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千物語  作者: 松田 かおる


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愛は盲目

大きな声では言えないが、俺は「結婚詐欺師」を生業としている。

もう何人の女を騙してきたのか、覚えていないくらいだ。

それほどたくさんの女を騙してきたわけだが、罪悪感はほとんど感じない。

考えてみてほしい。

俺に騙される女は、俺に「結婚」という夢を見させてもらっているんだ。

世間では「犯罪」と言っているが、俺に言わせれば「女に夢を見させた対価をもらっている」だけにすぎない。

正直な所、騙される方に責任があると言ってもいい。

そもそも結婚なんて、息苦しいだけだ。

だから俺は、一生独り身のままでいいとすら考えている。




そんなことを考えていた俺に、あっさり転機が訪れた。

結婚とまではいかないが、それに近い付き合いをしたい女に巡り合ってしまった。


まさに「一目ぼれ」だった。


俺は彼女を何とかしたいと思い、結婚詐欺で培ったテクニックで早速彼女にアプローチして行った。

やがて親しい間柄になって色々な話を聞いていると、彼女は「旧華族の流れを汲む家系の隅っこ」あたりの血筋だということが分かった。


いわゆる「箱入りお嬢様」だった。


そうなると、俺の生活レベルを彼女に合わせる必要が出てくるのも当然の話だ。

俺はますます結婚詐欺を働き、稼いでいった。

そしてその稼ぎを、惜しみなく彼女との生活につぎ込んでいった。

一流のデートコースに一流の食事、そして一流のプレゼント…

彼女が喜ぶ顔を見ているだけで、俺の心は満たされていった。

「彼女とならば結婚してもいい」と思うようになるまで、それほど時間はかからなかった。


だが、それと同時に「結婚詐欺で儲ける」事に抵抗感を覚えるようになった。

俺は結婚詐欺をやめ、まっとうな人間になることを決めた。

そして彼女に「結婚を前提とした両親への挨拶」を打診した。

彼女は二つ返事でOKしてくれて、両親と会えることになった。


両親の実家で会うことになった日。

「先に実家で待っているから」という彼女からの連絡を受けて、一人彼女の実家に向かった。




「そんな人、いませんよ」

インターホン越しに、冷たい返事が返ってきた。

そんなはずはない、と改めてインターホン越しに伝えたが、帰ってきた返事は

「ここの家の人はずっと独身で、子供どころか奥さんもいない」

だった。


改めて彼女に電話をかけると、「この番号は使われておりません」というメッセージが返ってきた。


じゃあ、今まで贈ったプレゼントやデートで使った金は?

…まさか、結婚詐欺だったというのか?

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