11 崩壊する身分制度
短編作品「逆にゴブリンがこっちの世界に転移してきたら」を分割したバージョンです。
内容は変わりありませんが、少し読みやすくなると思います。
(短編バージョン)https://ncode.syosetu.com/n6469ji/
タケダの聖域は、思いもしない場所から崩された。今まで静観を決め込んでいたアメリカが、急に介入して来たのだ。
ゴブリンは人間でも愛護動物でも無い・・・という建前も大国の威光には通用せず、日本は国際的に非難されるに至り、ゴブリン保護法を施行するに至る事となった。
つまり、これまで普通に行われていた「電気ショックなどの拷問による使役」は当然のように禁じられ、去勢や身体拘束、そして「自殺装置」の取り付けも禁止となった。
このタイミングでアメリカが介入して来たのは、いくつか理由がある。
一つは、日本が行った壮大な事業を社会実験と見なし、十分にデータが取れたと言うことだ。この珍獣がどのように人間と関われるのか、アメリカもまた興味があったのだ。
そして、もう一つの理由が、ゴブリンの出現により頓挫した「移民」の受け入れ問題だ。
「会社は社員を解雇出来るが、国家は国民を解雇出来ない」という言葉がある。だが、実際は国家が国民を棄てる事は可能であり、アメリカもまた余剰となった国民を棄てたいと考えていた。
そして、その贅肉の廃棄先は日本に決めていたのだが、ゴブリンの社会活用の実験のほうが重要と判断したから、計画を少し遅らせたに過ぎない。
ゴブリン利用の規制が強められた日本は、混乱を極めた。まずゴブリンが全く働かなくなったのだ。それどころか、彼らは略奪や破壊行動を始め、社会のあらゆる機能がマヒしてしまう。
さらにゴブリン業者も、ゴブリンが寿命を迎えるまで世話をする義務が発生し、商売が成り立たなくなり廃業することになる。
違法に放逐されたゴブリンが繁殖すると、いよいよゴブリンは徒党を組むようになり、地方の農村などに被害が大きくなる。
こうなると、政府も流石にゴブリン保護法など言ってられず、自衛隊を派遣した討伐が開始される。
勿論、アメリカは訓練を兼ねた軍事協力を申し出て、さらにタケダも「ゴブリン討伐事業」と称して、民間軍事会社を立ち上げる。
一方で、無害なゴブリンの問題も頭を悩ませた。ゴブリンロードのイッセーが統率を取ることで、ゴブリンは不思議なほど忠実に動くのだ。
だが、イッセーは彼らを労働力として日本に貢献しようとは微塵も考えていなかった。
ゴブリン保護法の適用範囲の下、政府の保護下で悠々と力を蓄えることを選んだのだ。
「同胞共よ、決して働くな、そして奪うな。奴らを奴隷として、我らに仕えさせるのだ・・・」
ゴブリン語で仲間に呼びかけるイッセーの声は、テレパシーのように東京全体のゴブリンに響き渡った。
※登場する人物はすべて架空の人物であり、特定の人間を揶揄するものではありません。




