっくりと歩きながら…その姿は、さながら、あることを決意した英雄のようであった。彼が魔王城の門から外へ出ようとした時、後ろから足音が聞こえてきた。ロナルドが追ってきたのだ。そして、ロナルドは少し遠くから、寂しさをぐっと堪えながら絞り出すように声を出した。

「あの!….帰ったらまた、お話を聞かせてください。….絶対帰ってきてくださいね。」

ロナルドは、涙を拭って前を向き、約束させた。そして、ヘルトもそれに微笑み、ああと言った。そして軍を引き連れて遠征へ行くヘルトの後ろ姿を、ロナルドはずっと見続けていた。彼の姿が見えなくなるまで。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アイリスは更に心を揺さぶられた。本当に倒してしまっていいのだろうか…自分たちが今からやろうとしていることは、本当に正しいのか?ただの虐殺じゃ?2人の仲を引き裂く、理不尽になってしまわないか?

「今はそれどころじゃない….他にやるべきことがあるわ。」

アイリスは諦めて別のことをし始めた。

そう。それは、エリスが拾ってきた謎の宝石のことについてだ。紫色に輝く、魔力のこもった謎の宝石。それをまずは、顕微鏡で観察する。しかし、見た目的にはアメジストなどのそこらへん程度のものでしかなく、怪しさは全く感じられない。問題は魔力と、魔石としての構造、効果であった。そこでアイリスは、その魔石を魔力分析機にかけてみることにする。

なんと無く感じている違和感、恐ろしさ、その原因を突き止める。魔力分析機を使って魔力の量や属性、さらには属性の中でも特にどういう働きをしてくるのかを測定するもの….まさに、オールマイティというものである。

すると、そこには微弱な雷属性に、闇属性が覆いかぶさったようなそんな、奥行きのある、あるいは深淵を覗いてしまったようなそんな深さがあった。アイリスは、そこに微弱な魔力を当てて、もう一つ実験をしてみることにした。他の魔力にどう言う反応を示すか、外からの刺激にどのように反応するかを調べるのだ。

すると、それは拒絶反応を示した。触れたところに電流が走ったように、アイリスの肌を刺した。

「痛っったぁ…..何よこれ….」

アイリスは痺れた手を振り、今度は自分のじゃない、無生物のものから発生する魔力で同じように行なってみる…..すると、電流が走ったのは同じであった。確かに、宝石の表面から魔力が閃いて、対象に攻撃するように電気が走ったのをアイリスはしっかりと目視した。しかし、その後がおもしろかった。いや、おもしろかったと言うより、あまり良いことではないかも知れなかったが。

「魔力を….え?」

その宝石は、まるで魔力のあるものが餌だと言わんばかりに、自分からその物体についている魔力を吸い上げていった。アイリスにとってこれは、何を意味するかは明白であり、これを触り続ければ自分や他の人の魔力も吸収され続けて、多分まずいことになるだろうと言う結論すら至った。

アイリスは手に魔力を込めた….この宝石の上限を上回る魔力を一気にかければ、きっとこの魔石も壊れてくれるだろうと思い。

「…..でも待って….これで本当にいいの?….せめてここから彼の居場所を….」

魔力を可視化するメガネをかける。アイリスはレクスと違い、魔力を視認する能力を持ち合わせていないので、道具で乗り切るほか方法はない。そして可視化された魔力は、色を分けることができる。

マークしたい魔力にだけ集中して、追おうとする….アイリスは部屋を出ようとした時だった。外からノックが聞こえてきた。ライトだ。

「おーい…レクスに進捗聞いてこいって言われたわ。どんな感じや?」

ライトはアイリスの作業しているところを覗いてみた。アイリスは覗き込んできたライトの頭を押し除けて、進捗を説明した。

「大体終わったわ….見ての通りよ。」

アイリスは気だるそうに答えた。見てわかんないやつに説明してもなんの価値もないと言わんばかりに。そして、欠伸をして、湯呑みを手に取って、茶を啜った。

「お….解析終わったんか。」

ライトが、あの情報通信機器に保存されていたデータを見た。

勿論そこには、ロナルドの10年間の思い出が詰まっているのだが、そこでふと違和感を覚えた….魔王が普通に優しいと言うところもそうであるが、それよりも、特に最近の記録になると、遠くから何かが彼らを見ているのだ。

その何かは遠すぎて分からないが、それでも確かに見ていた。

そして、10年の歳月の日常から作戦まで、それらがほぼ全て記録されていること…それをライトはどう受け止めたか…

「(これ….あいつに返した方がいいよな。)」

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