↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神は愛を知らない 〜チートなし40代主婦。姿なき我が子を捜して突き進む異世界生存譚〜  作者: 忠犬
第五章 ノクス=ヴェリア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/150

第百三十四話 打ち明ける決意

 子供達のことで悪い方にばかり考えが浮かび上がり、私の心臓は爆発するのではないかと思うほど脈打っていた。

 クロは私の心情を慮ってか、尻尾をいつものように差し出し「落ち着け」と諭してくれる。

 私は遠慮せずクロの尻尾を掴み、心を落ち着かせることに集中した。

 

 (いま焦っても仕方がない。いま出来ることをやるのよ……)


 呼吸を整えている私を見て、タリエシンさんは口を開いた。

「恐らく、ミサキの子供はこの国にはおらぬよ」

「え……?」

 その言葉を聞いて、私はガバっと勢いよく顔を上げてタリエシンさんを見た。

「な、何故分かるのですか……?」

「人族の子供が迷い込んだ。これはダークエルフにはかなりの大事件よ。そうなれば、自ずと村の長からシャーマンへと話が舞い込むはず。それなのに、私のところへ話は来ておらぬからのう」

「シャーマンは相談役なのですか?決定権はシャーマンにあるのですね?しかし、村にシャーマンがいないところもあるのでは……」

 私は次々と湧き出てくる疑問を、タリエシンさんにぶつけていく。

 タリエシンさんは嫌な顔ひとつせず、深みのある目元を和ませ、ゆっくりとうなずきながら誠実に答えてくれた。

 本来、ダークエルフという種族はこうあるものなのだろうか。

 人族が後から来て、住処を追いやったがために、あんな性格になったのだろうかと聞くに聞けない疑問まで浮かぶ。

「村に必ずシャーマンがおるわけではない。いるほうが珍しいのう。大体は首都か街におるのじゃよ。私は隠居してこちらに来たのでな」

「では、ここから近い村々の情報は、タリエシンさんに入ってくるのですね?」 

「それはちょっと違うのう。ノクス=ヴェリアのほぼ全ての情報が入ってくると言っても良いかも知れぬな。首都のシャーマンは、私の後任なんじゃが、何かにつけて私のところへ念を飛ばして相談してきおる。困ったものじゃよ……」

「ほぼ全て……?」

 それが本当であれば、私の子供達はこの国で酷い目に遭っていないことになる。が、しかし、それは同時に“ここにならいるかも知れない”という僅かながらの希望が潰えたことを意味した。

「そういえば、タリエシンは首都の大シャーマンをしていたことがあったな」

  タリエシンさんは白い顎髭を撫でながら苦笑し、一転して真剣な面持ちで私を見つめた。

「昔の話よ……。もしそれでも首都に行って情報を集めたいのであれば、私から向こうに口利きをしておこう。私の友人ということであれば、手を出しはしまい」

「助かる」

「あ、ありがとうございます!!」

 いないかもしれない。けど、自分で探してみないと納得できない。

 少しでも、そこに可能性があるのなら行ってみたい。

 そう決意したとき、タリエシンさんは私を見て言った。

「……今日は夜中に起こして連れてきてしもうて、すまなかったのう。この村の奴らもじゃじゃ馬が多くて躾が大変でのう。今日は私のところに泊まっていくのが良かろう」

 そう言ってタリエシンさんは、横に置いてあった大きな杖を一振すると、どこからか布団がふよふよと飛んできて、部屋の隅に置かれた。

「そこで寝るが良かろう。メルケはどうする?」

「俺もそこで寝る。気にするな」

 それだけ言って布団に向かうクロに、タリエシンさんは笑って言った。

「ほぉ……。メルケ、お主。うら若いお嬢さんと一緒に寝ておるのか!役得よのう」

「うるさい!!そんなんじゃない!!!」

 クロは耳をぺたりと寝かせ『全く!お前という奴は昔から……!』とブツブツ文句を言いながら、八つ当たりするように布団をフミフミしていた。

 照れ隠しだろうか。

「クロ、私と寝たいの?」

 ニヤリとしながらクロに聞いてみたら、いつもよりかなり強めのネコパンチを顔面に食らってしまった。

 爪は出てないのが救いだが、次から揶揄(からか)うのも程々にしておこうと心に誓った。


 知らないところでは光源がないと落ち着かないだろうとタリエシンさんが魔法の光をそのままにしてくれた。

 月明かりの中ふよふよと漂う仄かな光たちは、幼い頃見た蛍を思い出させる。

「……そういえば、(あまね)(わたる)は見たことないかも知れないわね、蛍」

 私の実家は田舎にあり、家の裏手には田んぼや湧き水の出る池があった。

 6月にもなると蛍が飛び交い、小さい頃はよく父と兄と捕まえていた記憶がある。

「忙しさにかまけて、何にもしてあげられてないのね……」

 誰に話したわけでもなくボソリと呟いたその言葉は、自分の心を深く抉った。

 もっとああしていれば、こうしてあげていれば。

 そんなことを言っても、意味のないことだと分かっているが、自分を責めることしか出来なかった。

 こうしている間にも、子供達がお腹を空かせていないか、痛い思いをしていないかと、考えるのはそんなことばかりだ。

「こっちに来てないことを祈るしか……」

 と呟いたときに、ある考えが浮かんだ。

 クロに異世界から来たと打ち明けてはどうかと。

 もしかしたら、クロは気づいているかもしれないが、何かヒントが見つかるかも知れない。

 それに、タリエシンさんもいる。

 大シャーマンがどういうものかは、まだよく分かっていないが、恐らく神との交信や加護の鑑定などが出来るのだろう。

 であれば、もしかしたら異世界召喚のことも何か知っているかも知れない。

 少しは希望が見いだせそうな気がして、私は目を閉じ意識を手放した。

  

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。