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ウォークスルー テリトリー2  作者: かさのした


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006 スタート準備(柊色)

~♪

プラチナプラスユーザー向けの体験版のオープニングでメインユーザーの権利となる金の星を一番最初に打ち抜いた柊色(ヒイロ)は、ログインしたローカルエリアで鼻歌交じりに自世界の構築に勤しんでいた。

漆黒の闇に点在する白色(はくしょく)の光、渦の中心の濃いベージュから外側に向けて白く更には薄青いグラデーションとなりながら光る銀河が遠目に幾つも見える。

闇と言ってもローカルエリア内が何も見えないほどの暗闇になることはなく、焦げ茶色の柔らかい質の跳ねて襟元まで伸びた髪、細身で色が白く外見だけ見れば体力があまりなさそうに見える自分の姿は認識できている。

そしてもちろん目の前に並ぶカードもしっかりと認識できる。

「メインユーザーアバターのデフォルトはひよこ?

俺向きじゃない、却下だな。」

上下左右も分からない宇宙を模したローカルエリアで、椅子に座ってでもいるかのように背を持たれさせて足を組み、目の前に浮かぶアバターイメージカードを「趣味じゃない、却下、論外、違う」と次々と弾いていく。

弾かれたカードは宙を飛んで霧散している。

その結果、最後にアップロードカードが残った。

「アップロードカード、プラチナプラスユーザー限定か。

アップロードカード使用時の注意、自作キャラであること、か。

それはそうだ、当り前すぎ。」

フンッと鼻を鳴らしたヒイロは腕をアップロードカードに向けて真っ直ぐに伸ばし、広げた5本の指の中指でカードに触れた。

僅かに揺れたカードから淡い光が漏れ広がり縦横無尽に散らばり出す。

「アップロード元データの場所は個人クラウド、キャラのイメージデータはドラゴン系、もちろん俺の自作キャラだ。」

シュッ

ヒイロの言葉に反応して広範囲に散らばっていた光の塵は瞬時にカードに吸収された。

<アップロードデータ確認>

「ん、なんだ?なんか出てきた、システムからのテキストか。」

<著作権確認>

<OK>

「当たり前だって、俺の自作だと言ったろ。」

<照合>

<不足データがあります。システム補間を許可しますか?>

<OK><キャンセル>

「ん?補間を許するかって?

OKしないとアップロードできないんだろ?形式的な質問面倒だな。」

ヒイロは座った姿勢から起き上がり地に足を付けるように立って、システムから出された補間項目に素早く目を通した。

・・・仕方ないかと、手を腰に添えて首を振った。

「OKだ、オッケー!」

<アップロード完了>

システムからのメッセージ表示と同時にアップロードカードのイメージがヒイロの自作キャラであるドラゴンに変わり、構築世界の球体の周りを数周した後(のち)に中に取り込まれた。

「よし、次だ。」

気を取り直して、椅子(と言っても実態もイメージも無い強いて言えば空気椅子)に尻からドカッッと倒れ込むように座ったヒイロは、片足を膝に上げて頬杖をついた。

「使用カード選択だ。

プラチナプラス向けの世界なんだ、使用カードに制限なんかないだろ。」

ヒイロの発した言葉をキーに、ローカルエリアの漆黒の空間に散らばる小さな光の幾つかが尾を引いて流れだし、ヒイロの前に白いテキストを浮かび上がらせた。

構築世界の選択条件だ。

世界属性タイプ:全許可、人種属性タイプ:全許可、階級属性タイプ:全不可、その他設定:個別選択有、ワープ設定:未

「って、制限あんのか?

何で使用できない属性タイプがあるんだ?」

テキストを指でタップしてリストを表示させると王侯貴族、選民、権力、兵隊などのワードがグレーアウトされている。

「おっと!そうか、そうだった。

最初の全体領域の面積選択後の属性タイプ選択で、面倒だから階級タイプを全不可にしてたな。」

世界の構築はまずはその広さを決定し、その世界の属性タイプを選択することで、ローカルエリアに造形される。

それが、今、ヒイロのローカルエリアに浮かんでいる球体だ。

球体がプレビューされているうちは何度でもやり直すことができるが、属性タイプは一度決定すると後からの変更ができない設定の1つだ。


「こんなゲーム世界でまで上下関係気にするなんてバカバカしい。

って、階級属性タイプだけデフォルトの全不可のままにしてたんだったな、

まあ、そりゃそうか、それ系はグレーアウトされるよな。」

忘れていたことがおかしくケラケラと笑いだしたヒイロはハタッとハトバに頼まれていたことを思い出した。

「おっと、鳩羽《ハトバ》に使用カードのこと頼まれてたよな。

イベントカード系で入れて欲しい奴があるって。」

ヒイロがハトバに聞く限りでは階級属性タイプのイベントじゃないだろうと予想したが、念のために階級属性タイプのイベントカードを呼び出した。

「で、なんだ、動物系?文具系?サソリとか言ってたか?」

ヒイロの前にはイベントカードが3枚までに絞りこまれて並んだが、どれも厳(いか)つく、毒々しいイメージばかりで可愛くない。

やはりこの中には無さそうだ。

「世界属性タイプのイベントカードの方は?

サソリ、と、文具じゃなくて筆のイメージだったか?後なんだ水?」

AND検索でキーが多かったためか、イベントカードが1枚だけヒイロの前に現れた。

「鳩羽(ハトバ)が言ってたサソリの絵の描かれたイベントカードってこれだな。

目のでかいファンシー系サソリで尻尾が筆になってる奴。」

ヒイロはサソリのイベントカードを手に取ると表裏を交互にひっくり返した。

「世界属性タイプの中でも、初期設定(デフォ)でセットされてる奴じゃん。

まあ、いいか初期設定(デフォ)込みでカード使用全部許可な。

~♪」

ハトバとの約束が守れたことに機嫌を良くしたヒイロの周りを尾を引く星が流れだし地球に吸収されていく。

「デフォ+αで追加する奴が多いから、もしかしてどの世界に行っても有るんじゃないか、これ。」

持っていたカードを指で弾いて飛ばすと、それも小さな光に変わり尾を引いて地球の中に吸収されていった。


「よし、カードはこんなもんだな。

次はサブプレイヤーのエリア設定、場所と面積の割り当て。」

指先を回して太い油性マジックペンサイズのペンを出し、親指と人差し指で回転させながらカード設定の光を吸収した後の直径1mほどの青い球体の周りを歩いてみる。

「どうすっかな~。」

数十秒ほど眺め、回していたペンの先を光らせて球体に押し付け、「よっし!」と勢いよく大小8個の閉じられた領域を描ききった。

「テリトリー広さの大小の違いが多少はあるけど、まあ、好きに選ばせてやるから構わないな。」

ペンを放り投げたヒイロは腰を深く落とし左右のひじ掛けに両手を駆けて背もたれに背を預けた。

イメージとしての姿形(すがたかたち)こそないが、重厚感、座り心地、肘の掛け易さなど申し分なく、貴賓を迎えるための高級ソファに座っていると言っても過言ではない、とヒイロは自身のイメージ力を自画自賛し座り心地の良いソファを堪能している。


「さてと、主人公、もう設定済みだけど、これをどうすっかな~。」

背を起こし両膝に肘を乗せてあごの前で両手を組み、ふっふっふっと楽し気に息を漏らす。

「俺の相棒になるタクトって奴、どんな奴か知らないが俺と組めるくらい運がいい奴だろう。

アバターは本人が決めるらしいから俺はタイプを選んどいたけど、それにしても、冒険者、剣士、魔法使い、神官って、何でこの4分類なんだ、足りないだろ?

ヨウキさんが言うに、とりあえず何でもこなす奴ってことだけどなぁ、俺が強すぎるからなぁ。」

腕を組んで30秒ほど唸ったヒイロはカッを目を見開いた。

「よし!ちょっと変更だ。

メインタイプは神官のまま。

保管要素のテイマー、吟遊詩人に商人を追加で、合計3つだ。」

ふっふっふっふっふっ、さらに不敵に笑うヒイロには一つの譲れない思惑がある。

「戦うのは俺に任せておけばいい。

主人公は俺の次に高性能設定だからな、戦う以外の要素でこれくらいがちょうどいいだろう。

なんと言っても、俺が主人公を助ける様を蒔白(マシロ)さんに見せつけて、今彼より俺を選ばせる。」

ハッハッハッハッ!!

宇宙を模したローカルエリアに響くヒイロの笑い声は、エリア内に吸収されすぐに消えていく。

「アップロード」

<アップロードを始めます よろしいですか?>

<OK><キャンセル>

「誤認防止のメッセージ表示と分かってても面倒だな。

オッケー、だ。」

<アップロード開始>

<アップロード完了>


「ん?まだ何か設定足りないか?」

アップロード完了後に出てくるはずの構築世界をスタートさせる許可質問が出てこない。

「設定確認っと、おっと~~、、、サブプレイヤーの制限設定して無かった。

サブプレイヤーのタイプ選択は、個別指定、フォローのみ、フォロー・フォロワーのみ、制限無しのどれかか。

ほんとはハトバやアオバにサブプレイヤー任せたかったのに、スタッフはサブログインできない制限かかってるとか、何だそれって感じだよな。

ヨウキさん権限で外してくれてもいいのに。」

ブツブツ言っていたヒイロだが、考えるのがだんだん面倒になって来た。

「ああ、もう誰が来ても同じだ。

俺に勝てる奴なんかいないから制限無し設定で。

他にも設定忘れ、なんかあるか?」

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