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私を二番目に選ぶ婚約者に、三度目の機会はありません  作者: 貫井
二番目の婚約者

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2/3

一度目の裏切り

――三週間前。


王宮では、春の訪れを祝う夜会が開かれていた。


その日は、私とアルヴィンの婚約を正式に披露する大切な夜でもあった。


鏡の前で髪を整えながら、私は少しだけ緊張していた。


「お嬢様、とてもお綺麗ですよ」


侍女のマリアが微笑む。


「ありがとう、マリア」


「今夜はグランフォード公爵令息とご一緒ですものね。楽しみでしょう?」


「ええ」


私は素直にうなずいた。


アルヴィンとは幼い頃から交流があった。


彼は昔から優しく、困っている人を放っておけない性格だった。


私が勉強で悩んでいたときも、彼は何度も励ましてくれた。


そんな彼と婚約したとき、私はとても幸せだった。


婚約披露の夜会に向けて、私は彼のために小さな贈り物も用意していた。


王都の職人に依頼した、銀細工のペンホルダーだ。


彼は仕事で書類を書くことが多い。


きっと喜んでくれるだろうと思っていた。


夜会の会場に到着すると、アルヴィンが入口で待っていた。


「エレノア。よく似合っている」


「ありがとうございます。アルヴィン様も素敵です」


彼は私の手を取り、微笑んだ。


その笑顔を見ただけで、準備にかけた時間が報われたような気がした。


「今夜は君と一緒に過ごせるのを楽しみにしていたんだ」


「私もです」


しかし、夜会が始まって間もなく、一人の女性がこちらへ歩いてきた。


リディアだった。


「アルヴィン様!」


彼女は少し慌てた様子で駆け寄ってきた。


「どうしたんだ、リディア?」


「実は……少し困ったことがあって」


リディアは私をちらりと見た後、アルヴィンの袖をつまんだ。


「先ほど、ある方にひどいことを言われてしまったんです。私、一人ではどうしたらいいのか分からなくて……」


「何を言われたんだ?」


「慈善活動について、私の考えは浅いと。せっかく準備してきたのに、皆様に笑われてしまいました」


リディアは目を伏せた。


アルヴィンの表情が変わる。


「誰だ。私が話をしてこよう」


「いいえ、そんなことをしたら余計に大きな問題になってしまいます」


「気にすることはない」


彼は私の方を向いた。


「エレノア、少しリディアのところへ行ってくる」


私はその言葉に戸惑った。


「今からですか?」


「少しだけだ。すぐ戻る」


「でも、今夜は婚約披露の夜会ですよね」


「分かっている。だが、リディアは昔から繊細なんだ。今は私がそばにいてやらないと」


私は彼を見つめた。


「アルヴィン様。私も、あなたと一緒に過ごしたかったのです」


「そんなことは分かっている」


彼は困ったように笑った。


「君はしっかりしているだろう? リディアとは違う。君なら一人でも大丈夫だ」


その言葉に、私は返事ができなかった。


彼は私の手を離し、リディアとともに会場の外へ向かっていった。


私はその背中を見送った。


婚約披露の夜会なのに、私は一人になってしまった。


近くにいた貴族の夫人たちは、心配そうな顔をしながらも、ひそひそと話をしている。


「まあ、婚約披露の日に幼馴染を優先するなんて」


「エレノア様も大変ね」


聞こえないふりをした。


私は笑顔を作り、挨拶を続けた。


夜会が終わる頃になっても、アルヴィンは戻ってこなかった。


馬車に乗り込む直前、ようやく彼が現れた。


「エレノア、すまなかった」


「リディア様は大丈夫でしたか?」


「落ち着いたよ。少し時間がかかってしまった」


「そうですか」


「怒っているか?」


私は窓の外を見つめた。


「少しだけ、寂しかったです」


彼は私の手を握った。


「悪かった。だが、リディアには頼れる人間が少ないんだ。君は理解してくれると思っていた」


その言葉を聞いて、私はうなずいた。


彼を責めたくなかった。


幼馴染を大切にすること自体は悪いことではない。


ただ、私との約束も大切にしてほしかった。


そう思っただけだった。


「次は、私との約束も忘れないでくださいね」


「もちろんだ。約束する」


彼は私の額にそっと口づけた。


そのときの私は、まだ信じていた。


彼が本当に約束を守ってくれると。

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