イヴ様とアダム
昨日、世界が突然滅んでしまった。
そして都合よく世界に残された人類は、たった二人だった。
一人はあたし、そしてもう一人は…
「よりによってなんでアンタなのよ!」
目の前にぼけっとつっ立っているアイツに向かって、怒りとも絶望ともつかない感情で言い捨てた。
「でも、僕たち幼馴染みだし…」
アイツが少し遠慮がちにそう言うが、
「だから何だってのよ!世界中の幼馴染みは結ばれてはいハッピー!ってなるとでも思ってんの!?ラブコメの見過ぎよ!」
あたしは一気にまくし立てた。
「でも、このままだと人類は滅んじゃうよ」
アイツはそう言うが、もう本当に無理!
「アンタと一緒に生きていくくらいだったら、このまま滅んだ方がマシよ!」
そう言い切ってやった。
「でも、子孫は遺しておかないと…」
あたしの言葉にアイツがごもっともな反論をするが、
「イヤったらイヤなの!」
そう言い返してやる。
「…じゃあ、『クローン』はどうかな?それならお互い関わることなく子孫を残せるし」
アイツがそう提案してきた。
それだったら確かにお互い関わり合うこともないので、
「まぁ…それなら?」
あたしはそう答えて、アイツの提案を不承不承受け入れた。
そしてあたしとアイツは細胞をクローンマシーンに提供した後、「オリジナル体の『イヴ』『アダム』」としてコールドスリープに入った。
もちろん、アイツとは別の部屋だ。
「イヴ様、おはようございます」
あれから何年経っただろうか。
あたしは時折コールドスリープから起こされて、体の検査を受けている。
検査のために目を覚ますと、目の前には少し顔つきというか輪郭がボケた感じのあたしがいた。
彼女はあたしの何代目かのクローンで、あたしの「世話役」だ。
「『アイツ』はまだ生きてるの?」
あたしが聞くと、彼女は
「はい、『アダム』もコピーもうじゃうじゃいます」
と答えた。
「で、まだ誰もアイツと一緒になろうって気は?」
そんな質問に彼女は、
「アイツと関わるなんてまっぴらごめんです」
首をぶんぶん振って答えた。
「でもさー、これだけ世代が進んだんなら一人くらいは…」
あたしが言うと、彼女は
「遺伝子レベルで無理です!」
と、心底いやそうな表情で言った。
人のことは言えないが、頑固な遺伝子だ。
そんなことを考えていたら、
「そうだよねー!アイツとなんて関わりたくないよねー!?」
彼女が大きい声でそう叫ぶ。
すると
「死んでもイヤ!」
何千とも思えるあたしの声が、施設中から返ってきた。




