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アーセナル 〜God’s gate〜  作者: 大質量黒穴
第一章 勇者と闘志の烈炎/勇者と静かなる清流
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第一章 第六話 爆速追跡中

レクスとハルトが家を出発したあと、ライトとルーエは感情を強制的に引き出す方法の訓練、イーグルとアイリスは魔力増幅装置の開発をしていたら、突然謎の発火現象が起こった。

その時、レクスとハルトは…

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「大丈夫か? ちゃんとついて来れてるか?」

レクスは自分のスピードにハルトの体や頭がしっかりとついて来れているか、そもそもハルトの実力をレクス自身はまだあまり知らないため、心配に思っていた。

「心配は無用です。レクスさんは魔術制御に集中してください。」

ハルトは長い旅の末、魔王を倒した逸材でもある。その名声に恥じない身体能力がしっかりと備わっている。そのため、レクスの使う魔術による超加速についていけないということはないようだ。そして、レクスはそのベクトル制御の魔術を使って、実に効率的に方向転換を行なったり、上向のベクトルを使って空中に飛んだりして、目標の存在を把握しようとしていた。一方でハルトは、下を入念に捜したり近くにいる人に聞き込みを行ったりしていた。しかし、ハルトの方はなかなか心当たりがあるという人が見当たらない。

「もう100人ぐらいには聞いて回った。アイリスが描いてくれた圧倒的なまでの絵を見せても、皆んな知らないし見たこともないらしい….こんな姿してたらみんな二度見ぐらいすると思うのに….」

アイリスが描いた絵とは、ライトを襲った謎の刺客の姿をライトが証言した通りにアイリスが手描きである程度わかりやすく特徴のみをおさえて作った、まさに捜査する時の定番とも言える絵だ。写実的すぎてもいけない。あるいは美的すぎると、逆にバイアスがかかるためちょうどいい具合に崩すのもポイントだ。

その姿はどう見ても普通の人間とは見えない、暗く不気味な雰囲気をしているが、一般人は自分のことで頭がいっぱいなこともあって、周りをそれほど確認する癖はついていない。

ハルトの方は100人に聞いても150人に聞いてもなかなか進展がなかったが、レクスの方はというと、ハルトが聴き込み調査を行なっている間、魔力探知やサーモカメラでの確認など、いろんな方法で敵の居場所や敵の残滓を探っていた。しかし、実際問題として敵の魔力の痕跡が見つかったとしても、途中で切れていたりして余計どこを探せば良いのかわからなくなることもある。

「面倒くせぇ….なんだこの痕跡の不規則さは…..嫌になるわ」

レクスはその敵の残した痕跡の複雑かつ予測不能な進路、あるいはタイムスケジュールに対して、そう不満を呈する。しかも、そこに別の人間の魔力も混じっているため、見分けが困難である。

「逆に見分けようとするのが間違い….か?」

レクスはその困難さを逆に考えてみた。見分けるのが困難すぎるならば、逆に見分けずに進路だけを辿っていけば良いのだと。その発想の根拠の一つは敵が複数の魔術の属性を持ち合わせているかもしれないということ。アイリスの虹色の魔術の本質は、白に見える光に含まれるスペクトルを分光してそれを属性に当てはめたものだ。つまり逆にいろんな属性の魔力を混ぜて使用する人間がいてもおかしくないということだ。

もう一つの根拠は、そいつ自身が他の人間の魔力を食っているかもしれないということだ。「なら、魔力の少ないライトをあんな街中で息の根を止めようとするほど執着する必要はないのでは?」と思うのが普通だろうが、もしやつが魔力探知をする術を持っていなかったら、あるいは別の目的があるのだとすれば、特に納得のいかないことでもないはずであろう。レクスはそのことを考慮し、魔力探知で追跡するのは非効率的だと判断した。

「やーめた….なんか変な方向に誘導されそうな気がした。」

「誘導?どういうことですか?」

ハルトが頭にハテナを浮かべながらそう質問した。レクスは、その質問を聞いて、ハルトは気づいていないのか、いや気づくはずもないだろうと思い、こう言った

「うーん なんというか、わざと複雑化した痕跡を残して時間稼ぎしてる気がする。そんな感じがした。」

レクスの勘は一般人のそれからくる勘などではない。20年以上積み重ねて来た魔術学の知識と経験からの、根拠に富んだ勘だ。この痕跡をどう追跡するのかが彼らの課題であり、力の見せ所でもある。そして、複雑化した痕跡を残して時間稼ぎをする理由として、このレクスが考えていたのは主に2つだ。まず、自分が見つかって死ぬリスクを減らす。これは誰もが思いつく鉄板の考え方だろう。その次に、自らの計画を成し遂げるためという理由だ。じゃあ、計画とはなんだろうか。レクスが次に考えたのはそれだ。まず最初にバス停の近くに現れた理由、そしてフードをかぶっていることや、誰かと常に連絡をとっているかのような口調だったり、単に挨拶をしたライトの息の根を止めようとしたことへの疑問。これが重なって導き出される答えとは…

「まさか….なんらかの組織の人間か?」

姿を見せず敵を襲い、証拠も残さない。これほど入念に居場所を隠す奴はそうそういない。あのジュピターでさえ、レクスにとってみれば証拠など簡単に見つかるものだった。しかし、今回はそうはいかない。魔力探知などで空中から探すのは難しいため、レクスは得意とする方法を捨て、ハルトと一緒に地道に痕跡を探ることにした。

ならばどうだろう?まずは、人通りの多いところを色々と確かめた。例えば、駅前。意外とこういうところは、見つからないだろうと思って痕跡を消すのを忘れるが、レクスはその、人間の行動パターンを読んで都市の中心部のような人通りの多いところを探し回った。

「本当にいるんでしょうかね….」

ハルトは、あまりの捜査の進展がなかったのでそう言った。ただ、レクスはライトを信じて捜査を続けるといった。

「ライトが言うんだ。いるに決まってる。それにお前も、本来逃したい相手じゃあなかったんだろう?ならば、探し出して堂々と打ち滅ぼすのが、お前の仕事であり成し遂げたいことでもあるんじゃないのか?」

レクスは、ハルトがここに来た直後に戦った敵があれで、ハルトは一撃で敵を葬り去ろうとしたが、それを失敗したと言う話を思い出し、それを持ち出した。すると、ハルトは

「そうですね。じゃあ、もう一踏ん張りしますか。」

と、もう一度気合を入れ直す。

都市部にわかりやすい、決め手になるような痕跡がないのならば、山の中はどうだろう。あるいは、更に街中に行ってみるか。もしくは、寺社仏閣や公園の中に何かが落ちていたり、魔力を使った痕跡が強く出る場所があるかもしれない。レクスとハルトはそんな、さまざまな場合やその可能性を考えながら、場所を絞っていく。例えば、港。

「ここからどこか別の遠いところに行った可能性は?」

「うーん…..ないだろ。」

次に飲食店街。

「彼が我々の考え通り人間だった場合、エネルギーを補給する必要がありますから、もしかしたらこのような場所に来た可能性も….」

「あんな怪しい男、見つけたらみんな大騒ぎだろうな。誰か常にこの場所にいる人に聞いたり、防犯カメラの映像を見ていなかったら次の場所へ急ごう。」

「ですね。」

そして、最後の地点。レクスが今回、最も可能性が高いだろうと見込んだ神社だ。すぐそこにはデパートがあったりと人通りも非常に多いが、敢えてそこを考えたのにはわけがあった。魔力というのは、人の感情から作られるもの。そして神社というのもまた、人の想いの結晶のような存在であり、神社は魔力を生み出すこともできる。そのため、もし彼が他の人の魔力を食べて生きているような存在だとすれば、この人通りが多い場所の神社というのは最も可能性が高くなる。レクスとハルトはともに境内に入り、それぞれで調査を開始した。すると間も無く、レクスはその地の魔力が普段観測している魔力とはかなり性質の違う、歪んだような気味の悪い魔力を感じ取った。

そして、ハルトの方も灯籠の近くに落ちていた不思議な機械のようなものを見つけた。

「レクスさん…これ…なんでしょう?」

ハルトは自分にはその機械が何であるか判断できないため、レクスにそれを見せた。すると、レクスはすぐにそれが情報通信機器だと分かった。

「後で帰って解析してみよう。」

「そうですね。」

一発逆転できそうな痕跡、紛失物を見つけた2人は、そのまま神社の境内からすぐに立ち去って、家に向かって走っている時、突然、レクスの目の前に影が現れた。レクスはその影に即座に反応し

「ベクトルコンバート 第五定義 “スライド”」

見事に相手を自身の後ろに並行移動させた。

「何をやったんですか!?急にワープしたように見えましたけど….」

「ちょっとした“術”だ。それよりも、こいつは一体….」


第十三話はまるまるレクスとリオンハルトの捜査シーンを描きました。そして、いよいよレクスたちが探していたものを見つけたしましたね。そして、最後に出てきた者とはいったい?

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