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神は愛を知らない 〜チートなし40代主婦。姿なき我が子を捜して突き進む異世界生存譚〜  作者: 忠犬
第三章 母の迷いと、黒き相棒〜鉱山の闇編〜

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第六十五話 教育的指導

「あぁ……疲れた」

 すぐにでも寝そべりたいのを我慢して片付けを急ぐ。

 次はもっと仕込まないと、全然足りないなと考えながら手だけは止めることなく動かしていく。


「今日はすごかったじゃねぇか!大盛況だな」

 そんな声が横から聞こえてきた。串焼き屋のおっちゃんだ。

「明日も来るんだろ?俺も一杯貰うからよ!残しといてくれねぇか?」

「ありがとうございます!ちゃんと取っときますね」

「それはそうと……。あんた、孤児に飯食わしてやってただろ?あれ、止めたほうがいいぜ」

「……どうしてですか?」

「この辺のガキは、素行が悪くてよ。盗みもすれば強盗まがいのこともやっちまうんだ」


 去年から原因不明の病が少しずつ大人の間で広がり、亡くなる人も出てきて、孤児が増えてきているらしい。

 その子供たちが行き場を無くして、徒党を組んで悪さをしている。

というか、必死に食いつないでいるのだという。


「あの子もそのグループの一人なのかしら」


 あんなに可愛い子を残して逝かなければならなかった母親の無念を思うと、自分の状況も相まって、視界が急に滲んだ。

 

「お、おい、どうした!?大丈夫か?」


 急に泣き出したおばさんに慌てふためく串屋のおっちゃん。

 端から見ると痴情のもつれか何かだと邪推されそうな様子に串屋のおっちゃんも気が気ではない。


「すみません。私もはぐれた子供達を探しているので……」

「あぁ……。なるほどな。だけどよ、あんた一人で孤児全部を面倒見るわけにはいかねぇだろ?自分の子供見つける前に潰れちまうよ」


 人間、出来ることと、出来ないことがあるんだ。

と言って串屋のおっちゃんは店に戻っていった。


「どうにもできない……のよね」

 分かっている。

 けれど、子供が飢えているのを見るのは、母親としてあまりに忍びない。 

 徒党を組んで悪さをするしか食べていける手段がないのが、そもそも良くないのではないか。

 この国の福祉や支援はどうなっているのか知らないが、まぁあまり期待できないのだろうと、重いため息を吐く。

 完売御礼で満たされていた気持ちが、どこか遠くに蹴飛ばされたような気がした。

 



 重い足取りのまま、明日の仕込み用の食材を買うべく、質のいいものを置いている店に寄る。


「昨日と同じものを倍の量で貰えますか?」

「あぁ、昨日の!倍の量ってことは、全部売れたのかい?」

「はい、昼過ぎには売れてしまったので、全然足りなくて……」

「そりゃ凄いねぇ!でも気をつけなよ、最近は鉱山で働いてた人から病で倒れていくって噂が流れはじめてるんだ」

「そうなんですか?」


 (昨日、クロが見つけてきた魔晶石と関係あるのかしら……)


そんなことを考えながら商品を受け取り、台車へ詰め込んでいく。

 まとまった量を買ってもらえる店のおばさんは嬉しそうに代金を数えていた。

 それから次々に買い込んでいき、凄い量の食材を台車で運んでいると、目の前にさっきの小さな男の子、マウロが立っていた。


「あら、マウロ。どうしたの?」

「あのね……えっと。ぼく、ほんとは嫌なんだ」

「?嫌って、何が?」

「あのね、あの……ご、ごめんなさい!」

「ごめんなさいって、どうし――――――っ!」


 言い終わらない内に四方八方から襲い掛かられた。


 (食材目当て!?渡さないわよっ!)


 一番近くの小柄な男の襟首を掴んで、後ろに放り投げる。

 ぐえっ!と声が聞こえたが、見る暇などない。

 ざっと見て六人はいる。

 一人はさっき投げ飛ばしたからあと五人――。

 手前の男に目が合った瞬間、一気に距離を詰め、そのままの勢いで飛び蹴りする。

 受け身を取り、勢いを殺さず次へ襲いかかる。


「ひぃっ!」


 と目の前の男から悲鳴が聞こえたが、構わずタックルの体勢に入る。

 しかし横から飛びかかられ、若干バランスを崩した。


「いまだ!食材を奪えっ!」


 飛びかかってきた男が叫んだのを聞き、違和感を覚えた。

 投げ飛ばしたやつも、しがみついているやつも、妙に軽い。

私は自分にしがみついている男の頭を掴み上げ、その顔を覗き込んだ。

そこにあったのは、まだ幼さの残る少年の顔だった。

 

「お、お兄ちゃん!」


 マウロが心配そうにこちらを見ていた。

 よく見れば顔立ちが似ている。

 (孤児で徒党を組んで強盗まがい……ね。なるほど。)


「あんた達が強盗まがいの孤児集団ね?」

「だ、だったら何だ!こっちだって食わなきゃいけないんだ!」

「ふーん……。あ、そう。」

 

 一瞬の沈黙。

 

 直後、私は脇にしがみついていた少年をひっ捕らえ、無理やり自分の膝の上に腹ばいにさせた。

 

「な、何しやがる!離せ!」

「うっさいわね!悪いことしたらごめんなさいでしょ!?」

「……は?」

 マウロの兄は一瞬何を言われたのか理解できずに、ミサキの顔を見て固まってしまった。

 周りの子供達もリーダー格の仲間が捕まったからか、オロオロしている。


「悪いことしたときは、きちんと謝りなさい!ごめんなさいは!?」

「な、何言ってんだ!謝るわけねぇだろ!食料よこせ!」


それを聞いた瞬間、右腕を大きく振り上げ、マウロの兄のお尻めがけて振り下ろした。


 バッチーーーーンっ!!!!


「ぎゃあっ!」

「ごめんなさいは!?」

「だ、誰が言うか!ババア!」

「バ……っ!こんのク……」

 いかんいかん、子供相手にムキになるな、ミサキ。

 クソガキなんて悪い言葉遣いはダメよ!

 

「クソババア離せよっ!」

 

 ――プチっ。


「ごめんなさいは!?」

 バッチーーーーン!

「ぎゃ!」

「ごめんなさいは言えないの!?」

 バッチーーーーン!

「うぅ……」

「悪いことしたら?!」

 まだかと腕を振り上げた瞬間、ごめんなさいぃぃぃ!と涙と鼻水を豪快に出しながら謝ってきた。

「分かればよろしい」

 スッと立ち上がり、周りを見渡すと、いつの間にか町の人達に囲まれて見られていたことに気づいた。


「やってしまった……」

 また変な噂が広がるわ。

 ていうか、情報収集どうすんのよ、これ。

 自分の突飛な行動に自分自身で呆れ果て、最早頭を抱えて立ち尽くすことしかできなかった。

 

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