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神は愛を知らない 〜チートなし40代主婦。姿なき我が子を捜して突き進む異世界生存譚〜  作者: 忠犬
第四章 バルドガルド王国派遣編

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第八十九話 行きたくない!やりたくない!!

 あれから数日が経ち、ローガーは驚異的なスピードで回復し、元気にスラムの子供達の家の修復を行なっている。

 しかも私の暴漢のような姿を見ても、いまだに「聖女様!」と呼ぶのをやめない。

 というか、更に酷くなった気もしないでもない……。


  

 あの日から、採掘ギルドは運営停止処分が下った。

 炭鉱夫達は、死亡者が出ても採掘ギルドが隠蔽していたという悪質性の高さから、ギルドに脅されていたと判断され目立ったお咎めはなかった。

 そのため、炭鉱夫達は仕事がない間、ヴィルヘルムさんたちの計らいで『スラムの復興支援』という臨時雇用を斡旋された。

 特に深部へ行ったドワーフ達は、贖罪の機会を与えてくれた私にお礼がしたいと、しっかり働いてくれている。

 お陰で当初の予定より遥かに早く、そして立派に仕上がりそうだ。




 作戦当日の朝、グランヴェルから早馬で夜中に到着していたヴィルヘルムさんと、ロルフさんは、潜入捜査をしていたギルド職員や信頼のおける冒険者の人達を引き連れて、アスカン家と冒険者ギルド支部へ突入すべく、宿で作戦会議をしていた。

 その場に私もダニエル達もいたのだが、作戦会議の真っ只中にクロが姿を現し、映像記録の魔道具を投げてよこした。

 何かあったのだと悟った私は、すぐダニエルに頼み映像を倍速で再生させると、拷問を受けているローガーの姿があり、頭に血ののぼった私は皆が止めるのを無視して宿を飛び出した。

 あとから知ったことだが、ロルフさんは私の暴走を見て「ミサキが単身で動いた以上、これ以上の時間泥棒は作戦の完全な破綻を招く。採掘ギルドに勘づかれる前に叩く!」と瞬時に判断し、アスカン家と冒険者ギルド支部への突入時間を繰り上げたそうだ。

 

 帰ってきてからロルフさんとヴィルヘルムさんに怒られたのは言うまでもない。

 ダニエルから言わせれば「あんなに優しく注意する副マスは初めて見たぞ」とのことだ。

 結構キツく叱られたと思っていた私は、あれで優しい注意であるならば、皆が怖がるのも無理ないのかもしれないと思い始めていた。


採掘ギルドから盗んだ書類は、欲しかった坑道記録簿と帳簿の他に、アスカン家への月間報告書と裏金台帳まであったため、貴族の知らぬ存ぜぬは通用せずお縄になった。

 アスカン家は龍の存在は知っていたが、国の基幹産業である製鉄事業を止めることなどできるはずもなく、炭鉱夫達も仕事がなくなれば路頭に迷うため、仕方なく通常営業していたと言っているそうだ。

 アスカン家の当主が捕らえられたため、バルドガルド王国へその経緯と報告書をゴルムさんの手紙を添えて送ったらしいが、こちらはまだ動きがないそうだ。

 国家を揺るがしかねない大罪だ。

 向こうの王家側も、事実確認や処分をどう公表するかで今頃大騒ぎになっているのかもしれない。


 冒険者ギルド支部も、龍の存在は幹部とギルマスは知っていたらしい。

 龍の存在が公になればパニックになり、余計な不安を煽るため公表していなかったと言っているそうだが、裏金台帳に賄賂の記録もあったため、こちらもお縄になっている。

 おかげで現在、ヴァルグリムの幹部全員が不在となるため、暫くの間はヴィルヘルムさんがギルマス代理として就任するらしい。


 あとの問題は、古龍をどうするかだけだ。



 

「バルドガルドへ行っていただきます」

「え?いま何と……?」

 ヴァルグリムの冒険者ギルド支部のギルド長室に呼ばれ、今後の予定を話していたのだが、ヴィルヘルムさんに言われたことが理解できず、目を点にして再度問う。

 

「ですから、バルドガルドへ使節団の一員として行っていただきます。これは決定事項です」

 

 (いやいや、待って待って……。何で私がそんなものの一員になってるのよ。拒否権ないってどういうこと?)

 

 パニックで頭の中では小さい私が“行きたくない!やりたくない!!”と叫んで大暴れしている。


「あの……何故私が使節団として行くんでしょうか?もっとふさわしい方がいると思うのですが……」

 冷や汗をかきながらヴィルヘルムさんに聞いたが、答えは私が求めていたものではなかった。


「今回、使節団のリーダーはゴルム氏にお願いしています。現バルドガルド王の血族で、王族と直接話せる外交の要になります。そして、ローガー氏にも同行していただきます。ローガー氏は古龍発見から隠蔽まで深く関わっています。何より採掘ギルドから拷問まで受けた当事者です。」 

「そこまでは分かります。でも何でそこに私とクロが加わるんですか!」

「何故って、バルドガルド王からミサキさんを連れてくるよう要請があったからです」

「………………は?」

 開いた口が塞がらないとは、正にこのことだ。

何故ただの主婦が、一国家のトップから名指しされなければならないのか、全く理解できない。

「え?…………え??私、何か失礼なことでも……?」

 

 (ま、まさかゴルムさんや、ローガーにタメ口だったり、怒鳴ったりしたから?不敬罪とか??)

 

 それなら心当たりがありすぎると顔を青くしながら尋ねたが、ヴィルヘルムは「違います」と一蹴した。


「ローガーの救出をしたのはミサキさんだとゴルム氏が手紙で報告したようです。お礼がしたいと言うことでした。あとは他のドワーフから聖女様の話を聞いたらしく、どうしても会ってみたいとのことです」

「お礼とかいらないので、断ってもいいで――」

「駄目です」

 出来ることなら断りたいと言いかけるも、被せ気味で逃げ道を塞がれ、諦める他なかった。

 

「ですよね……」

「私がついて行きたいところですが、ギルマス代理としての仕事と、龍も起きる可能性がある中、街を離れられません。ですので、今回は冒険者ギルド側の捜査責任者、兼護衛として、ダニエルとジャンの二人を同行させます」

「護衛も兼ねているんですか?」

 ジャンならまだしも、ダニエルが戦う姿が想像できずに眉根を寄せて天井を見る。

「あれでも優秀なんですよ。私が太鼓判を押します。ご安心ください」

「道中の安全より、不敬罪で首が飛ばないかのほうが怖いんですけど……」

「ミサキさんは、質問に答えるだけで大丈夫ですよ。あとはジャンとダニエルがやりますから」

 そうは言われても、すぐ頭に血ののぼる自分に不安しかない。

 やっと潜入捜査が終わって、少し肩の荷が下りたというのに、何故こうなるのだろうと重いため息がでた。 

 

 

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