表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千物語  作者: 松田 かおる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/15

カクテル言葉

バーテンダーという仕事柄、いろいろな場面に遭遇することが多い。


出会いと別れ。

笑いと涙。

怒りと悲しみ。


そう言った人間模様が繰り広げられる光景を、よくカウンター越しに見守っている。

もちろん俺自身がそういった場面に関わることはなく、あくまでただその様子を黙って見守るだけだ。

お客様の方から話しかけられたときだけ、必要最低限の会話を交わす。

それがバーテンダーとしてのルールだからだ。




一組の男女が店を訪れた。

男の方は歳の頃は40がらみ、中年と言っていい風体。

そして女の方は…

俺が付き合っている彼女だった。


彼女は俺がここに勤めていることは知っているので、顔を伏せて視線を逸らせてはいたが、それを承知でこの店に来たのだろうか…

それとも連れの男性に連れてこられたのだろうか。

その辺はさすがに判らなかった。




二人はカウンターの端に隠れるように座り、定番のカクテルを注文した。

俺は注文を受けて、カクテルを作る。

もちろん中に何か仕込んだりするような、バカなことはしない。

二人はあくまでも客である、私情を挟むことなど許されない。


二人分のカクテルを出すと、男が聞いてもいないのにベラベラと事情を喋りはじめた。

曰く、

「彼女とはもう何年も付き合っている」

「この間転勤になったが別れるのが辛いので、遠距離恋愛をしている」

「たまにこっちに戻って来たときにデートをしている」

「この店には初めて来たが、店の構えが良かったから入った」

「カクテルはおいしい」

とのことだ。

俺はとりあえず前半分には相槌だけ打ち、後半分は素直に礼を言った。


男が喋っている間彼女は何も言わず、小さく頷いているだけだった。




「なぁバーテンさん、何か今の俺たちに似合うカクテルを作ってよ」

男が俺に言った。

正直この手のリクエストは面倒なので断っているのだが、今回は向こうが勝手に話してくれた状況を知っているので、リクエストを受けることにした。

俺は酒を用意してシェーカーを振り、二人用のカクテルを作る。

そして男には「XYZ」、彼女には「ギムレット」を出した。


「…どうしてこれにしたの?」

彼女が初めて口を開いた。

男の方も気になるようで、俺の答えを待っている。


俺は微笑みながら、

「『花言葉』と同じく、カクテルにも『カクテル言葉』というものがあります。お二人の話を聞かせていただいて、それに合う『カクテル言葉』を持つものをお出ししてみました。意味は後で調べてみてください」

そう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ