引きこもりの神さま
「神様ー、こんちわー」
暑い日差しの中、少女が神社の鳥居をくぐりながら拝殿の方に声をかけると、
「…おー、娘か。よくきたの…」
それに応えるかのように神様が、「ポン」という音が聞こえそうな勢いで少女の前に現れた。
だが少女はその様子を見て何か気付いたようで、
「あれ、なんか元気ないじゃん。暑さにやられちゃった?はいこれ」
そう言いながらアイスキャンディーをコンビニ袋から一本取り出して、神様に渡した。
神様は
「すまんのぅ…」
そう言いながらアイスキャンディーを受け取って、早速口に運んだ。
「で?本当に夏バテなの?神様らしくもない」
少女がそう聞くと神様は、
「いや、夏バテではない。神は気候の影響など受けぬからな」
あまり力のこもっていない口調で答えた。
少女はそれを聞くと
「えー、そうなの?アイス損した、返せ」
と、地味に罰当たりなことを笑いながら言った。
「理由は解っておるのだ」
アイスを食べ終わった神様が口を開いた。
「何?」
少女が聞くと神様は少し間を置いて、
「信心が不足してきておるのだ」
と言った。
それを聞いた少女は
「そりゃ本殿にひきこもってばっかだもん。そうもなっちゃうよ」
さも当たり前のように言ったあと、
「でも、信心なくなると消えちゃうんでしょ?」
ほんの少しまじめな口調で言った。
「それは解っておるのだが…」
神様は煮え切らない。
「じゃあなんで顔出さないのよ?」
少女が聞くと、神様はしばらくの沈黙の後、
「…情が深まると、別れが辛いのだ」
そう呟いた。
「…そっか、神様は人間よりもずーっと長生きだもんね…」
そう言って、少女はアイスの最後の一口を口に運んだ。
「でも、このまま引きこもってたら『死んじゃう』よ?」
「…うーむ」
「そうだ!ここでお祭り開こうよ。そうすれば参拝客も来て信心高まるんじゃない?」
「そうなると、みなの前に顔を出さんといけないのだろ?」
「当り前じゃん。祀ってもらってるんだからそのお礼ぐらいみんなに言わないと」
「そこまでするくらいなら、し」
「んだ方がマシなんて言わないでよ?あたしは神様と会うの楽しみなんだから」
「うむむ…」
「グズグズ言わない、ハイ決まり!お祭り開くからね!覚悟決めてよ?」
「…お主には敵わんな」
そして秋。
神社では立派なお祭りが開催された。
最初は面倒臭そうに嫌々といった感じで参拝客の前に顔を出した神様も、結局は誰よりも楽しんでいたようで、最後はすごくいい笑顔で参拝客と話をしていたそうだ。




