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女性を助けるため、暴漢を殺めてしまい全てを失ったが、助けた女性が「今度は私が…」と手を差し伸べてくれた。  作者: nayaminotake


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第9話

俺は上告をしなかった。


その為、下された判決を受け入れることになった。


そして俺が服役する刑務所が検察側から提示され即日実行となる。


――神奈川県横浜市にある某刑務所


当然ながら刑務所に大した造詣もない俺は移送中に係の人から概要を教えてもらっていた


横浜にある刑務所は、一般的な犯罪者が服役する刑務所らしい


一般的とはどんな犯罪なのか?その辺は詳しく教えてはもらえなかったが

側に言う「凶悪犯罪」に手を染めたような服役囚はいないらしい


主に前科のない初犯者などが殆どだという


「言い方は悪いが、お前にとっては良かったのかもな…あそこは普通は殺人罪の服役先ではないぞ」


ほんと、何が良かったというのか…


だが、今はもうそれすらどうでも良い


――ただただ、疲れた


無実を証明するために必死になるのも、かつての幸せな生活を取り戻すのも


――生きるのも


正直、どうでも良かったんだ


「今の俺には何も無いんで…」


呟いた言葉が係の男性に聞こえたのか聞こえてないのか

何れにしろ、刑務所に到着するまでは無言の車内となった


到着して刑務所の塀の中に入ると、まず最初に身柄の引き渡しが検察側と刑務所側で執り行われる


次に受付だ


ここでは本人確認と手荷物の検査が実施され刑務所の方で認められた物以外は全て没収される決まりだ


看守の担当の人が綿の手袋をつけ俺のナップサックの中の荷物をひとつひとつトレーの上に出して並べて行く


その中には俺が仕事で使っていた手帳が…そして間には


「ん、これは家族の写真か」


看守が写真を手に取り表裏を何度も裏返して確認していた


「これは持って行くがいい」


そう言うと写真だけ俺に返却しスマホや他のビジネス用品は鞄ごと全て持ち去られた。


次に身体検査


服を全て脱ぎ全裸の状態で検査を受ける。


前までなら恥ずかしいとか思ったかも知れないが、虚無な心に羞恥心など残ってる訳もなく躊躇することなく着ているものを全て脱ぎ捨てた。


身体検査の次はカウンセリングを受ける


「今でも自分に課せられた判決に納得出来てませんか?」


「いいえ」


「相手に対し恨みとか許せない、なんて怒りが湧き上がることはありますか?」


「いいえ」


心療担当の先生はメモと俺の表情を交互に確認しながらカルテを作成している


次に散髪……というかバリカンで丸刈りだ、看守曰くしらみ予防だそうだ


それが終われば入浴…と、言うよりシャワーだ


当然のように看守がつく


身体を拭くと、刑務服、布団、洗面用具が支給され受け取る


続けて写真撮影、例の映画とかで見る服役番号がかかれたボードを持っての撮影


その足で講義室のようなところでパンフレットのような冊子を受け取り刑務所内のルールや日常のルーティーンについての指導を受けた。


次に学力テストだ


それが終わればようやく部屋へと案内される


――大部屋をイメージしていたが、意外にも個室だった

部屋も鉄格子が囲うような檻ではなく、普通にドアのある部屋だ


しかし当たり前だが内側のドアノブには鍵はついてなかった


初日は手続きが連続で疲れた…看守に夕飯まで休んでていて良いと言われたのでお言葉に甘えてベッドに横になる


ふと先ほど返してもらった春香と麻由里と一緒に写った写真を見つめ写真の中で笑う春香と麻由里の顔に指で触れてみる


『・・・貴方との幸せだった思い出まで、苦痛にしたくないの。それは麻由里も同じ・・・』


あの時、春香に言われた言葉が蘇ってくると自然と涙がこぼれる


「麻由里は大きくなっても俺との生活を良い思い出にしてくれる……かなぁ―――うっううう」


周囲の独房に漏れ聞こえないように布団を頭からかぶり嗚咽する


その日の夕飯は部屋にトレーで運ばれてきてベッドの上で食べた


実は、この食事は2日ぶりだ


味も薄く量も少ない...そして、刑務所独特なカビ臭い匂いが食器やトレーから漂ってくる


だが、何であれ腹は満ちた


あれだけ人生に絶望を感じて「どうでもいい」と、口にしながらも身体は栄養を、食い物を


――生きる事を


諦めてはくれない


これから約4年間お世話になる場所だ…歓迎されるかどうかは別として与えられた務めは全うしよう


そんな思考自体が救いようのない”サラリーマン根性”なのだと、この先も良彦が気付く事は無いだろうが。


翌朝…刑務所の朝は早い


ブザーが鳴るとまずは布団を畳み部屋を整頓、ドアの前に立つとロックが外され急ぎ廊下の前に立つ


全員が無言、看守が受刑番号で点呼をとって歩く


それから洗面とトイレ、これも時間は短い


その後、時間をあけず朝食、全員が終始無言のまま決して多くない量の食事を喉の奥へかきこむ


次に、それぞれ割り当てられた作業場へ移動しそれぞれの現場に適した作業服へと着替える


そして午前8時刑務作業開始のサイレンが鳴る


俺は比較的簡単な電子部品の組み立て作業へと配置された


最初に説明されたが、軽い組み立て作業は初犯囚や模範囚があてがわれる事が多いらしい


俺は最初なので、指導の教官がつきっきりで説明してくれた


でも、さすがは簡単と言われる作業だ、2時間も教われば他の囚人らとそんなに変わらないペースで作業が出来た。


――刑務所生活初日で感じたのは、とにかく時間に厳しいってことだ


横浜のこの刑務所だけなのかも知れないが、他の先輩囚人らが私語で談話してる姿など一切みかけない


人によっては息が詰まる環境なのだろうが、親しい人から拒絶され、裏切られ、騙されていた今の俺にはこの沈黙や孤独は、ある意味救いに思えた





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