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女性を助けるため、暴漢を殺めてしまい全てを失ったが、助けた女性が「今度は私が…」と手を差し伸べてくれた。  作者: nayaminotake


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第2話

警察署の取調室で、俺は年配の警察官と対面で座り取り調べを受けていた……


「だから違うって言ってるじゃないですか!!」


バンッ!と机を叩いて身体を乗り出し年配の警官に喰ってかかる


後ろでは俺たちのやり取りを記録するもう一人の警官が気配を殺し機械的にペンを走らせていた


顔を真っ赤にして怒りを露わにする俺のことを見ようともしない年配の警官は、片目をあけ天井の方へ視線をむける


(?……監視カメラ!?)


視線の先の天井の照明の横あたりに監視カメラが設置されていた


後先のことも考え努めて冷静になり、静かに席に腰を下ろす


「えぇ―――と、まず名前は、鳥居良彦とりいよしひこ34歳、東京都練馬区在住、妻、鳥居春香さん33歳、長女、麻由里ちゃん9歳」


年配の警官は資料の束を捲りながら俺の方へ顔を向けることなく淡々と俺の経歴を読み上げた


「へぇ――いい大学を出て大手の商社に入社して……ほう、その若さで既に係長とはな、恐れ入った!」


「……―――」


続けて警官は何枚かの写真に目を通す


「これはこれは、モデルか芸能人と間違えそうな程の美人の奥さんに、なんとも愛らしい娘さんじゃないか!」


「!?くっ……」


テレビなんかでよくみる、被疑者の心理を揺さぶる心理戦だ……


「で?こんな順風満帆で幸せを絵に描いたような人生を送っていた貴方が、なんでホームレス狩なんかしたんだ?」


「だから違うって、何度も言ってるじゃないですか!!」


――そう、俺は今、ホームレス狩りで被害者に怪我を負わせた傷害の容疑で取り調べを受けていた。


「確かに後輩と飲みに行っててお酒も多少入ってましたが、俺はそんな非常識なことしてないですよ!考えたこともない!」


「それに、あの時、男性を突き飛ばしたのはその男性が女性を襲っていたからで、俺は女性を助けようと――!?」


そこまで口にした所で室内のマイクのランプが点滅した為、警官は片手で俺の言葉を制止した


「入れ」


年配の警官はマイクに向かって短くそう答えると、すぐに取調室のドアが開く


「失礼いたします」


バインダーを胸に抱えた若い女性警官が敬礼をしながら部屋に入ってきた


年配の警官は女性警官からバインダーを受け取ると、女性警官の方を見ることなく手で「出て行け」と合図する


「……失礼いたしました」


一瞬だけ目が合った女性警官は俺へ哀れむような視線を送り部屋から出て行った


「ふむ……なるほど――確かに貴方の言う通り女性を襲っていた”可能性のある”男から、”結果的に女性の身を守った”と言うのは事実みたいですね?」


「は?」


なんだ?この含みのある言い方……可能性のある?守ろうとした?


可能性の有無ではなく、あれは間違いなく女性を襲っていた……


『だ、だれか!助けてぇ―――』


深夜人影の無い公園で小さく聞こえた女性の悲鳴……酒に酔っていたから聞こえた幻聴ではない


それに”結果的に女性の身を守った”とはどういう意味…


「こんな偶然もあるんですねぇ――狩ろうとしていたホームレスを殴り飛ばしたら、”たまたま”女性が襲われていた”かも”しれない現場だったなんてねぇ――私も刑事長いですがこんなこと初めてですよ、いやー全く」


「ちょっ!?さっきから何なんです、ホームレス狩りってそんな話どこから出て来るんですか!」


「うぅ――ん、こればかりは俺たちから答えれないんよ証人を保護する意味でね」


「はぁ?証人?何の事ですか!?」


証人?意味がわからない誰がそんなウソの証言を……


こんがらがる頭の中をどうにか整理しようとしてる所で再びマイクのランプが点滅する


「入れ」


「失礼します」


今度は若い男性の警官が敬礼して入室してきた


若い男性警官は一枚の紙を年配の警官に手渡しすぐに退出して行った


「――そうだな、鳥居さん我々の考えてる内容は、こうだ」


「昨日の20時過ぎ、あなたは会社の部下や後輩たち3名を連れ居酒屋に行った…これは事前に予定されていた飲み会だったと複数名から証言が取れてます」


「そして22時過ぎ、貴方は3人のうち1名を見送り残り2名の部下と2件目に行くか行かないかを相談しながら街を歩いていた」


「えぇその通りです」


「そして部下の一人が気分が悪いと言って近くの公園のトイレに駆け込んで行った」


思い出した…確か、あの公園にいたのはそんな理由だった


「そして、もう一人の比較的酔いが醒めていた部下の方と共に公園のベンチに座って待っていると、深夜の薄暗い公園で身を屈め何かをしているホームレスの男性を発見した」


「アルコールで気が大きくなっていた貴方は、面白半分でホームレスなら反撃もしてこないし、通報もしないだろうと安易な考えでホームレスの男性を殴りとばした」


「!?はぁ――?そんな事言ってないし、やってもない!俺は、女性の悲鳴が聞こえたから駆けつけただけで、男性に襲われそうになっていた女性を助けるために男性を突き飛ばしたんだ!殴ったりなんかしてない!」


そう反論するが、年配の刑事には聞こえてないみたいな反応をされ


「貴方が殴り飛ばしたホームレスの男性は、たまたまその時、女性を襲っていた……か、もしく同意の上か分かりませんが女性の服に手をかけていたのは事実ですがね」


「いやいや、同意とか有り得ませんよ悲鳴を上げてたんですよ女性は!ねぇ刑事さん女性に事情を確認して下さいよ!」


「――それは、貴方が指示することでは有りませんよね?」


「それより自分の罪について考えた方がよろいしいのでは?」


「そ、それって―――」


「本件はこれより、傷害事件から殺人事件へと捜査を移行します」




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