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女性を助けるため、暴漢を殺めてしまい全てを失ったが、助けた女性が「今度は私が…」と手を差し伸べてくれた。  作者: nayaminotake


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第7話

「では、私どもから池月氏に何点か質問させて頂きますが宜しいでしょうか?」


「認めます」


裁判長からの許可を経てこちら側の質問に映る


「まず、一緒に飲みにきていたもう一人…えっとご気分を悪くされ公園のトイレに駆け込まれたもう一人の同僚の男性はこの時の状況について、何か目撃してますか?」


「いえ、同僚…佐藤はトイレに駆け込んでそのまま寝てしまったらしく事件による公園で起きた騒動も全く覚えてませんでいた」


「それは任意で事情聴取した際に本人の確認が取れてます」


検察の一人が、その時の資料を裁判長へと提出した


「つまり、鳥居氏が「ホームレス狩り」を口にした時、その場には池月さん貴方しか居なかった、そうですね?」


「はい、夜の公園で周囲には人がいませんでしたから…その通りです」


「であれば、貴方の証言については何も証明出来るものはない」


「まぁ、別にボイスレコーダーを持ち歩いてるわけでは無いんで…」


「虚偽の証言の可能性も」


「嘘は言っておりません、誓って!」


「異議あり!弁護側の証人への質問は誘導性が高いと思われます!」


「異議を認めます、弁護側は証人への質問について偏見を向けた内容を控えるように」


「……では、次の質問です」


「貴方は先ほど、「鳥居氏がガド=マウイ氏を殴っているところに警官を連れて駆けつけた」と仰いましたが、事実ですか?」


「はい事実です」


「それは変ですね、こちらの確認したところ警官が駆けつけた時、鳥居氏が角田さん、えっと角田さんというのはガド=マウイ氏に乱暴されそうになっていた「可能性」のある女性ですが…」


「その角田さんに手を差し伸べて悲鳴を上げられてる所だった…と記録されてますが?」


「え、えっと……あっ!そ、そうです、すいません男性が血を流して倒れていたので記憶が前後してしまってました!あぁそうです、鳥居係長が女性に手を差し出して悲鳴を上げられてました!はい」


「それだと、先ほど貴方が「女性の事は見てない知らない」との証言と食い違いますが?」


(よかった…室井先生はキチンと俺の弁護をしてくれてる、イケるぞ!)


「・・・」


池月は俯いたまま何も言えず沈黙している


「裁判長」


見かねた検察側から、証人の退廷が申入れられた


「弁護側もよろしいか?」


裁判長の確認に頷き答える


「検察側、弁護側、裁判官集まる様に」


そして初公判の時と同じように、検察と室井先生らが裁判長の周りに集められ、次回の公判の日程を相談していた。


―――そして


【カンカン】とガベルを叩き


「次回の公判は3日後、来週の月曜に予定します。では本日はこれにて閉廷」


こうして二回目の公判は良い感触で終わることが出来た


「室井先生、本当にありがとう御座います!」


「……まぁ言いましたがこれも仕事なので、ですが次の公判でおそらく最後だと思われます」


先程、裁判長の元へ集まった時に何か言われたのか、室井弁護士は突如そう口にした


「次回の公判にはこちらも証人を用意しないと…」


「大丈夫ですよ、角田さんならきっと力になってくれますよ!」


「…まぁ、わかりました私の方から日時を連絡して証言台へ立ってもらえる様に依頼しますよ」


「よろしくお願いします!」


――実際このときは、自分の勝利を疑って無かった


ただ、今まで俺のことを『俺、鳥居係長のこと本当に尊敬してて!憧れてます』と、言ってくれていた池月の虚偽証言


(なんで池月はあんなデタラメを…)


胸の奥にモヤモヤを抱えた状態で2日間が過ぎ―――


・・・・3回目の公判前日


「ひ、ひさしぶりね良彦さん」


「あぁ本当に久しぶりだな春香」


数週間ぶりに面会に来てくれた春香はどこかよそよそしく、目も俺の方をまともに見ないで周囲を泳いでいた


「(しばらく面会に来れなくて気まずいのかな?)……そっちは変わりないか?」


「え!?あ、あぁ――うん、そうだね特には……」


「そうか……」


その後暫く沈黙が続き


耐え切れなくなった俺の方から話題を振る


「そういえば麻由里ってそろそろ運動会じゃなかったか?」


「えっ!?えぇそうね、いや、実はもう運動会終わったのよ……」


「えっ!?まだ初夏にもなってないじゃないか!?」


「うん、熱中症対策だって……今の小学校ではこの時期か秋に運動会をする所が多いみたい」


「はぁ―――俺も行きたかったな麻由里の運動家」


「そ、そうね……」


自虐ネタで春香が苦笑してくれるのかと期待したが、何故か俯いて口をつぐんでしまった


「……何かあったのか?」


すると春香はバックを広げて一枚の茶封筒を取りだしアクリルごしに俺の前へと差し出した


「これは?」


「・・・・お願いします」


春香は俺の質問には答えず、奥で議事をとる警官へと声をかけ小さな間口から茶封筒を警官に渡した


「奥さん、規則で中を確認させてもらいますが?」


春香は黙って頷く


警官は一瞬だけ春香の方へ視線を向けたがすぐに茶封筒の口をハサミで切り中を覗き込む


反対にひっくり返し振ってみたりしてるが、中には折りたたまれた一枚の紙だけ…


警官が折りたたまれた紙を開き確認すると


「問題有りません」


そう言うと再び茶封筒に紙をたたんで仕舞い俺へと手渡した…そして俺は中を確認する


≪離婚届≫


緑で印字された文字と枠線…そして綺麗な字で書かれた妻の名前


「・・・別れたいって、そういう事か?」


春香は一瞬だけ肩をビクッと震わせ、深々と頭を下げた


「ごめん…なさい」


「理由を聞いても?」


実は警官に封筒を渡した時にそんな気がしていた俺は意外にも落ち着いている自分に少し呆れていた。


「もう……限界なのよ、私も」


「俺は今、自分に掛けられた冤罪を晴らそうと、必死に藻掻いている・・・」


「それは一日でも早くお前や麻由里の元へ帰りたいからだ…」


「ごめんなさい・・・貴方が必死に自分に掛けられた疑いを晴らそうと努力してるのは私も分かってる…だけど、私だって人間よ、周囲の冷たい視線や周り回って聞こえて来る誹謗中傷・・・もう限界なの!」


春香は見たことない程に声を荒げた


「・・・お前たちを辛い目にあわせていることは俺も分かってる・・・だけど、もう少し――」


「わかってる?」


「春香?」


春香は俺のことばを遮り、今まで俺に向けたことのない恨みの籠った眼を向けてきて、言葉に詰まった


「こんな所に閉じ込められてる貴方に何がわかるのよ!?」


「あなた運動会がどうとか言ってたわね、麻由里は運動会に参加しなかった!」


「え?!」


「いえ、「しなかった」じゃないわ、出来なかったのよ!」


「そ、それはどういう…」


春香は一枚の紙をアクリルに押し付け俺に見せた


「!?これは!?」


それは麻由里の運動会での参加希望種目の回答用紙だった


――そこには赤い字でこう書かれていた


『ひとごろしのこどもは、うんどうかいにくるな!』――と


「いちおうは病欠ってことになってるけど・・・わかる、泣きながら私にこの紙を見せてきた麻由里の気持が!」


俺は馬鹿だ・・・この閉鎖的な留置所の中に押し込められ考えるのは自分のことだけ


口では妻のため娘のためと言いながら実際には、愛する二人にとんでもない苦痛をあじあわせていたのだ


「・・・貴方との幸せだった思い出まで苦痛にしたくないの、それは麻由里も同じ・・・」


「わかった・・・お前の言う通りにするよ」


俺は後ろの警官にボールペンを仮その場で離婚届に自分の名を記入した


――警官から記入済みの離婚届の入った封筒を受け取った春香は、憑き物が落ちたかのように穏やかな表情になり


「最後にこんな別れかた・・・本当はしたくなった。例え別れても貴方の無実を信じて応援してるから」


「あぁ、ありがとう。それよりお前らはこれからどうするんだ?」


「街を出るわ・・・苗字を戻して私たちの事をしらない・・・そうね田舎が良いかも」


「そうか」


「それじゃ、もう会う事もないかもしれないけど体に気を付けて」


「お前もな・・・麻由里をよろしく…うっう・・・達者で・・・」


バタンと閉まったドアの音を耳だけで聞きながら俺は机にうつ伏せ泣いた…


この日、俺は最愛の妻と娘を同時に失ったのだ・・・永遠に。






PVの伸びから

カクヨムの方を優先で投稿する事にします。

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