表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千物語  作者: 松田 かおる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

雲の上の人

「さぁ、今度こそ返事を聞かせてもらうわよ」

開口一番、あいつは言った。


「久しぶりに会って最初に言うのがそれ?」

僕がちょっと呆れた口調で言うと、あいつは

「そうよー、大事なことだもん」

真剣な表情で返して来た。

「で、どうなのよ?あたしとは付き合ってくれるの?くれないの?」

単刀直入に聞いてきたので、僕は

「…ごめん」

と単刀直入に返した。

あいつは一瞬僕をにらみつけるような顔をしたけど、

「だめかぁー」

とあっさり引き下がり、表情を柔らかくした。

「ごめんね」

僕はまた同じ言葉を返した。




「でもさー」

「うん」

「幼なじみで」

「うん」

「家が隣どうしで」

「うん」

「幼稚園から大学までずーっと一緒で」

「うん」

「家族ぐるみの付き合いなのに」

「うん」

「それでもだめなの?」

「うん…」

「もう。こんなぴったりくる相手なんて、そうそういないわよ」

あいつが言いたいことはよくわかる。

でも僕はそれを解った上で、

「…やっぱり君とは、住む世界が違うから…」

そう答えた。

あいつは

「そりゃあそうかもしれないけど、好きな人とはずっと一緒にいたいじゃない」

と、少し不満そうに返して来た。

「僕からすると君は『雲の上の人』だから…」

僕は素直な気持ちを伝える。

あいつはそれを聞いて、

「うーん…」

と唸って黙り込んでしまった。


「でも」

あいつが口を開いた。

「いつまでも待たせてると、君がおじいちゃんになっちゃうよ?」

「『ともに白髪の生えるまで』?」

僕が少し茶化した感じで応えると、

「失礼ね、こんなうら若きレディに向かって白髪だなんて」

あいつは少し怒ったふりをした。

二人顔を見合わせ、つい吹き出す。

こういう気軽な関係は、嘘偽りなくいいと思う。

でもやっぱり、あいつは「雲の上の人」なんだよな…




「…残念、そろそろ時間だわ」

あいつが言った。

「もう?」

僕が聞くとあいつは、

「先にあちこち顔出してきたからね。後回しになっちゃってごめんね」

少し申し訳なさそうに言った。

「いいよいいよ、君に会えただけでうれしかったよ」

僕が素直にそう返すと、あいつは

「次こそはいい返事聞かせてよね?」

少し名残惜しそうに言った。

「待たせるようで悪いけど、もうちょっと待っててよ」

僕がそう言うとあいつは、

「ま、期待しないで待ってるわ。じゃあ、またね」

微笑みながらそう言って、あっさりと帰って行った。




あいつが帰っていくのを見届けた僕は、

「…次はお盆かな」

そうつぶやいて彼女のお墓に背を向けて、家路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ