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神は愛を知らない 〜チートなし40代主婦。姿なき我が子を捜して突き進む異世界生存譚〜  作者: 忠犬
第四章 バルドガルド王国派遣編

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第九十四話 やりたい放題

 ビリビリと鼓膜に響くドワーフ達の雄叫びに、思わず耳を塞ぐ。

 気合い十分といったところか、ドワーフの戦士達の顔つきは精悍そのもので、誰一人として悲壮感漂うものはいなかった。

 ただ、貴族の中には、やはり顔色が優れない者や、戦士の雄叫びを馬鹿にしているような様子の者もいた。

 ドワーフとて、一枚岩とはいかないようだ。


「続いて……ハロルド・フォン・レーリッヒ!」

「は、はい…?」

 名前を呼ばれたのは、ローガーを臆病者と言った貴族だった。

 何故名前を呼ばれたか分からない様子で、少し焦っているようだ。


「お前はアスカン家と親戚筋だったな?」

「は、はい。そうですが……」

 ハロルドと呼ばれた貴族は、やましいことがあるのか、目が泳いでいるように見えた。

「此度、フリージア王国冒険者ギルド本部のギルドマスター、ロルフから親書が届いた。アスカン家が無理な採掘を指示し、山の深部まで掘り起こした。その結果、龍の封印地まで侵して魔素を撒き散らし、挙句の果てには、その事実を隠蔽したそうだ」

「そんなまさか!ドワーフの血が入る者が、そのような蛮行をするはずがありません!きっとその人族が嘘を……」

 冷や汗をかきながら必死に弁明しているが、公の場で名指しで批判をしているのだから、既に何かしらの証拠はあるのだろう。

 弁明しても、もう遅い。


「儂も嘘かと思ってな。直属の監察官達を派遣して、裏を取らせてもらった」

「そ、そう……ですか」


「…………貴様はドワーフの恥さらしだ」


 そう言い放ったバルドガルド王は、憤怒の炎を全身からほとばしらせているのかと見紛うほどの怒りを露わにしていた。

「ひっ…!」

 あまりの威圧感に、あの貴族は縮み上がり、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっている。

 目を合わせていない私ですら、威圧感で硬直しているのだから、睨まれているなら、ひとたまりもないだろう。

 バルドガルド王の威圧は非常に恐ろしいが、いい気味だと思ってしまう私がいた。

 クロはあの威圧感を感じても、何食わぬ顔で優雅に毛繕い中だ。

 私の相棒はどれだけ強いのだろうか。

末恐ろしくも、なんとも頼もしいと思っていると、バルドガルド王は更に続けて発言した。


「貴様は龍背(りゅうはい)山脈に生じた異変を知りながら、私欲のために隠蔽し、多くの命を危険に晒した。これは王国への背信である」

「し、しかし!龍がいたなどとは知らずっ!私も騙されていたのです!」

「この期に及んで、まだそんなことを言うのか?裏はとったと言ったろう。貴様の処分は斬首刑と決まっている」

「そんな……っ!!」

 膝から崩れ落ち、慈悲を乞う姿は、誇り高きドワーフとは程遠く、なんとも言えない見苦しさが漂っていた。

「連れて行け」とバルドガルド王から声がかかると、騎士団のドワーフ達が、ハロルドと呼ばれた貴族を引きずって、謁見の間を出て行った。


「見苦しいところを見せたな。アスカン家の処分はフリージア王国へ一任する。もし万が一、こちらへ逃げて来ることがあれば、先の者より酷いことになると伝えておこう」

 バルドガルド王から発せられる威圧感はなくなったものの、余韻は残っており、謁見の間には重苦しい雰囲気が漂っている。

「し、承知いたしました……」

 ジャンはそれだけ言うのが精一杯といった様子で、なんとか言葉を絞り出していた。

「龍が目覚めるまで、あまり時間は残されていないかもしれぬ。よって、直ぐに作戦会議へ移りたいが、良いか?」

「はい。こちらとしても、そのほうが有難いです」

 ジャンが顔色が悪いなか答えると、バルドガルド王は席を立ち、「ならば付いてこい」と言って身を翻した。


 バルドガルド王に続き、近衛兵が謁見の間を出ていく。

 そして近衛騎士団の偉い人らしき人物が近づいてきて、私達に挨拶した。


「近衛騎士団団長、ヘルムフリート・アイアンシールドと申します。これより先、私がご案内致します」

「よろしくお願いします」

 私が頭を下げ挨拶すると、値踏みするかのような視線をまた感じた。

「……何か?」

 いくら何でも失礼じゃないかと意味を込めて、微笑みながら言ってやったが、ダニエルから肘で思いっきり脇腹を殴られた。

 

 「ぐ、ふぉっ……!?」

 

 一瞬、本当に肺の空気が全部引きずり出されて目の前がチカチカした。

 加減というものを知らないのだろうか。

「ちょっと!痛いわよ!!死ぬかと思ったわ!!」

「うるさい!お前はさっきからやりたい放題……っ!」

 般若のような顔で、鼻息荒くまくしたてているダニエルに、私はぶつくさ文句を言ったが、「お前はもう少し黙ってろっ!」と一喝された。

 ……解せぬ。


「ぶふっ!」

 そんなやり取りを見ていたヘルムフリートさんは、何故か吹き出し、肩を揺らして笑うのを必死に堪えていた。

「し、失礼しました……。ヴァルグリムにいる従兄弟から『黒髪黒目の子供を探す聖女様を助けてやってくれ』と特級の親書が届いたので、どんな高貴な方が来られるのかと思ったら……。その……ぶふっ!」


 ……おい、お前。本当に失礼だぞ


 そんな思いの籠もった視線に気づいたのか、ヘルムフリートさんは、ハッとした様子で咳払いをし、身を正した。

「大変失礼しました。とても面白い方ですね」

 ニコリと笑って丁寧に言われたが、余計失礼だと思ったのは、私だけじゃないはずだ。


 それからヘルムフリートさんの案内で作戦会議室へ通された。

 中には近衛兵数名とバルドガルド王が待っており、部屋の真ん中には大きなテーブルがあった。

「さて……作戦会議を始める。地図をこれに」

「はっ!」

 近衛兵が返事をし、テーブルに手を当てるとテーブルが輝き出し、龍背(りゅうはい)山脈の3D画像が浮き出てきた。

 


挿絵(By みてみん)



(な、なにこれ!?めっちゃ格好良いんですけど!NE◯V本部みたい!!)


 頭のなかで小さい私が大騒ぎしていると、私の様子に気づいたのか、バルドガルド王が話しかけてきた。

「なんだ。聖女様はこのような地図は初めてか?」

「バルドガルド王、聖女と呼ぶのはお止めください。ミサキで結構です。しかし、このような地図、どうやって作るのですか?ドワーフ族は本当に素晴らしいですね」

「そうだろう。我らは物づくりに妥協はせんからな。この件が落ち着けば、色々見せてやろう」

 バルドガルド王は、気をよくしたのかニヤリと笑って言った。

「約束しましたよ!死なずに帰ってきて、私に色々見せてくださいね!!」

 頭の中で小さい私は『やったー!』と飛び跳ねているが、私の隣ではダニエルが「お前は本当に黙ってろッ!!!」という怒りの表情で私を見ていた。

 ちなみにジャンは最早諦めたのか、遠い目をしてどこかを見ていた。

 ……解せぬ。 

 

 

今回、作中では「3Dの立体地図」が登場していますが、私の画力では画面から地図を飛び出させることができませんでした!

すみません、私の限界です!精進します……!

2Dではありますが、なんとなくの位置関係や世界観が伝わると嬉しいです。

使い慣れていないアイビスペイントを起動し、動悸と戦いながら必死こいて描きましたので、どうぞ温かい目で見てやってください!


え?動悸は歳のせいだろって?

やかましいわっ!!


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