03 研究者はゴブリンの謎に迫る
短編作品「逆にゴブリンがこっちの世界に転移してきたら」を分割したバージョンです。
内容は変わりありませんが、少し読みやすくなると思います。
(短編バージョン)https://ncode.syosetu.com/n6469ji/
研究者は、最初に「それ」を見て、非常に困惑した。と言うのも、その生物はどの「科」にも属さない、謎の生物だったからだ。
三体のサンプルはそれぞれ「ジェフリー」「アルバート」「サガワ」と名付けられ、特にサガワは大きな体躯で群れのリーダーと思われた。
「まったくもって、生物界の常識を覆す新発見の、連続だよ」
研究者のエンドウは、頭を掻いてケージの中のサガワに、そう呟く。
エンドウは、彼らが研究所に送られて来てからの三年間は驚きと感動の連続であったことを、改めて思い返していた。
まず、彼らの体内には黒い液体が循環しており、どうも血液の他に、何か地球上には無い異質な物質が混じっていることが分かった。どの研究機関に問い合わせても類似の性質の物質すら見つからなかったことから、これを「魔素」と命名し新発見として発表している。尚、これがどのような機能を持っているかが、未だに解明されていない。
そしてエンドウが何よりも重きを置いたのは、彼らの繁殖方法についてだ。
たった三匹のサンプルは研究するには足りな過ぎるからだ。
まずエンドウが最初に違和感を感じたのは、三匹と死骸となった四匹の合計で七匹、すべてオス個体であったことだ。調査チームに要請を出して、サガワら七匹のゴブリンが見つかった山林をくまなく調査したが、ついにメス個体が発見できなかった。
一度に七匹も個体が発見されているにも関わらず、それ以外のゴブリンが形跡ひとつ見つからないとは、あまりに奇妙だとエンドウは思った。
「まさか雌雄同体か?」
雌雄同体とは、オスがメスの機能を有している、すなわちオスがメス役として、繁殖の役割を担えるというものだ。だが、調査の結果、彼らに子宮に相当する器官が無いことから、その考えは却下された。
次に考えたのは、環境で雌個体に変異する可能性だ。魚類や爬虫類でそのような報告は見られるが、この生物にその可能性は無いだろうか?
流石にこれは突飛な仮説だが、エンドウは本気で検証しようと迷走する時期もあった。
結局、妥当な仮説として行き着いたのは「雌個体が異常に少ないか、あるいは見た目が全然違うので認識出来ない」というものであった。
繁殖についてエンドウは何かの手掛かりにならないかと、藁を縋る思いでサガワに、メスのニホンザルを充てがってみた。
もしかしたら繁殖行動を起こすかもしれないと、僅かな期待に掛けてみた形だ。
「もし繁殖行動が我々の常識を覆すもの・・・例えば生殖器を背中や頭に突き刺すような行動があった場合、メス個体の形状を示す手掛かりになるかも知れない」
ご丁寧に緑色に塗られたニホンザルの「エイミー」は、サガワを見て怯えていた。サガワが彼女をひと目見るなり、獲物を狙う目でヨダレを垂らしたからだ。
(やはり、エサと認識してしまうだろうか・・・)
だが、エンドウの予想に反してサガワはエイミーを襲い始めた。まず両脚の腱を噛み千切ると、動けないエイミーに覆い被さる。
そこからは地獄の様な光景だった。悲鳴をあげるエイミーを、サディストの如く痛めつけながら腰を振るサガワ。
エイミーの悲鳴に、異変に気付き集まってきた研究者達は、目を覆った。
ひとりの研究者が、エンドウにサガワを止めるよう懇願するも、エンドウはその光景を、ウットリとした表情で眺め続けていた。
※登場する人物はすべて架空の人物であり、特定の人間を揶揄するものではありません。




