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あれから数日アンナリーゼは熱も下がり、すっかり元気になった。今日は久しぶりにレンブラントとお茶の約束をしている。


「レンブラント様、今日は手紙を書いてきました」


「手紙?」


不思議そうにな顔で、レンブラントはアンナリーゼを見遣る。


「はい、いつもレンブラント様からお手紙を頂いているのでお返事を……」


気恥ずかしくなりアンナリーゼは、俯いた。そしてそこでハッと気づいた。よく考えたら手紙なのに、目の前で渡したら意味がない。


ど、どうしよう……違う意味で恥ずかしくなってきた。


アンナリーゼは悩んだ。手紙を渡すべきか、それとも……。


「レンブラント様!私お花を摘みに行ってきます!」


「え、アンナリーゼ?」


アンナリーゼは、それだけ言って走り去って行った。


暫くして戻って来たのはアンナリーゼではなく、フロラだった。


「アンナリーゼは?」


フロラは苦笑すると、そっと手紙をレンブラントの前に差し出した。一瞬呆然とするが、直ぐに笑顔になりそれを受け取った。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「手紙、本当に嬉しかったんだ……」


レンブラントはアンナリーゼを自身の膝の上に乗せ、木陰に座っていた。そして先程まで楽しそうに雑談をしていた彼女は、小さく寝息を立てている。


そんな愛らしいアンナリーゼをいつまでも眺めていたいと、そう思う。


彼女と婚約したのは11年前。出会いはその1年前。


レンブラントは産みの母を亡くし、傷心していた。だが、元々感情を表に出さない性格だったレンブラントはいつもと変わらず過ごしていた。


そんな時、突如現れたのがアンナリーゼだった。その時彼女は迷子になり、城内を彷徨っていた。今思えば侍女達は一体なにをしていたのだろうと、怒りを覚える。だが、そのお陰であの運命の出会いは訪れたのだとも思う。


母が亡くなり、周囲からは腫れ物扱いされ鬱陶しくなり部屋から逃げ出した。そんなレンブラントは中庭の木陰で座り込み本を読んでいたのだが。


『ん?』


視線を感じ顔を上げると、今にも溢れ落ちそうな大きな瞳と目が合った。


『君は……』



ふにゃと笑った彼女は、レンブラントの側に来て。


なでなで。


『いたいの、いたいの、とんでけぇ』


そう言ってまた、ふにゃと笑った。


『ありがとう。でも僕はどこも痛くないよ?』


彼女はきょとんとして、レンブラントを見ていた。


『いたいときは、ないてもいいって、お母さまがいってました』


どういう意味で彼女がそう言ったのかは分からない。だが、レンブラントの心には酷く彼女の言葉が突き刺さった。


気付いたら小さな彼女の足元に、縋り付いて泣いている自分がいた。彼女は優しく頭を撫でてくれた。


『いたいの、いたいの……とんでけ』




これがレンブラントとアンナリーゼの出会いだった。彼女はきっと覚えていないだろう。だがあの時から、レンブラントはアンナリーゼが愛おしくて愛おしくて仕方がない。


彼女の全てを知りたい。彼女の全てを手に入れたい。


「アンナリーゼ……あの日、僕は君に恋をしたんだ。僕はそれから、君が欲しくて欲しくて欲しくて堪らない……本当は、誰にも見られない様に君を何処かに大切に閉じ込めておきたいくらいなんだけど……それをするのはダメだと分かっているから。でも、たまに衝動に駆られそうになる」


レンブラントは眠っているアンナリーゼを、ぎゅっと抱き寄せた。


「柔らかい……それに、アンナリーゼの匂いが……ダメだ、寝顔も可愛すぎて興奮してきた」


レンブラントは1人身悶えた。



「鼻血、出そう……」




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