09 人がゴブリンを産む日
短編作品「逆にゴブリンがこっちの世界に転移してきたら」を分割したバージョンです。
内容は変わりありませんが、少し読みやすくなると思います。
(短編バージョン)https://ncode.syosetu.com/n6469ji/
コウモトと言う女性が、大きいお腹を抱えた女性を連れて壇上に立つと、拳を振り上げて演説を始める。
「ゴブリンは、人間と同じ哺乳類です!彼らに人権を与えるべきなのです!」
コウモトに促され、器量のあまり良くない身重の女性「ナカジマ」が、マイクを持って語り始める。
「私のお腹には、生命が宿っています。ゴブリンの子です。でも、この子・・・『イッセー』と名付けました。イッセーには、人権がありません・・・」
涙で言葉が詰まるナカジマに代わり、コウモトが言葉を繋ぐ。
「政府は安価な労働力欲しさに、ゴブリンを奴隷にしています。許されない犯罪行為です。彼らは、私たちとの間に子を授ける事の出来る、兄弟なのです!」
壇上で拳を振り上げて語るコウモトに、会場は一斉に拍手を鳴らした。
「イッセー君に人権を!」
これをスローガンに、首相官邸前は日夜、行進が続けられた。最初は彼女の熱心な支持者だったものが、日を追うごとに数を増していく。女性の権利を叫ぶ者や、失業者など社会に不満を持つ者が、次々と彼女の理念に共感し、集まっていった。
やがて時は経ち、ナカジマは出産を迎える。
僅か一ヶ月で産まれたイッセーは、人間の遺伝子を持たない、普通のゴブリンだった。いや、普通のゴブリンではあるが、普通では無かった。
蟻が「働きアリ」と「兵隊アリ」を産み分けるように、ゴブリンも「階級」を産み分ける。この現象は、ゴブリン研究者のエンドウによって確認されていた。
例えば「ゴブリンシャーマン」と言われる、通常のゴブリンとは異なる鳴き声を発し、血中の魔素が多い個体や、体格が異常に肥大化した「ホブゴブリン」など、その種は様々で発現の法則は未だ解明されていない。
だが、ナカジマの産んだゴブリンは、今まで発見された、どの型にも属さないものだった。彼の故郷では、これを「ゴブリンロード」と呼び、Sランクの討伐対象と成り得る非常に危険な個体である。
イッセーと名付けられたゴブリンロードは、その残虐性を隠し、出生から半年も経たないうちに人語を話すまでに成長していた。
※登場する人物はすべて架空の人物であり、特定の人間を揶揄するものではありません。




