身代わり生活
「死ねええええ!」
鈍く光るモノを腰だめで構えた若者が、随分と物騒なことを叫びながらオレに向かって突進してきた。
「よう、目が覚めたかい、『親父』?」
そう話しかけてくる男の声で、オレは目を覚ました。
この男は、「親父」の側近のようなやつだ。
「あぁ…今度はどうだった?」
その「側近」に聞くと、
「心臓のところをひと突き、見事に『即死』だったぜ」
と、感心したような口調で言った。
「そうか…で、これで七回目だったっけ?」
オレが聞くと、
「よく覚えてるな」
「側近」はまた感心したように言った。
オレはため息をひとつ返して、ベッドから起き上がった。
オレはとある組織の「親父」の身代わりを務める、アンドロイドだ。
一体何をやったのかは知らないが、命を狙われ続ける「親父」の身代わりとして過ごしている。
そして当の「親父」は、命を狙われることへの恐怖感からか、オレに全てを任せて自宅の奥に引きこもっているそうだ。
そんな訳で、何もしなくなってしまった「親父」の代わりに仕事をするようにまでなってしまった。
四六時中身代わりを務めていると、当然本物の「親父」に代わって命を狙われることも増えてくる。
実際さっきのように、「殺される」こともある。
しかも「データの蓄積」とかで、オレが「殺される」瞬間までのデータがしっかりとオレのメモリーに記録されている。
「自分が殺される瞬間」を覚えているのは気持ちのいいものではないが、これも身代わりの仕事として割り切るしかないだろう。
それにしても…
「こんなに何度も殺されちゃ生き返る…なんてことをしてたら、不審に思われないか?」
オレが「側近」に聞くと、
「逆に『不死身伝説』を作り上げてるぜ。『殺しても死なねえ』って言われてるぞ」
そう言うと「側近」は、愉快そうに笑った。
まあ、確かに不死身ではあるが…
そんなある日のこと。
「『親父』が死んだぜ」
「側近」がオレに告げた。
死因が気になったので、
「…誰にやられたんだ?」
オレが聞くと「側近」は肩をすくめながら、
「フグ」
とだけ言った。
なんとも随分とあっけないものだ。
…ん?
待てよ?
だとしたら…
「じゃあ、オレもこれでお役御免、ってことか?」
頭に浮かんだ疑問を「側近」に告げると、ヤツはきょとんとした顔で
「何を言ってるんですか?『親父』はここにいらっしゃるじゃないですか」
と言い、
「さあ、仕事の時間ですよ、親父?」
そう続けると、オレに向かってうやうやしく頭を下げてきた。




