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千物語  作者: 松田 かおる


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14/15

長年付き合っていた彼女に、「本当にどうでもいい理由」で振られた。

あまりにも「どうでもいい」理由すぎて、振られてから二,三日くらい気持ちの整理がつかなかった。


しばらくして少し気持ちの整理がついた頃、俺の足元にひとつの「穴」が現れた。


「穴」は直径10センチくらいのもので、足元にぽっかりと真っ暗な口を開いていた。

「穴」の中は真っ暗でどのくらいの深さがあるのかもわからず、スマホのライトで照らしても光が届かなかった。

試しに石ころを落としてみても、底に落ちる音は聞こえてこなかった。

しかもなぜか、俺が動くと「穴」も俺の後をついてきて、常に足元に暗い「穴」が開いている状態だった。


そしてこの「穴」について、二つ分かったことがあった。

一つ目は、「俺自身が『穴』に触れられないこと」。

俺が「穴」の中に物を落とすとそのまま落ちていくのだが、例えば俺の手や足といった「俺自身」を「穴」に入れようとしても、入り口で跳ね返されてしまうのだ。

二つ目は、「『穴』の大きさが日によって変わること」。

はじめは直径10センチくらいだったのだが、時には直径5センチくらいになったり、そして時には直径40センチくらいの大きさにもなったりした。

理由はよく解らないが、きっと何かのきっかけがあって大きさが変わるのだろう。

ただ、「穴」に跳ね返されるから俺自身が落ちることはないのだが、何とも不思議な感じだ。




そんな「穴」との不思議な付き合いが続いたある日。

俺の身に不幸な出来事が立て続けに起こってしまった。

まず、勤めている会社をリストラされた。

「来月から来なくていい」と、上司に告げられた。

そして仕事がなくなって困っているところに追い打ちをかけるように、アパートが火事になった。

外出していたから俺自身は無事だったが、住む所も何もかもがなくなってしまった。


彼女、仕事、そして住む所…

あまりに立て続けに起きる不幸な出来事に、さすがに俺の心は折れる寸前だった。

どうしていいのかも解らず途方に暮れてうなだれると、足元の「穴」が今までにない大きさになっていた。

俺の体なんてすっぽり飲み込んでしまいそうなほどの大きさだ。

おもむろに「穴」に足を近づけてみると、何の抵抗もなく爪先が「穴」の中に入っていった。


…そういうことか。


俺は「穴」の大きさが変わる理由が解った気がした。

そして軽く深呼吸をして、大きく口を開けている「穴」に向かって俺自身の体を沈めていった…

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