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千物語  作者: 松田 かおる


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19/22

イヴ様とアダム

昨日、世界が突然滅んでしまった。


そして都合よく世界に残された人類は、たった二人だった。

一人はあたし、そしてもう一人は…

「よりによってなんでアンタなのよ!」

目の前にぼけっとつっ立っているアイツに向かって、怒りとも絶望ともつかない感情で言い捨てた。




「でも、僕たち幼馴染みだし…」

アイツが少し遠慮がちにそう言うが、

「だから何だってのよ!世界中の幼馴染みは結ばれてはいハッピー!ってなるとでも思ってんの!?ラブコメの見過ぎよ!」

あたしは一気にまくし立てた。

「でも、このままだと人類は滅んじゃうよ」

アイツはそう言うが、もう本当に無理!

「アンタと一緒に生きていくくらいだったら、このまま滅んだ方がマシよ!」

そう言い切ってやった。




「でも、子孫は遺しておかないと…」

あたしの言葉にアイツがごもっともな反論をするが、

「イヤったらイヤなの!」

そう言い返してやる。

「…じゃあ、『クローン』はどうかな?それならお互い関わることなく子孫を残せるし」

アイツがそう提案してきた。

それだったら確かにお互い関わり合うこともないので、

「まぁ…それなら?」

あたしはそう答えて、アイツの提案を不承不承受け入れた。

そしてあたしとアイツは細胞をクローンマシーンに提供した後、「オリジナル体の『イヴ』『アダム』」としてコールドスリープに入った。


もちろん、アイツとは別の部屋だ。




「イヴ様、おはようございます」


あれから何年経っただろうか。

あたしは時折コールドスリープから起こされて、体の検査を受けている。

検査のために目を覚ますと、目の前には少し顔つきというか輪郭がボケた感じのあたしがいた。


彼女はあたしの何代目かのクローンで、あたしの「世話役」だ。

「『アイツ』はまだ生きてるの?」

あたしが聞くと、彼女は

「はい、『アダム』もコピーもうじゃうじゃいます」

と答えた。

「で、まだ誰もアイツと一緒になろうって気は?」

そんな質問に彼女は、

「アイツと関わるなんてまっぴらごめんです」

首をぶんぶん振って答えた。


「でもさー、これだけ世代が進んだんなら一人くらいは…」

あたしが言うと、彼女は

「遺伝子レベルで無理です!」

と、心底いやそうな表情で言った。

人のことは言えないが、頑固な遺伝子だ。

そんなことを考えていたら、

「そうだよねー!アイツとなんて関わりたくないよねー!?」

彼女が大きい声でそう叫ぶ。

すると

「死んでもイヤ!」

何千とも思えるあたしの声が、施設中から返ってきた。

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