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千物語  作者: 松田 かおる


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僕たちの楽園

他人と関わり合うことが嫌いだった僕は、小さい頃からずっと一人で過ごして来た。

小学校,中学校,高校と進んでも僕は友達を作らず、ずっと一人ぼっちだった。

そのせいでちょっかいを出しやすいのか、僕のポジションは「クラスのいじり陰キャ」に、そして「いじめ陰キャ」へと変わっていった。

それでも僕は、「そのうち飽きて落ち着くだろう」と耐え続けていた。


そしてそんなことが続きながら「一人でいること」を望んでいたからか、いつしか「僕以外の全てが止まった世界」を作れるようになってしまった。


誰にも関わらずにいられる世界。

それはまるで、僕にとっての「楽園」だった。

ただ、長時間この「楽園」に居続けると悪い影響が出るようで、時間が経つと少しずつ意識がぼんやりとしてきた。

きっとそのまま意識をなくしてしまうのかもしれない。

そんな時間制限付きだったけど、辛いことを忘れられる「自分だけの楽園」があることは、この上ない幸せなことだった。




そしていつものように僕が「楽園」にいたある日。

僕以外に動いている人に出会った。

その人は僕と同い年くらいの女性だった。

同じ「楽園」にいる彼女のことが気になったので、声をかけて話をしてみた。

すると彼女もまた僕と同じように「一人でいることが好き」で、「そのせいでクラスでいじめられている」とのことだった。


声をかけたくなった理由がわかった気がした。




彼女と「楽園」で会うようになって、楽しく過ごしていたある日。

僕は我慢できないいじめを受け、つい相手に手を出してしまった。

すると他の連中が僕をさらにいじめてきた。

さすがにこれには耐えられず、僕は教室から飛び出した。

そして

-どうして僕だけがこんな目に-

そう考えた僕は、「楽園」に逃げた。




「楽園」には、泣いている彼女がいた。

僕が理由を聞くと、「僕と同じような目に遭った」とのことだった。

それにしても、偶然にしてはあまりにできすぎている話だ。

もしかしたら、彼女は「鏡合わせの世界の僕」だったんだろうか…


そんなことを考えながら、僕はこの「楽園」にとどまり続けることを彼女に告げた。

すると彼女はしばらく黙った後、

「…私も…もう戻りたくない」

そうぽつりと言った。




僕たちは近くのベンチに座って、お互いの手を握り合った。

彼女を見ると、幸せそうに笑っていた。

僕もそうだったかもしれない。


…やっと本当の「友達」ができた。


薄れていく意識の中で、僕はぼんやりとそんなことを考えた。

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