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女性を助けるため、暴漢を殺めてしまい全てを失ったが、助けた女性が「今度は私が…」と手を差し伸べてくれた。  作者: nayaminotake


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第10話

季節は4度巡り俺の刑務所生活も残すとこ後、数か月となった。


生活態度、刑務作業における姿勢、看守への言動


それらで評価を得ていた俺は、俗に言う「模範囚」と呼ばれるようになっていた。


映画や漫画でよく出て来る、言いがかりをつけて因縁をふっかけて来るような品性の低い囚人はこの刑務所には居ない


それこそ逆に俺の真似をして、自分たちも「模範囚」としての優遇を受けたいと必死に刑務に励んでいた。


周囲にとっての手本、俺はまさに本当の意味での「模範囚」となった


しかし、本来の模範囚とは刑期短縮の恩恵も得る事が出来るはず…


実際に俺以外の模範囚の連中は刑期を短くする恩赦をもらってる人もいた


だが俺にはそんな恩赦の話など一切なかった


それでも良かった…


この塀の外に出て今更なにをすればいいのか


待っている家族もいない、田舎に帰って年老いた両親と暮らそうにも

昨年二人とも養老施設に入ったとの手紙に書いてあったし、そのための頭金に実家と実家の土地を全て売却したということも知らせれていた


それについて何かを言う権利は俺にはない、実家の土地も建物も元々両親の物だし俺が春香と離婚したため、今現在両親の面倒を見る者は誰もいない


俺は塀の中だしな


なので夜寝る前や休憩時間は、刑務所を出てから何をするか…という事ばかり考えてる。


そして刑期が残り1ヶ月を切った頃、久々に両親から手紙が届く



―――良彦へ―――


§ 暫く顔を見てないけど、元気にしてるか


§ ワシ(父)と婆さんが施設に入ってから中々外に出ることが出来ず面会に行けてないこと、本当に申し訳ない


§ それでも良彦が刑期を終え出所してくるのを婆さんと一緒にカレンダーを捲りながら楽しみにしていたんだ…が


§ 良彦、これから先の内容は、落ち着いて読んでほしい


§ まず、婆さんだが痴呆が酷くなってな


§ 今ではワシの事も殆ど覚えてない、――そして


§ お前の事も


ここまで読んで、手から手紙が落ちた…


「母さんが痴呆?…アルツハイマー?俺の事を覚えてない?」


頭を鈍器で殴られたような衝撃を受け一瞬頭の中が真っ白になる感覚…


俺は震える指先で落としてしまった手紙を拾い上げ続きに目を通す


§ ワシも何とか婆さんに自分のお腹を痛めて生んだ子供のことを思い出させようとして写真や携帯の中の動画を婆さんに見せたんじゃが…


§ 婆さんはひどく取り乱してな…


§ 本当にこんな事書きたくないんじゃが、お前のことを「人殺し!」と


§ すまない、あの事件の後で警察や地元の新聞社なんかが家に押しかけてきてな


§ 思えば婆さんの精神が不安定になり始めたのはその頃からだったのかもしれない


§ それでワシらは施設に入ることを決めたんだが…婆さんの容体が一向に良くならなくてな


§ 良彦が出所する時には二人で迎えに行くつもりだったんだが、今の状況では難しそうだ


§ 本当に申し訳ない


§ ワシの携帯の番号は変わってないから、出所したらまず電話してくれ


§ 体を労わって一日でも早く元気な姿を見せてくれ



手紙にはポタポタと涙がこぼれる…まさか、春香や麻由里だけでなく父さん母さんにまで…


だが、これも少し考えれば容易に想像出来たことだ


春香や麻由里だけでなく、世話になった両親にまで取り返しのつかない程の迷惑を


「本当に死ぬべきは、俺のほうだったのかもな…」


手紙を大事に折りたたみ引き出しの中に…覗き込めば沢山の手紙が引き出しに入っていた


奥の方の一つを取りだし中の手紙に目を通す


§ 良彦、私も爺さんもお揃いのスマホにしてみました


§ 携帯ショップで爺さんだけ何時間も若い店員さんに丁寧に教えてもらってたよ


§ 私も前の折りたたみの携帯から写真を移してもらいました。


§ 今度、現像のやり方をしらべて良彦に送ろうと思ってます


§ はやく貴方の顔を見たいわ、キチンとお勤めを果たして胸を張って出所して来るのを心待ちにしてます。


§ 貴方の味方、母より


「母さん……ゴメン、本当にゴメン」


この日、父さんからの手紙は

出所した時に自分の事を出迎えてくれると思っていた両親が、

直前になって自分のことを迎えに来れないって知った時に

俺が悲しい思いをしないようにと、書いてくれた物だということは理解出来た。


それと同時に、今の状態では母とは会えないって事も


父はそれでも小さな望みに掛けて、一生懸命に母親との思い出を蘇らせるため頑張ってくれている。


だが、あくまでも”希望”でしかない


おそらく出所したら父さんは俺と逢うと言ってくれるだろう


支度金と刑務作業で得た僅かなお金があれば、父たちの入ってる施設に出向くことも出来る


だが、果たしてそれで父は、母は、本当の意味で喜んでくれるのだろうか?


俺の起こした軽はずみな正義感で、長年住み慣れた家や土地を追われ、半世紀近く共に歩んできた母の精神まで壊した、この不出来な息子に…


『お勤めご苦労様』


なんて、心から笑って言えるだろうか?いや、今の父にそんな言葉を紡がせる俺は、本当に救いようのない親不孝者なのだろう


「は、はは……アハハ…」


――あぁ俺は、なんで見知らぬ人を助けようなんて思ったんだろう。





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