使えない社員
「いいから俺の言った通りにすればいいんだよ!」
目の前の新人を、俺は怒鳴りつけた。
「あの…でも課長…」
新人は口ごもりながら反論しようとするが、
「お前はまだ新人で何もわからねえだろうがな、メールにも『コツ』があるんだよ」
有無を言わさずそう言ってやる。
「俺が言った通りに書いてりゃうまく行くんだよ。今までずっとそうだったんだから」
「…」
とうとう新人は何も言えなくなってしまった。
俺の話に納得したんだろう。
だから俺は、
「ほら、さっさと戻ってメール書き直せ!」
と、怒鳴りつけるように発破をかけて、新人を席に戻らせた。
-使えない奴。メール一つ満足に書けないくせに、文句だけは一人前かよ-
席に戻ってメールを打ち直している新人を見て、俺は心の中で毒づいた。
「…研修、ですか?」
ある日部長に呼び出された俺は、「研修」を受けるように言われた。
「そう、『AI研修』を君に受けてもらいたいんだよ」
部長はそう言って資料を渡してきた。
そこには
<業務のAI化推進にあたっての初級研修>
と書いてあった。
「自分が…ですか?」
俺にはそんなの必要ないだろう。
そんな気持ちを少し込めて、抗議するように言った。
だが部長はそんな俺の言葉を意に介さず、
「まぁまぁ、せっかくの機会だから受けてきなよ」
の一言で、研修の受講が決まった。
研修はまず「メールのAI化」から始まった。
今更俺がメールの研修だって?
呆れながら俺はまず自分でメールを書いて、AIにチェックさせた。
<まるでダメですね>
AIは俺のメールを見て、文字通り瞬時にそんな反応を返して来た。
<なんでだよ、俺は今までこうやってきたし、それで客をしっかり掴んで来たんだぞ>
俺が反論すると、AIは
<古臭いです。今はこんな文章、誰にも読んでもらえませんよ>
そんなことを言ってきやがった。
<じゃあどういうメールならいいんだよ、お前書いてみろよ>
俺が指示すると、瞬時にメールを作って見せやがった。
それは前にダメ出しした新人のメールそっくりだった。
<そんなバカなことあるかよ>
俺が抗議すると、
<この方が新規受注率が高いんです。あなたのメールは既存客にしか通用しません>
冷静に返して来た。
<あと、あなたの書いた営業メール、新規受注率最下位ですよ>
-そんなバカな…俺のメールじゃダメだってのか?-
そんなことを考えていたら、AIが
<その歳でメール一つ満足に書けないなんて、あなた使えませんね>
と言ってきやがった。




