25 嫌な予感
バグルス・ヴァンダルシア それが僕の名前だ クレシオンシリーズ3番機であり''殺戮''の名を与えられた兵器
僕の見た目は好青年だの優男だのよく言われる この見た目のせいもあるのか普段他人には優しくしてるからなのかよくモテる 事実部下の最上位精霊達は皆僕に好意を持っている 嬉しいけどちょっと答えるのは難しいかなぁ 一夫多妻ってちょっと...キツそうじゃん?
そんなヘタレと言われそうな僕だが正面の彼からは何処と無く似ている雰囲気がする 親近感湧きまくりだ 間欠泉の如く湧いている
「貴殿は神代最強であるクレシオンの1人なのは重々承知だ 負け戦なのは既に理解している 最高位の神の創造物に勝てると威張るほど我は小物ではない だが言い換えれば神の創造物と戦えるほど素晴らしいことは無い 存分に楽しもうではないか」
「そうか 君ジャンキーなバトル野郎なのか...最近そういう人少なくてねぇ 理解してくれる人が少なすぎるんだ でもここにいた やっぱり世界は広いよ へへ...なんだかこっちまで楽しみになってきたよ」
「そうか?ならば貴殿も我と同類ということだな」
「その通り!」
戦闘狂 戦闘を楽しむちょっとアレな人 僕は敵に敬意を払い正々堂々戦いたいのだがどうしても戦闘欲が出てしまっているらしく戦闘後は表情が狂気的になるのだそうだ
魔王の彼もこの戦闘が終われば狂気的な笑みを浮かべるだろう 2人揃って狂気的 なんと恐ろしいことか
「それではこれより新設したここ特殊闘技場にて''魔剣''のダーズガルド・フィンブルゲイザー魔王陛下対''殺戮''のバグルス・ヴァンダルシアの模擬戦を開始します! 行きますよ〜?いいですね〜?レディー...ファイト!」
ゴ〜ン
「っは!」
「せい!」
彼が扱うのはレイピアと見紛う程細く長い碧色のバスターソード
対する僕が手に持つは2振りの黒色片刃の刀
魔王は元は重騎兵隊的な組織に属していたのか漆黒のフルプレートに身を包んでいる 派手な模様はなく重要箇所には他の部分より硬い素材が融合されている 高い錬成技術と長い時間をかけて生み出された物だろう 1部分にのみ別の素材を用いる 神代では錬成の基本だがこの時代では高度な技術だ
「人体では再現出来ぬような巧みな剣捌き 正しく神代の技術であろう 円卓で相見える実力を軽く凌駕するその力 さらには一騎討ちますます楽しくなるぞ」
「ほんの少しだけど君は神代でも充分通用する実力じゃないかな?」
「そうか?」
「そうとも」
たった2、3回の打ち合いだけど...僕の二刀を一振の剣で捌くのは至難の技だ 僕の二刀流は二刀流であって二刀流じゃない 一振りの後 距離を取るか追撃するかの一振ではなくどちらも相手を斬るための二振り 独自の意思を持つかの如く一振一振が囮ではなく本命の振りを行う 相手にとって得物が2本じゃない限り鍔迫り合いは愚行 1本しかないのならほぼ同時に弾かなくてはいけない 腕力 動体視力 軸 動き それらが噛み合わない限り僕の二振りを弾くのは不可能に近い ならそれを行えるのはそれ程の猛者ってことだ
ダーズガルドはその細い剣先を活かし素早い突きを繰り出してくる かなり重いであろう鎧をものともせず 捻り 踏み込み しならせ 最低限の動きで最大限の突きを繰り出す どれもが必殺 中途半端な回避や防御では意味を成さない 正しく''魔剣'' 魔法陣か魔法式が刻まれた魔剣ではなく確実に死を齎す魔の剣
直後 殆ど直感だったが何かを感じて距離を取った 彼の手に握られているあの剣はなんだ?
「ふふふ 流石だ この剣を回避するとはな」
「それははなんだ?見た事がない」
「それもそのはず 神代の力は確かに強大だがそれを超えるために数々の技術者が様々な発明を行う 現代この新代暦で魔人族が発明した技術の粋を集めたのがこの剣 ''ニュクス''だ 理論上は神々相手にも戦えるそうだが...所詮神代の中の上辺りだろう」
レイピアのような剣ではない 逆の左手に握られた影を纏った剣 神代に作成された兵器の性能を記した記憶領域には存在しない 初めて見る種 だが纏われたその影には少しだが見える 紛れもなく神性を持っている新代の力だ 神代で感じた影 ただの影でありながらとことんなまでの不気味な気配を持つそれはこの時代ではお目にかかれない代物のはず
彼女はそれを纏っていた 記憶を探れば見えるのは黒の中 触れてしまえば壊れてしまいそうな程に華奢で長く長く闇の如く真っ黒な髪を伸ばした赤眼で異様に伸びた腕全体を影で覆っていた少女
「似ている...」
そう 似ている どうしてもあの女の顔がチラつく あの女を見てから影が嫌いになった 何故か?あの影はアレの眷属だからだ
「さぁバグルスとやら 我はこれより死力を尽くす この度だけは本気で行くぞ!」
「っこい!」
突き 弾く 袈裟固め 拳で弾く 突き 半身で躱す 薙ぎ払い 距離を取られる 追撃 影が迫る 追撃を停止
影は捻れながら槍のように刺突を繰り返す 名を【三傑の影】
アウトレンジでの戦闘が可能 バグルスにとって不利な形勢
ダーズガルドは距離を取り【三傑の影】の攻撃がバグルスの動きを阻害する それを好機と見るやいなや...
「l凍焔獄閻冥魔帝剣 滅尽の刃【怨嗟旋斬】!」
「...っなに!?」
初見の技に防がれた
凍焔獄閻冥魔帝剣 冥府の王であり死神と呼ばれていた冥王神の剣技 元は怨恨や怨嗟 怨念を断ち切るための魂を斬る剣であり 破砕の刃 必滅の刃 滅尽の刃 という3つの型が存在し様々な技として派生していく物だ 魂だけでなく魔力や呪い 感情すら断ち切る究極の剣 普段表に出ず人知れず裏で活動していた冥王神だが1度表に出てしまえばその活躍は恐ろしいものだ
因みにダーズガルドの持つ影を纏った剣が放つ【三傑の影】は呪いが主体となっているので効果は抜群だ
「面白い技であるな だがこれならどうだ」
「影の本質は同じ ならやる事は変わらないさ」
影が刺突を辞め刃の形を形成する 大剣だ
しかし所詮呪いを主体とした影 それを斬るための技には通用しなかった
影か消える(とは言え一時的な物)中から現れたのは真っ黒な十字架 しかも逆向き 悪魔と共に共存している魔人族にとっては日常的な物だが人族からすれば忌避される品物
「ふむ...やはり技術部が示したデータは欠けた計算の結果という事か...ならばこれは用済み やはり頼れるのは己のみ!」
「とても潔いいじゃないか そういうの嫌いじゃないよ!」
お互いに距離を潰しまた攻防を始める 決め手のない攻防 ずっと戦っていたいという欲望がダダ漏れの消耗戦
...が...同じクレシオンシリーズと1部の魔人族以外でこの戦闘を目で追いかけることが出来る者はいなかった
正確には追いついている ただ戦闘の内容を把握出来ていないのだ 黒と灰色が混じった線が交差しているようにしか見えていない 観客席を埋める実力主義な魔人族達には興奮もなくば萎えもない ただポカンと呆けるだけ
魔王が魔人族最強だと知っているだろう バグルスは近衛の隊長より強い副長と同種とでも伝えられているはずだろう でも目の前の出来事に唖然せざるを得ない やはり魔人族も神代から変わったのだ 劣ったのだ
しかしこれを来賓室から見ている者達と言えば...
「流石魔王陛下だ!」
「神代最強と互角とは...」
「なんで加減してるの...?」
「セーフティーとかバカじゃないですか?」
「温い」
「何言ってるのアリサ?バカに決まってるでしょ」
「「えぇ...?」」
僕達の隣に座るお偉いさんであろう魔人族2人はバグルスと互角だと思って賞賛を クレシオンの4機はバグルスに罵詈雑言を
隣に座る魔人族2人困惑中
魔王ダーズガルドは強い ただしそれはこの新代暦での話 神代であれば隊長格止まりだ
それと本気で互角に戦ってるという事は決してない 何故なら彼は''殺戮''だからだ
バグルスは殺すことに特化した機体だからだ
破壊 殲滅 消滅 穿壊の中では唯一対象を絞った言葉だからだ
有機物 生きとし生けるものを対象としたコンセプト それはつまり対生物では絶対的な優位を持つように作られているという事
生物に負ける事は''絶対''にない バグルスの唯一の特権 それは神の権能にも迫る力だ
その特権が齎す力といえば相対した相手に様々な追加攻撃を与えること
詳しくは省くが代表的なもので言えば毒だ 状態異常は追加攻撃では代表的な物だろう
魔人族の体質には毒の耐性はない 飲み続ければ抗体を得るのだがその程度バグルスの特権の前には無意味
既に数十分と打ち合いダーズガルドは切傷も目立っきているが未だ動きが鈍る様子はない
つまりバグルスは本気を出していない それどころか遊んでいるということ
なので...
『バグルス 遊んでないでしっかり戦ってよね ガブリエルがどうなっても知らないよ?』
来賓室中央にあるお偉いさんが挨拶とかに使うのであろうマイクに向かって「遊んでると可愛い愛機を壊すよ?壊しちゃうよ?」と脅す
するとどうだろう
「っな!?【バーンブレイズ】!」
「ぬァァァァァァァァァァ!!!」
ダーズガルドKO
「...っは!?魔王陛下気絶...バ...バグルス選手の勝利!」
「「「「「.....」」」」」
炎系統の魔法では中級に位置する魔法で魔王が敗北したせいなのか 中級魔法なのに上級魔法を超える威に驚いたのか 観客席にいる者達は唖然としている
はっはっは バグルスがちょこっと本気を出せばこんなもんよとほくそ笑みながら僕は隣に座る魔人族の1人 細身褐色茶髪赤眼オーガ?のエボットに「次は何時から?」と問いかけた
「えぇと...ミストボルディア様とオドガルム様の試合は...1時間後となります!」
「了解 なら僕はここで武装の点検しておくから時間になったら呼んでね」
「っは...はい!」
どうやら魔王並ではなくとも地位的にお偉いさんであろうエボットも流石に魔王相手に中級の魔法が決め手になるとは思わなかったのだろうその瞳はハッキリと驚愕を孕んでいた
戦法によっては初級魔法がトドメになったりするからこの程度で驚く者達が実力主義を掲げていると知った僕が驚きたい
んでまぁそれから''ドレッドノート''の点検から始まり借り物に自前の武装にその他諸々といった武装の点検を終える
アリサ 戻ってきて反省中のバグルス いつの間にかいたリーリエと雑談していると区切りがいいところでエボットが戻ってくる もう1時間経った?
「オドガルム様は既に配置についています ミストボルディア様もそろそろ」
「了解 さてといっちょやりますか」
「頑張って下さいね〜」
「オドガルムに負ける筈ないよね」
「何言ってるのバグルス?当たり前でしょ」
っと いつもギリギリまで追い詰められるが最終的には僕が勝ってるのを知っている3人はこう言うが...
「オドガルム様の性能は神代アーティファクトの中では最強と聞いています 同じ機種だとしても勝てぬでしょう」
「然り」
魔人族側はオドガルムとバグルスの実力(半分以下)しか知らないのでこう言っているのだろう
こらアリサ パニッシャー取り出そうとしないの
「ではエボットさん 案内お願いします」
「承りました」




