第6話
――2日後の2回目の公判
「では検察側の証人を呼んでも?」
検察官が裁判官へ確認すると、裁判官が俺たちの方へと視線を向け
「良いでしょう、では検察側の証人をここへ」
検察官らが座る席の奥の方の扉が開かれ、証人が入廷してきた
「なっ!?池月!?」
なんと検察側の証人として入廷してきたのはクビになった前の会社の後輩にして部下の池月流星だった
「――誓います」
池月は法廷で嘘偽りなく事実を証言すると宣誓し証言台へと立つ
「まず証人の本人確認からお願いします」
裁判官が形式にそった確認を行う
「はい、私は池月流星28歳、〇〇商事で営業第二課に所属してます、”被告人”である鳥居良彦さんとは以前は上司と部下という関係でした」
「くっ…」
目を掛けていた部下に被告人呼ばわりされ俺の中のプライドはズタズタに切り裂かれ、情けなくも涙が滲んで来た
「では、池月さん何点か質問させて頂きますので「嘘」「偽り」なくお答え下さい」
「はい」
「事件当日、貴方はこちらにいる鳥居良彦被告に誘われ、もう二人の同僚と一緒に都内の居酒屋で飲食をしていた…間違い御座いませんね」
「はい間違い御座いません」
「それは何時頃か覚えてますか?」
「はい、店を予約したのは私ですので……時間は20時に居酒屋に入り、21時過ぎに鳥居さんが会計を済ませ店を出ました」
「……こちらが、その時の居酒屋のレシートになってます、会計時間が20時58分とありますので、証人のs証言とも一致します」
「では続けます、池月さん21時頃に居酒屋を出てからのことを教えてください」
「はい、店を出てすぐ一人が明日用事があるからと先に帰宅しました、私と鳥居さん、もう一人は次にどの店に行こうか――と相談していたのですが、もう一人の同僚が気分が悪いと言って近くの公園のトイレに駆け込んでいきました。」
「それは何時頃かわかりますか?」
「時間を確認したのが次に行く店を検索していた時なので…多分、21時半頃では無いでしょうか?」
「では次の質問です、貴方は同僚の方がお手洗いに行ってる間、どうしてましたか?」
「はい、こちらの鳥居さん…当時は係長だったのですが、係長がかなり酔っておられたのでベンチで座ってまってましょうと声を掛けました」
「!?なっ俺は酔ってなんか【カンカン】」
「静粛に、今は検索側の証言です、異論があれば後ほど弁論の機会を設けますので、その時に述べて下さい」
「証人は続けて」
「はい、鳥居係長はお酒で気分が大きくなっていたのか、公園を見渡すと私にこう言いました」
「『池月、エリートである俺たちで、この公園の浮浪者を始末して少しでも社会を綺麗にしようぜ!』と」
「はぁ!?池月嘘を言うな!!俺はそんな事一言も【カンカン】」
「静粛に!!弁護側が、これ以上裁判の進行を妨げるのであれば、被告人に退廷を命じますよ!」
「た、大変申し訳ございません裁判長!」
(鳥居さん、こまりますよ!勝手なことをされちゃ!)
隣で室井弁護士に腕をつかまれたことで、少し冷静さを取り戻し席に着席する
「池月さん続きを」
「はい、私は当然そのような人道に反することはしてはいけないと鳥居係長を諭しましたが、泥酔されていた鳥居係長は「声がした」と薄暗い公園の奥へと走り去りました」
「私もすぐに後を追ったのですが、なにぶん深夜で街灯も少なく鳥居係長を見失ってしまい」
「でも、鳥居係長の言葉が気になり念のため近くの交番へと向かい駐在していた警察官へ事情を説明して一緒に鳥居係長を探してもらいました」
「そして貴方は被告人を見つけた」
「はい」
「被告人は何をしてましたか?」
「鳥居係長は、ホームレスと思われる男性を思いっきり殴りとばしていました」
「そのとき、被告人が殴りとばした男性に女性が襲われていた…と、いう事ですが池月さんは御覧になりましたか?」
「いえ…そ、その鳥居係長が暴力を振るってる姿があまりに衝撃的で…他はよく見えてませんでした」
「なっ!」
おかしい、そんな訳はない
あの時、池月の連れて来た警官は衣服を乱暴に引きちぎられ怯えている角田さんへと声をかけていた…
その姿を見てないなんてことは有り得ない
(室井先生…池月の証言には矛盾があります…池月が連れて来た警官の事件調書を確認してもらえれば、その時乱暴されかかって怯えていた角田さんの記録があるはずです――)
「ちっ…いえ、わかりました。こちらからの証人への質問の時に確認しましょう」
「(気のせいか?今舌打ちしてなかったか?)…は、はい、お願いします」
その後も検察側からの池月への質問は続く……
――そしてようやくこちらの証人への質問の番が回ってきた




