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神は愛を知らない 〜チートなし40代主婦。姿なき我が子を捜して突き進む異世界生存譚〜  作者: 忠犬
第四章 バルドガルド王国派遣編

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第九十五話 愚王のツケ、崩壊寸前の胃

「約束しましたよ!死なずに帰ってきて、私に色々見せてくださいね!!」

 そう言い放った私を見て、バルドガルド王は一瞬、何を言われたのか分からないような顔をして、ポカンとしていた。

 近衛騎士の面々は目が泳いでおり、この無礼な奴をどうしたら良いかとあたふたしていたが、団長のヘルムフリートさんが手で制すると、近衛騎士達は威儀(いぎ)を正した。


「ガハハハハ!そうだな!死なずに帰ってこよう。ミサキにドワーフの職人技を見せねばなるまい」

 豪快に笑うバルドガルド王を見て、ダニエルもジャンも心の底からホッとした様子だったが、直ぐに私を睨みつけ「お前は本当に黙っててくれ!」という念を飛ばしていた。

 クロは足元で深いため息をついている。

 ……何で?


「では、これからの予定だが……」

 バルドガルド王は輝く3D地図の一点を指差した。

「まず、王国騎士団は全員、国の防衛と避難民の誘導に当たらせる。龍に全戦力を割いて、その隙に他国に攻め込まれては国が落ちるからな」

「王都の留守を固める、と。堅実な判断だと思います」

 ジャンの言葉に王は頷き、今度は胸を張った。

「そして、儂、直属の近衛騎士団はすべて、儂と共に封印地へ赴き、龍の再封印を行う!」

「えっ!? 王、ご自身が行かれるのですか!?」

 ジャンの驚きに、団長のヘルムフリートさんが苦笑交じりに口を開く。

「周囲は大反対したのですがね。古代龍を封印したドゥルガンの子孫として、これだけは譲らんと聞かないのです」

「当然だ。そして我が弟ゴルム、更には甥のローガーも同行を志願してくれた。これも血の宿命だな」

 ゴルムさんとローガー氏を見れば、二人ともドワーフの誇りを胸に、固い決意の表情を浮かべていた。

 

(うわぁ、前線はドワーフのガチ勢一択ね。ていうか、ローガーの怪我は本当に大丈夫なのかしら……)

 

「さて、人族のお前たちだが……行っても魔素が濃くて足手まといになるだけだ」

「……反論の余地もございません」

 ダニエルがちょっと悔しそうに首を振る。

「お前たちはバルドガルドに残り、避難民の誘導や、鉱山から漏れ出た魔獣の討伐に当たれ。一応、こちらの冒険者ギルドにも要請はしてあるが……」

 王はそこで、ふんと鼻を鳴らしてため息をついた。

「情けないことに、人族の冒険者の大半は、龍の話を聞いてトンズラしおったわ。残ったのはお人好しの人族か、英雄気取りの馬鹿か、ドワーフに義理のある者達だけだ」

 

(あら〜……。なんとも頼りない限りね。まあ、命が惜しくて逃げる気持ちは分かるけど)


「まぁ、庶民のドワーフ達も、日頃から精錬作業で大槌を振り回したりしておるからな。そこらへんの人族よりは戦えるだろう」 

 こちらは打って変わって、なんとも頼もしい限りだが、避難せずに戦われても困りものだ。

「避難はいつからされるのですか?」

 ジャンが聞けば、既に女子供は避難を開始しているとのことだった。

「男衆は残ると言って聞かんのだが、家の跡取りなどは避難民と一緒にバルドガルドを出て、魔獣の脅威や、人族の連中が浴びせてくるであろう誹謗中傷から民を守れと勅命を出しておいた。これで少しは違うだろう。」 

「避難先はどちらに?フリージアでも受け入れる話が出ておりますので――」

「それには及ばん」

 ジャンの話を途中で遮り、バルドガルド王は続ける。

「現フリージアの国王はクソったれの、いけ好かんアホだ!……全く。あんな奴のところに、儂の可愛い民を任せられるわけなかろう!」

 なんと言えば良いか分からないジャンは、どうにか気持ちを収めてもらおうとするが、返ってヒートアップさせてしまい、バルドガルド王の文句は止まらない。

「先々代は賢王であったのに、今では二代続けて愚王が立ってしまった……。結果が、人族至上主義の大馬鹿国民の大量生産だ。そんなところにドワーフが行ってみろ!何をされるか分かったものではないわっ!」

「も、申し訳ございませんっ!!」

 自国の情けない現状を否定できないのか、謝ることしか出来ないジャンは、一気に顔色が悪くなり、今にも千切れそうな胃の辺りを押さえていた。

 ジャンのあまりの顔色の悪さに、私は口を挟んだ。

 

「でも、早く避難しないと危険ではないですか?フリージアなら隣ですし、何より命を優先しないと」

「我らバルドガルド王国にも、平地はある。僅かだがな。ここを見よ」 

 地図を指差し、バルドガルド王は説明を始める。


挿絵(By みてみん)


「これはノルディアの西大陸の地図だが、この大陸の西にある、南北に走っている山が龍背(りゅうはい)山脈だ。北の三分の一はダークエルフの国、ノクス=ヴェリア。残りは我らバルドガルド王国だ」

 初めて見た大陸図に、私は興味を惹かれたのと同時に、まだこんなに息子たちを探す場所があるのかと、不安になった。

 西大陸ということは、東大陸、北、南まであるかもしれない……。

 

「この龍背(りゅうはい)山脈の西側、海沿いの平地も我らの土地だ。街も村もあるから、そこへ分散させて避難させている最中だ」

「成る程。海沿いなら最悪、船で逃げられますね。フリージアの方角へ逃げれば、海から遠い……」

 ジャンが顎に手を当て、考えを巡らせている様子で答える。

「そうだ。我らにとってフリージアへ逃げるのは、利がない」

「では、私たちはまだ残っている避難民の方々を海側の街へ誘導することと、魔獣退治をすれば良いのですね?」

「避難経路は坑道だが、魔獣対策として上側を使うことになっている。人族のお前たちでも大丈夫なはずだ。まかり間違っても、深部へ行くなよ」

「「承知しました」」

ジャンとダニエルが頷いた横で、私は少し考え込んでいた。

「あの……バルドガルド王」

「なんだ?」

 一通り説明は終わったと思っていたバルドガルド王は、私の顔を不思議そうに眺める。

「これが無事に終わったら、この地図で他の大陸も見せてくれませんか?」

 この世界に来て、ようやく世界地図が見れるかもしれない好機を、私は逃したくなかった。

「お、おい!何を勝手に……っ!」

「構わんぞ。何なら今見せてやろう」

 ダニエルは私を慌てて止めたが、バルドガルド王はニヤリと笑って、横の近衛騎士に指示を出し、世界地図が表示された。


挿絵(By みてみん)


「これがノルディアの世界地図だ」

「これが……」

 この世界のどこかに息子たちがいるかもしれない……。

しかし、その広さに圧倒され、私は口を噤むしかなかった。

  

 


前回に引き続き、今回も地図が出ましたが、なんやかんやと忙しく、世界地図には時間がかけらませんでした。

まぁ、時間をかけても上手には仕上げられないのですが…。

色々すみません。

おおよその大陸配置が分かれば幸いです。



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