表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神は愛を知らない 〜チートなし40代主婦。姿なき我が子を捜して突き進む異世界生存譚〜  作者: 忠犬
第四章 バルドガルド王国派遣編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/126

第百十五話 溶けゆく我が子

 目を開けても、目を閉じても真っ白で、耳はキーンとした音しか拾わない。

 生きているのか、死んでいるのかもよく分からない状況で、私の耳にかすかに届いた声。


「……お母さん」


 ハッとして顔を上げ、辺りを見回しても姿はない。

 ただ、真っ白の世界が続いていた。

「行かなきゃ……」

 呼ばれた気がした。あの子達が助けを求めている。

 きっと、あそこにいる。


 ——龍の腹の中に。


 目を凝らし、古龍は何処だと探すが、薄っすらと視界が戻ってきた私の目に入ってきたのは、惨憺たる光景だった。

 龍縛杭(りゅうばくこう)によって地面に縫い付けられた古龍は横倒しの状態でブレスを吐いた。

 そのせいで近衛騎士達の被害は甚大で、ほぼ炭と化した者、上半身が消し飛んだ者、身体の一部がない者、崩落によって押し潰された者があちこちに転がっていた。

 ヘルムフリートさんも近くにいたせいで、落石に巻き込まれ、足が挟まっている。


 古龍は龍縛杭(りゅうばくこう)から逃れようと必死に身体をくねらせて藻掻いていた。

 抜け出すのも時間の問題かもしれない。

 早く2打目の龍縛杭(りゅうばくこう)を打たなければ。

 とにかく古龍を捉えて腹の中を確認しなければならないと思い、私はヘルムフリートさんのところへ走り出した。

 クロも私の後ろからついてきて、辺りを警戒してくれている。


「ヘルムフリートさん!大丈夫ですか?!」

 落ちてきた岩をどかそうとするが、一人ではビクともしない。

「ミサキ殿、私はここから抜け出せそうにありません!龍縛杭(りゅうばくこう)をカルドラン様へ持っていって下さい!!」

 ヘルムフリートさんは、そう言ってバズーカ型の龍縛杭(りゅうばくこう)を私のほうへ押しやった。

「どの道、私では起動できないようです。早く!!」

「分かりました。バルドガルド王へお届けします」

 ヘルムフリートさんへ頷きながら答えると、私はすぐに踵を返してバルドガルド王の元へ駆け出した。

 古龍はその間、尻尾を振り回しては騎士や岩を吹き飛ばしている。

 飛び交うものを避けながら、必死に走った。

 古龍のほうをチラリと見て、黄色いネズミのキーホルダーは何処だと確認するが、土埃のせいで全く分からない。

 その時、目の前に急に何かが飛び出してきた。


 ——アースワームだ。


 気づいたときには、目の前にアースワームの口があった。

 キーホルダーを探すのに気を取られ、反応するのが遅れた。

 まずい――と思った瞬間、目の前のアースワームが猛烈な勢いで横へと吹き飛んだ。

「え……何が……」

 呆気に取られている私に、ローガーが声をかけてきた。

「聖女様!無事か?!」

 その姿はいつもの小柄なローガーではなく、バーサーカーと化していたときの大男の姿だった。

「ロ、ローガー?!こ、今度はちゃんと意識があるのね……?」

「あぁ、よく分かんねぇが、聖女様がアースワームに襲われそうになってんのが見えて、気づいたらこんなだ」

 本人もよく分かっていない様子で、かなり戸惑っていた。

 お礼を言おうとしたとき、足元が少し迫り上がる感覚がしたため、バックステップすると、アースワームがまた出てきた。

 一匹や二匹ではない。

 そこかしこから、アースワームが数十匹も出てきている。

 しかもルブロンスパイダーまで採掘区の奥から、わらわらと出てきているのが見えた。

「何なのよ、これ……」

 冷や汗が吹き出し、思わず龍縛杭(りゅうばくこう)を抱えた腕に力が入る。

「弱った古龍目当てに、魔物が集まって来ている!!古龍を食わすな!魔物が進化するぞ!!」

 ヨルゲン隊長が叫びながら指示を出し、重装機械弓を飛ばして応戦する。

 先程まで古龍と戦っていたのに、今度は古龍を守らなければならない状況に思わず苦笑いした。

 

「聖女様!俺が前を走って道を作る!後ろから着いてきてくれ!!」

 そう言ってローガーはツルハシを振り回しながら走りだした。

 飛び出してきた魔物をなぎ倒し、道を切り開く。

 吹き飛ばしても、更に襲いかかろうと食らいつく魔物は、クロが私の後ろから爪の斬撃で掃討していた。

 私はただ、龍縛杭(りゅうばくこう)を抱えて走るしか出来なかった。

 

 これを届けられなければ終わる。


 そう考えると、自然に龍縛杭(りゅうばくこう)を握る手に力が入った。

 龍を守りながら、龍からの攻撃にも気を配らなければならない状況は、かなり神経を削っていく。

 騎士団の面々の疲労の色が、より一層濃くなりはじめた。

 龍の咆哮に身をすくませれば、ルブロンスパイダーやアースワームがそこにつけ込み襲ってくる。

 龍に近づきすぎれば、尻尾で薙ぎ払われて吹き飛び、落ちたところで他の魔物に食われる。


 これはもう、詰んでいるのではないだろうか。


 そんな考えが私の頭を掠めたが、前を見ればバルドガルド王に龍縛杭(りゅうばくこう)を届けようと、必死になって、迫りくる魔物にツルハシを振るっているローガーがいる。

 私の後ろには、着いてくる必要などないだろうに、何故かここまで付き合ってくれているクロがいる。

 それだけで、少し勇気が湧いた。

 私も自分が出来ることをするしかないのだ。

 あの子達が助けを求めているのなら、やるしかない。

 絶対に、助けなきゃいけない!

 龍の腹にだって入ってやる!!

 早く、早くしないと、(あまね)(わたる)も消化されてしまう。

 待ってて、今お母さんが――。


 そう決心した瞬間、大きな岩の塊が横から吹き飛んでくるのが分かった。

 しかし、気づくのが遅かった。

 岩の直撃を受けた私は、そのまま意識を手放した。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ