第一章 第九話 メソッド演技特訓II
レクス達があの者と戦闘している間、エリスは高校で起こっている怪奇を調べ、ルーエとアイリス、そしてイーグルの3人は、魔力増幅装置の完成に着実に近づいていた。一方で、ルーモスはというと、ライトの特訓を見守ることをルーエに頼まれて、つきっきりでライトを見守っていた。ライトは、家族を攫った謎の男と対峙するシーンを思い浮かべ、怒りを意図的に生み、それを魔力の獲得に繋げる訓練をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「(ここは…高速道路だ。俺が家族と車に乗って神戸から、東京に帰っている途中のことだ)」
そうライトがイメージしていると、ルーモスが退屈したのか、ライトにちょっかいをかけてきた。
「ねぇ!何してるの?」
ルーモスは見た目に反してすごく子供っぽく、遊ぶのが好きで、戦いや修行は嫌いらしい。しかも、体の大きさに反してスキンシップが激しいから困る。そして、待つのも嫌いだ。ライトがあと5分と言っても、50秒も経たずに「ねぇまだぁ〜」と退屈そうにしてくる。子供だからと仕方なく割り切っているが、やはりあの体と服装で子供みたいに甘えてこられると、色々と辛い。
「邪魔しないでくれ…」
ライトがそういうと、ルーモスは頬を膨らませた。ご立腹の様子。全然怖くもなんともない、むしろ可愛いぐらいだが、怒ると非常に恐ろしい力を見せるのだとか。
「もぅ….仕方ないなぁー」
「さてと…じゃあ、続きをしよう」
車に乗って、ライトは家族と一緒に東京に帰ろうとしていた時…空から正体不明の人物が現れた。
「(そうだな…俺はあれをなんと名づけるかが問題だ。うーん…..サターンとでも名付けることにするか。うむ、そうしよう。サターンがこちらを伺っている)」
「ほう….こいつが噂の….そして…あの女児…いや赤ん坊だが…成長すればかなり使えそうだ….」
あれがサターン….そしてライトの家族を攫った張本人だ。銀髪の髪に、藍色の…瞳孔が猫のそれのような形をした目。そして、身体中に謎の紋様がついており、それらが淡く光っていた。彼が俺たちを認識すると、すぐ様車の前に立ち塞がり、止まりきれなかった車を文字通り体で受け止めた。いや、受け止めたとすら言えないぐらい圧倒的だった。
「さて….一仕事するか….」
サターンはそういい、家族の元に近づく….まずは俺がサターンの前に立つ
「君がライトか….思ったより度胸のある人間のようだ。」
「(サターンは俺を見下ろしてそう一言言ったあと、俺をスルーして父親に近づいてきた…父親も母親もこいつに車を止められた時の衝撃によって気絶している…そんなやつをどうするというのだろうか….俺の家族に手を出すつもりか?)」
「ははっ….寝てやがるよ。」
サターンはライトの父親の胸ぐらを掴み、その顔を平手打ちする。しかし反応がないので、今度はライトの父親の体を1mほどの高所から落下させて楽しんでいた。その様子はまるで子供がボール遊びをするがの如く、サターンは気楽に楽しんでいたが、彼以外の視点から見ればそれは残虐非道な、暴力以外の何者でもない行為であった。
「(なぜ笑っている….なぜそこまでヘラヘラしていられる….許せない….)」
ライトは想像の深いところに潜り込み、そのサターンに対する怒りを積み上げていく。すると、ライトの周りからほんの少しだけ炎の魔力が出てきた。それを感知したのか、ルーモスが真剣な表情でライトを見守るようになった。
「(へぇ〜…ライトっておもしろいね。)」
ライトはその想像をさらに膨らませていく。サターンはライトの父親で遊ぶのに飽きたのか、今度は母親の方に向かった。地面で気絶して転がっている母親に近づき、その体をじっくりと舐め回すように見たあと、片手で抱えて、そのまま持ち去ろうとした。そして、さらにサターンはその後にライトの妹であるフィリアの方に近づいた。
逃げようとする小さなフィリアの意思を無視して、後ろから服ごと掴み、持ち上げて去ろうとした。
その時だった。ライトの怒りが頂点に達し、燃え上がるような赤色の魔力が大きくなろうとしたその時
「ストーップ!!ここ、お家だよ?」
ルーモスがライトの体を少し突き飛ばし、ライトはその想像から目が覚めた。ライトは何が怒ったのかわからずあたりを見回した後、状況を思い出した。そう、魔力を増やすためのトレーニングをしていたところなのだったと。
「…あれ…あぁ…ここは俺の家か。ルーモス…どうして止めたん?」
ライトは、自分の修行が後ちょっとで完成するところだったのにと、少し苛立っていた。実際、ライトの魔力は後少しで魔術の使用可能水準まで増加しそうだったのだ。しかし、ルーモスはこう言った。
「ライトぉ さっき魔力が暴走しそうだったよ?(むぅー)」
ライトが怒りによって魔力と属性を同時に目覚めさせようとした時、ルーモスは彼の魔力の微かな変動や、膨張の速度などを観察していた。子供のようなはしゃぎ方をしているとはいえ、やはり長い間ハルトと共に旅してきた見識というものは計り知れないというもの。
「え…俺そんなことになってたのか…止めてくれてありがとな」
ライトはルーモスの頭を髪が崩れない程度に優しく撫でて、ついでにしっかりと褒めてあげた。すると、機嫌を少し損ねていたルーモスは瞬く間に花が咲いたような笑顔になった。
「えへへっ…やっぱりルーモスはね、賢いんだよ!」
ライトの心は少し穏やかになり、先ほど憎悪を煮えたぎらせていた人物とは思えないぐらい、善意に満ち溢れた表情をしていた。そして、ルーモスの笑顔を見て、思わず微笑んだ。そんなことをしていると、家から魔力増幅装置を開発していた3人、ルーエ、イーグル、アイリスが庭の方に、何らかの装置を持って出てきた。
「やっとできましたわ。」
そう、魔力増幅装置が完成したのだ。その見た目はシンプルで、直感的な構造となっているものの、その中身自体はとてつもない精度の計算能力と、魔力増幅のための仕組みや、あるいは回路を自己修復するための機能など、さまざまなものが入っている。更に、戦闘で少し攻撃を喰らったところで、生半可な衝撃では躯体には傷はつかないし、回路が壊れたとしても自己修復機能によって勝手に修復されるため、ほぼ永久的にこれで戦えるという。
「へぇ….これは…」
ライトはそれを受け取り、手で重さを確かめる。
「少し重いが…見た目ほどやないな。」
ライトはそう言い、今度は腕に装着してみようとするが…..上手くいかないようである。どうやら付け方が間違っているのだろうと思ったライトは、色々観察して試してみるが、どれもイマイチ上手くいかない。しかしライトは諦めが悪く、もう少し粘ってみようとしていた。
「それ、付け方間違ってるわよ。中央にある画面があるでしょ?それに触れて。」
「中央にある画面….これのことか…」
魔力増幅装置の画面を開くと、初期設定画面が現れた。そこには、魔力量、属性、年齢、体重、身長などなど、あらゆる自分のスペックを入力する必要がある。その初期設定に関しては、あとで変更できる。魔力量に関しては、3が最低値。俺の現在の魔力量の推定値から作ったのだろう。上限は、100。十分に戦闘するためには、魔力量は100以上が推奨されるため、魔力量の上限が100というのは目安として大事だろう。
「初期設定がある程度終わったら….次へというボタンを押せば、次の段階へ移行できるわ。」
初期設定の次の段階は、その初期設定をOSに適用させて、OSのデザインを個人の好みに合わせて変更する段階だ。ライトの場合は、ウインドウの端は丸い方が好みだったため、その設定を採用した。
また、その設定が終わると今度こそホーム画面に移行する。デフォルトの壁紙は…子供の頃のライトの寝顔であった。
「何勝手に俺の画像使ってんねん!しかも普通にかわええやん!」
「すみません…なんかいいのなくて….カメラ機能を使えば、今壁紙を撮影することもできますよ。」
魔力増幅装置という名前にしては、非常に機能が多い。もはやこれは、魔力増幅を可能にしたスマートウォッチのようなものといって過言ではない。ライトは夕方の自分の家を撮影し、それを壁紙とした。
「うん。これでいい。次はどうすれば?」
ライトは次の手順を尋ねる。するとアイリスが答えた。
「これ、早く装着したいわよね?なら、側面に、着脱用のボタンがあるからそれを押し込んでみるといいわ。」
ライトは言われた通りに着脱用のボタンを押し込む。すると、蒼光とともに、腕に巻き付くような場所が収納されていく。それを、ライトは腕に取り付ける。すると、魔力増幅装置の下方についているセンサーが反応し、本体に情報を伝えて、腕に装着させる。
「無事、これで装着完了。いつでも使えるわ。早速、チュートリアルで使ってみるといいわ!」




