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千物語  作者: 松田 かおる


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三代目

俺の家は爺さんの代から続く資産家で、俺はその三代目だ。


世間では「三代目は身上潰す」と言われているが、俺はそんなことはなかった。

小さい頃から爺さんや親父から色々と叩き込まれて来たおかげで、三代目の俺は家の資産をしっかりと守り、そして順調に増やして来た。

世間からも「やり手の三代目」と言われていて、評判は上々だ。

自分で言うのもなんだが、これまで本当にうまくやって来たし、今もうまくやっていると思っている。

言うまでもなくこれからも、だ。


そして当然と言うべきだろうか、俺に関わる連中にも色々な奴らがいる。

俺を慕う者。

俺を尊敬する者。

そして、俺を利用しようとする奴…


俺を利用しようとする奴は容赦無く返り討ちにして、己の身の程を思い知らせてやった。

こう言う手合いは判りやすいからいい。

少しだけ厄介なのが、「表向き俺に好意を寄せていながら、腹の底では俺を利用してやろう」と言う考えを持ったような奴だった。

面従腹背、とでも言うのだろうか。

だがそう言った奴は、ちょっとしたところで簡単に化けの皮が剥がれるものだ。

そしてそんな時は、俺の最も信用のおける仲間が助けてくれた。


資産をしっかりと守れているのは、俺一人だけの力ではない。

彼らがいつも俺を助けてくれているのが大きい。

そんな彼らのおかげで、俺は今の状況をしっかり守っていられるのだと思う。


やはり持つべきものは金でも名誉でも地位でもなく、「信用できる仲間」なのだ。

彼らがいてくれるだけで、俺の将来は間違いなく安泰だろう。


さぁ、今日も彼らと今後の打ち合わせが始まる…




「先輩、あの人また独り言…」

部屋の入口を通りかかった看護師が言うと、

「あー、うん。特に害はないから気にしないでいいよ」

「先輩」と呼ばれたもう一人の看護師が、後輩の言葉に応えた。

「そう言えば、なんであの人ここにいるんですか?」

「なんでも一番信頼している人たちに裏切られて、何もかも無くしたショックで…とか言ってたわね」

「よほどショックだったんでしょうかねぇ」

「そうみたいねー。先生も『多分一生治らない』って言ってたくらいだったし」

「かわいそうですね」

「でも、幸せそうにも見えるから、逆にもしかしたら今の方がいいのかもしれないわね」

そんな会話を交わしながら、二人の看護師は部屋を通り過ぎた。




そんな二人の会話をよそに、男はニコニコと笑いながら

「さぁ、打ち合わせを続けようか」

誰もいない虚空を見上げてそう呟いた。

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