↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーセナル 〜God’s gate〜  作者: 大質量黒穴
第一章 勇者と闘志の烈炎/勇者と静かなる清流
17/21

第一章 第十話 スクリプト

「目標を捕獲後、拠点へ連れ帰る。任務を遂行する。」

その言葉にも感情がこもっていないが、しっかりとその危険性はレクスとハルトには感じ取れた。そして、敵がその言葉を言った次の瞬間、それは凄まじいスピードで近くのビルの屋上へと飛び移った。そして、そこから飛び降りたかと思えば、そのビルの壁を蹴り、向こう側のビルへ移り、その壁をまた蹴り、さらに斜め後ろのビルの壁を蹴り、そしてレクスの後ろへと回り、背後からレクスの急所を狙い、あと少しで手が届きそうだったその時。

レクスは棒立ちのまま魔術を発動すると、これまで複雑な軌道を描いて突撃してきた様に見えた敵の進路は、一つのまっすぐな直線へと”合成”され、レクスの目の前に突撃する様に改変された。

「ベクトルコンバート 第三定義…コンポジション  フッ….まるで理性を失った獣のような軌道だ。」

ベクトルコンバート第三定義。それは、敵の複雑な動きを全てベクトルとして認識し、それを一つの直線に合成するレクスが独自に研究し、編み出した無属性の魔術である。それを発動された敵は、いくら複雑な動きをしていたとしても、見破られれば一瞬で動きが単純化され、ペースを崩されてしまう。

「しまっ……」

初めて無機質でない、人間の様な感情的な声がその男の口から出た。レクスはその動きが単純化されてしまった彼を冷静に見て、拳を構えた。そして、さらに発動する。

「ベクトルコンバート、第一定義 マグニチュード….5倍。」

レクスの素の5倍の威力の拳が敵の腹に命中する。しかし、流石はビルの壁を蹴って移動できるものなだけあり、その程度で狼狽えることはないが…合成された一直線のベクトルと挟まれることで、それは確かに凄まじい威力の一撃となった。

「ッ!…..」

そして、その威力で敵の体が遠くまで飛ばされていく。しかし、そこにレクスはもう一度ベクトル魔術をかけて、自分の方へ戻るようにベクトルを向けた。

「まあそう焦るな。第二定義 ディレクション….からの、ベクトル…固定」

レクスがそういうと、敵の体が空中で完全に固定された。どんな力が働いても、その場所から動くことはない。まるで、静止画のように。レクスはその抵抗できない敵に対して、すかさず攻撃を叩き込んでいく。まずは腹に一撃。その次に顎にアッパーを食らわせて2撃、さらに脇腹に3撃目、4撃目には鳩尾…どんどん攻撃を重ねていく。その度に効いているかどうかを観察し、どんどんと威力がアップしていく。最後に、突如レクスはベクトルの方向を上方向に変更し、敵をはるか上空へと持ち上げていった。

「もう少し….あと100mほど欲しいか….?」

レクスは敵の体が地上から150m程かというところで、今度は上方向に向いていた動きのベクトルを下方向に変えた。

「ディレクション…下。マグニチュード、倍化」

本来の重力加速度の2倍の速度で敵の体が急降下して、地面に叩き落とされた。道路にはクレーターができ、常人であれば体の原型を保てないであろうほどの力が、敵に加わった。

レクスは見た…見ずとも分かった。それは死んでいて、これ以上何かする必要はないと。そう思い、彼はハルトと共に家へ帰ろうとした。

「よし。終わった。帰るぞ。」

レクスは踵を返した。しかし、ハルトの視線はその粉塵の中のクレーターから動かなかった。実際に確認した方がいいと。実際に確認するまでは、相手を倒せたかどうかはわからないのだからと。

「俺が確認してきます….」

ハルトはその粉塵が舞うクレーターの方に足を向けた….その時だった。敵がレクスに向かって飛び込んできた。

「おっと….確かに君の言う通りだった。」

レクスはさらりと身を躱し次の攻撃に備えた。だが、レクスはまた相手が突っ込んでくると予想したものだった。しかし、実際は違った。その敵はそのよろけた体勢を立て直し、こう言った。

「閾値を超える戦闘能力….排除に移行する」

そう言った次の瞬間、彼はレクスとハルトの目の前から消えた….と言うのは違う。実際には、超高速で円形に移動している。レクスが追えないスピードで。

「どこからくる….ハルト 分かるか?」

「いえ….俺にも全く….」

そうやってどこからくるかに注意を向けていると、横から不意を突く攻撃が飛んできた。凄まじく速い。常人の反射速度を上回るスピードの突きを繰り出してきた。レクスが反応できない場合はハルトが全て捌いてくれているが、それでもスピードが追いつかなかった。そして、レクスに攻撃が当たりそうになった時….

[自動防御システムが作動しました。]

レクスが腕に巻いていた魔術補助装置にはそう表示された。そして、それが表示された瞬間に、レクスの命を奪おうとした攻撃は逸らされた。そして、そのわずかな暇を使って、さらに魔術補助装置は相手の位置を補足して、敵の動きを封じる。

「….なかなかやるな。それと….さっきからその口癖が気になっているのだが….どこかに情報を送っていないか?」

敵はそのレクスの問いに対して、答えられずにいた。いや、答えずにいた。答えたら上に潰される。じゃあ、嘘をついたらどうなる?答えはさらに相手に追い詰められて、やはり最終的に言わざるを得なくなる。彼は沈黙を選んだ。しかし心拍は上がり、目も泳いだ。それが答えだ。

「なるほど…君の個体判別名はこれから、スクリプターだ。」

レクスは、ベクトル魔術でかけた拘束を外さない。そして、そのままハルトにトドメを譲った。

「ハルト….行けるか?」

レクスはハルトに問いかける。

「ああ….秒で決着をつける!」

ハルトはそういい、敵に突っ込んだ。まずは、左拳で軽く小突く程度の力で、敵を殴り飛ばす。ビルにあたり、瓦礫がスクリプターの体に落ちる。そして、ハルトは間髪を容れずにスクリプターと距離を詰めて、その服ごと体を掴む。そして、ハルトはそこからスクリプターを道路の真ん中へ運び….斜め上に投げ飛ばした。そしてその後、ハルトは地面をそれなりの力で踏み込む。すると、周りには少し衝撃波が走り、路面は彼が踏み抜いたところを中心としてひび割れる。そして、彼は投げ飛ばされて身動きの取れないスクリプターのかなり上にまで跳躍し、身を翻す。そして、凄まじい速度で空気を踏み抜き、スクリプターを掴みながら急降下する。

「訳のわからんことを….俺もか。」

スクリプターがハルトごと道路に強く激突し、地面にめり込んだ。スクリプターは動けなかった。一方で、ハルトはそのめり込んだ頭をいとも簡単に引き抜き、何食わぬ顔でそこを去った。

「今度こそ終わった。」

ハルトはそういった。それにレクスも賛成し、2人はまた全速力で家へ戻る道を駆け出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ハルトとレクスが家に着こうとしている時のことであった。スクリプターが起きた。装置を起動させて、上に報告を済ませようとした。

「両者、逃亡の様子。….応答せよ。」

スクリプターはそう言ったが、何も返事がない。スクリプターはその端末を耳から外し、観察した。どうやら、先程の戦いで強い衝撃が加わり、躯体は無事だったものの、通信機能がショートしたようである。

「….っち….予備を使うか。どこへやったか….」

スクリプターは自分の服を漁った。胸ポケットや、自分の羽織っているものについているポケットを確認した。しかしなかった。スクリプターは自分の身から落ちたものと思い、周りを見渡す。すると、一つだけそれのようなものがあった。スクリプターはそれを手に取り、即座に自分の耳に装着して起動する。すると、応答があった。

「結果はどうなった。」

通話の向こうのものはそう言って、スクリプターに結果を尋ねた。

「2人とも逃亡。追いますか?」

スクリプターも通話の向こうのものにそう問う。すると帰ってきた言葉は叱責でもなければ、追えと言うものでもなかった。

「いや、いい。戦闘データを送信しろ。」

戦闘データ。スクリプターは戦闘データを通話の向こうのものにクラウドを使って送信した。すると、相手の方はただありがとうと言った。スクリプターはもう一つ尋ねた。

「これからどうしますか?彼らを追って仕留めるべきか、それとも諦められるか….」

しかし、相手はそのどれでもなかった。

「お前は、2人の動向を見張っておけ。」

「かしこまりました…では、彼らの処分等はどのようにするおつもりですか?」

彼らの処分。彼らの処分とは、ターゲットの殺害ということか、あるいはもっと別の意味での処分なのか。

「お前はそれは黙って見ておけ…..彼らは俺が消そう。報告感謝する。」

そう言って、相手は通話を切った。そしてスクリプターは膝をついて少し間を開け….

「魔王様の仰せのままに…..」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。