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千物語  作者: 松田 かおる


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16/22

距離感

「あのお店わたしも行きました!特にイチゴタルトが絶品ですよね!」

「この間の配信で言っていた観光スポット、とても良かったです!もしかしたら鉢合わせしちゃうかもしれないですね!」

「今度最寄り駅の近所に、お気に入りのブランドのセレクトショップが開店するそうですよ!ぜひ一緒に行ってみたいですね!」


配信者にチャンネルを出禁にされた。




「一昨日の書き込みにあったアクセサリー、わたしも買いました!お揃いです!」

「さっきの書き込みにあったコスメ、わたしも試してみます!」

「わたしの趣味や好みと一緒なものがたくさんありますね!今度一緒に語り合いませんか?」

「最近メッセージに返事くれないですね。お仕事忙しいんですか?」


SNSをブロックされた。




「なんでだろう…」

仕事帰りの居酒屋。

わたしが飲み友達の同僚に向かって呟くと、

「そりゃあんた、『距離感』がおかしいからよ」

そうあっさりと返された。

「そうかなぁ」

わたしが言うと、

「直接会ったこともない相手からぐいぐい間合いを詰められてみな?普通はあまりいい気分はしないわよ?」

彼女は「それが当たり前」と言わんばかりの口調で言った。

「わたしはそんなことないけどなぁ。好きな人には自分のことたくさん知ってもらいたいし、それでお互いの間も縮まるんじゃない?」

素直に思ったことを言うと、

「確かにあんたみたいな人もいるわよ。でもそうじゃない人もいるってことは、頭の隅に置いておいた方がいいわよ?」

彼女は言い含めるように言って来た。

「…んー」

ちょっと納得しきれない気持ちで生返事をすると、

「いい?『距離感』は大事にしなさいよ?」

彼女は改めてわたしに釘を刺すように言った。




そんなことがあってからしばらくした頃。

ちょっとした縁で、「いいお付き合いができる相手」ができた。

わたしは一応彼女に言われたことを頭に置いて、いきなり間をぐいぐい詰めるようなことはせず、ある程度「距離感」を持って付き合ってきた。

そのおかげか、いつしか彼に「おうちデート」に呼ばれるまでの関係になった。


わたしは改めて、「距離感」の大切さを実感した。




今、わたしと彼は「ちょうどいい距離感」でのお付き合いを続けられている。

-やっぱり「距離感」って大事なんだなぁ-

そんなことを考えながら彼の部屋に仕掛けた隠しカメラと隠しマイクのスイッチを入れて、彼の生活を身近に感じる日々を送っている。


お互いの距離は離れているから、問題ないしね…

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