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女性を助けるため、暴漢を殺めてしまい全てを失ったが、助けた女性が「今度は私が…」と手を差し伸べてくれた。  作者: nayaminotake


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第12話

山奥のコテージには俺がスプーンで食器の底を掻く音だけが無機質に響く


二人は目の前の料理に手をつけることなくただ黙って俺の食事する姿を見守っていた


二人はどんな表情をしているのか…同情か?哀れみか?


今の俺には、その表情を伺うことは出来ない。


この二人から同情や哀れみの様な視線を向けられると思うと、腹の底にあるドス黒い何かが暴発しそうで…


そう、前に座る二人に向けて――


4年前の公判で俺側の証人として証言台に立つと約束してくれのにも関わらず当日、法廷に現れなかった女


――角田真理


初公判日、理由も告げず突然、俺の弁護を降りた弁護士の女


――滝川花音


何度も繰り返し重ねた接面での彼女らの真摯な対応に全幅の信頼を寄せ、共に裁判で戦ってくれるのだと…


そう信じていた…その全幅の信頼を


コイツらは裏切った


そんな連中に、野良犬のように施しを受けている今の自分がどうしようもなく矮小なゴミに思えてならない


「グフッ!」


余計な事を考えながら食べてると喉に鶏肉を詰まらせしまい、慌ててワイングラスを手にするも中身が殆ど残ってない


スッと目の前の角田さんが自分のワイングラスを俺の前に差し出してきたので、奪うように掴みとると喉に詰まった鶏肉の塊を無理やり胃袋へと流し込む


・・・・・・・・・・・・・・・・


ひと通り食べ終わり胃袋も満足し、残っていたワインを飲みほしゆっくりとグラスをテーブルに置いた。


「・・・・・・・」


何を言えばいいのか分からず、居心地の悪い沈黙の時間が静かなコテージの室内で無為に過ぎていく


「鳥居様、少しお話し宜しいでしょうか?」


食べ終わった食器の片付けから戻ってきた滝川さんがそう俺に声をかけ、新しいワインとワイングラス3つ、テーブルに置き自分の座っていた席の前に立つと

示し併せてないのに角田さんも同じく席を立ち滝川さんの横へと並び立った。


「・・・・・・・」


「まずは御詫びを…」


「大変申し訳ございませんでした」

「申し訳御座いませんでした‥‥」


滝川さんと角田さんはテーブルを挟んだ対面に立ち深々と頭を下げた


「・・・・・・・」


二人の謝罪に何も反応しない俺のことを、角田さんは少し悲しそうな表情で見つめ

静かに滝川さんと一緒に席に着くと、ゆっくりと重い口を開く


「鳥居様にとって私どもは、信頼を裏切った、憎んでも憎み足りない最悪の女なんだと思います。」


「その事を言い訳するつもりは御座いません、鳥居様に助けて頂いたのにも関わらずその正義を当日に証言することが"出来なかった"私は、本当に最低の女なんだと自覚してます、いいかなる誹りも非難も軽蔑も受け入れるつもりです。」


――?…今、この女「証言することができなかった」と言ったか?


「……どういう意味だ」


ここに来て初めて自分の口から言葉が出たことに我ながら驚くが、

今はそんなことより角田さんの言動の真意を確認する必要がある。


説明する事を躊躇っている角田さんを見かね、滝川さんが口を開く


「鳥居様の初公判が控えた前々日……あの日の私たちに起ったことを全てお話しさせて下さい。」


「花音さん!?」


角田さんは、突然語りだした隣の滝川さんを驚いたように見つめその腕を掴む


滝川さんは小さく頷きそっと自分の腕をつかんでいる角田さんの手を解くと、テーブルの上で両手を組み俺の方を真っ直ぐみつめてきた


「まず初公判の前々日、こちらにいる真理さんですが―――」


角田さんが俯きながら青い顔で小刻みに震える


「何者かに連れ去られ、場所も分からない所に監禁されていたんです」


「はぁ?」


予想もしてなかった滝川さんの言葉に思考が追いつかず間抜けな声をあげてしまい、角田さんへと視線を向けた。


相変わらず青い顔で俯き震える彼女


「つ、連れ去られた?いったい誰に!?」


滝川さんは俺からの当然の質問に苦々しく首を横に振る


「わからない……のか?」


「はい、実際に彼女が監禁されていたのは、鳥居様の公判が行われていた期間、そう、刑の執行が行われ横浜の刑務所に移送されるまでの間だけでした」


「はぁ?何が目的でそんな……っ!?」


頭のなかに一つの答えが導きだされるが、はたしてそれが正解なのか…


「いえ、私も鳥居様が思ってる通りの理由だと推測してます」


「つ、つまり俺の証言に角田さんを立たせない…検察側に不利な証言をさせないようにってことか…」


滝川さんは静かに頷き、角田さんは「ワァ――」と顔を両手で覆い泣き出した


「ちょっと待ってくれ、何で俺を!?角田さんを監禁してまで!?意味がわからない」


何で俺なんかを陥れるためにわざわざそんな…有り得ない


――そうだ、普通に考えればわかることだ


彼女はあの角田フーズの社長令嬢、世間の目が怖くて。

「見知らぬ男にレイプされそうになった」なんて風聞が立つのが怖くなって…ただそれだけだろ?


苦しすぎる言い訳…いや、虚言か?出所した俺から恨まれて危害を加えられるかもと恐れて、同情をさそってやり過ごそうって?


「……また」


「また俺を騙そうって……そういうことか?つくづく馬鹿にされた物だな、クククク」


俺の言葉に唖然としながらも悔しそうに唇を噛みしめる滝川さん


「鳥居様が、そのように思われるのは仕方ないと思います……」


「そもそも真理さんの監禁については不可解な点が多すぎます」


俺は黙って滝川さんの説明を聞いていた


――半分は懐疑的に、半分は意地の悪い興味本位で…


「まず、角田家の動きです」


「それは?」


「娘である真理さんが数日も家に帰らず連絡もつかない状況が続いていたにも関わらず、警察に相談することも人を使って捜索した形跡もない…という点」


「もう一つは監禁された真理さんの状況です」


「花音さん…それは―――」


その時、横でグズグズと泣いていた角田さんが滝川さんの腕を掴んで首をふる


「ここからは私が……」


「よろしいのですか?」


「はい……私のトラウマなど鳥居様の味わった苦痛にくらべれば大したことでは有りませんので」


角田さんは両手で涙を拭うと少し崩れたファンデーションをそのままに俺の方へと真っ直ぐ向き直る


「あれは鳥居様の初公判が行われる前々日の仕事終わりでした…」


角田さんは少し苦しそうに、それでも意を決したようにあの日、

自分の身に起った事を俺に語り出した。




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