04 ゴブリンの生態が判明する
短編作品「逆にゴブリンがこっちの世界に転移してきたら」を分割したバージョンです。
内容は変わりありませんが、少し読みやすくなると思います。
(短編バージョン)https://ncode.syosetu.com/n6469ji/
ニホンザルのエイミーは瀕死だった。
生殖器がズタズタなのもそうだが、サガワによって脚の腱は切られ、両手の指はほぼすべて骨折、歯も丁寧に1本1本引き抜かれていた。もう少し救出が遅ければ、エイミーは死んでいただろう。
「それでエンドウさん、彼女の犠牲に見合った手掛かりは、何か掴めたんですか?」
同僚の言葉には棘があった。あの光景に目を奪われていたエンドウを軽蔑しているのだろう。
「いや交尾自体は他の生物と変わらない、ごく普通のピストン運動だったよ。あの暴力性を孕んだ、行動はきっと排卵を促す刺激がメス個体に必要と思われ・・・」
エンドウはやや言い訳じみた解説をするが、実のところ何の手掛かりにもならないと言うのが、本音であった。
だが、この時、実はエンドウは手掛かりどころか、繁殖方法の答えに辿り着いていた。
エイミーの妊娠が発覚したのだ。
この発見は研究者の間で様々な憶測を呼んだ。
「ゴブリンは、ニホンザルの亜種なのか?」
「もともと妊娠していた個体なのでは?」
「他の霊長類でも試して見るべきでは」
エイミーの妊娠から出産までの期間は、僅か一ヶ月だった。母体の中から喰い破られての出産に研究者一堂は驚いたが、それは驚愕に次ぐ驚愕の、入り口に過ぎなかった。
四体のゴブリンがニホンザルのエイミーから産まれたが、全てオス個体だった。つまりゴブリンは基本的にオスしか生まれないということだ。
更に、生まれてきた個体は全てニホンザルの特徴を一切受け継がず、殆ど親個体であるサガワのクローンのようだった。
このことからエンドウが結論付けたのは、「ゴブリンは単為生殖」だった。
これはアブラムシやミジンコに見られる特徴で、生まれた時に既に受精卵を体に宿していると言うものだ。
つまり精液に見えるものは受精卵で、霊長類系の生き物の子宮に入ることが発生のトリガーになるだろうと予想付けた。
この予想を裏付けるように、ゴブリンはニホンザル以外でも発生することが分かり、人工子宮での発生も試みたが、これは駄目だった。
こうしてゴブリンの数をコントロール出来るようになると、彼らへの研究は飛躍的に上昇した。
なにより注目されたのは、その高い知性だった。人間と同等の体型を持ち、乳幼児に相当する行動が出来ると分かると、これを利用する手は無いかと模索する。
ここで、ゴブリンを一気に社会に浸透させることに尽力した、最大の功労者と言える人物が登場する。
※登場する人物はすべて架空の人物であり、特定の人間を揶揄するものではありません。




