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転生したら……蚊!!??なんでやぁぁぁ!!!  作者: Red/春日玲音


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亜空間収納の使い方……?

さて……と。

冒険者たちが寝静まったのを見計らい、俺はテントの中に忍び込んだ。

目的はもちろん、リアナの血だ。

相変わらず全裸で寝ているリアナ。立派なオッパイを見ても興奮すらしない。完全に諦めた。

「せめてもの抵抗……」とばかりに、その先端近くに針を突き刺した。


「ん……? 不味い」


変な味がする。まるで毒が混じっているような……。


「……って、毒!?」


慌てて顔の近くまで移動し、様子を窺う。


「まずいな、これは……」


どうやら戦闘中に気づかないうちに毒を受け、それが回ってきているらしい。息が荒く、額に汗が浮かんでいる。


「何とかできないか?」


俺は毒を吸い出そうと試みた……が、すぐに限界を感じた。

確かに血を吸えば毒も一緒に抜けるが、体内に回った毒を全部吸い出すには、どれだけの量を吸えばいいんだ? そんなに吸ったらリアナが死ぬだろ!


「どうすればいい……?」


俺はテントの中を飛び回りながら必死に考える。


「俺のスキルじゃ、毒を作って付与することはできても、消すことはできないからなぁ……」


せめて毒耐性や毒無効をリアナに付与できればいいのに。試しに針を刺して何かを流し込もうとしたら、毒が流れそうになって慌てて引き抜いた。


「ダメかぁ……せめて毒消しでもあれば……」


俺はテントを出て、隣のテントへ移動した。

そこでは相変わらず戦士と斥候が絡み合っていた。


「こいつら……仲間が苦しんでいるってのに……」


ムカついた俺は、二人の股間をそれぞれ思いっきり突き刺してやった。

……相変わらず、吐き気がするくらい不味かった。

しばらくすると、二人が急に体をよじり始めた。


「くそ……虫がいやがるのか?」


「待ってろ……今、ポーションを……あれ? どこにやったっけ?」


……そうだ、ポーションだ!

俺は斥候が取り出した小瓶を見つめた。

毒消しがあれば最高だが、普通の回復ポーションでも効果はあるはず。

……あれを運ぶのは、蚊の俺には到底無理だ。

でも、何か手はないか?

考えろ……考えるんだ……!


蚊の俺には、あの小瓶を普通に運ぶことなんて到底できない……。

俺のスキルで使えそうなのは……捕食による亜空間収納だ。

しかしあれは血を吸うスキルに統合されているから、基本的に吸ったものしか収納できない。

せめて瓶の蓋が開いていれば……。

一縷の望みを込めて男たちを見たが、相変わらず絡み合っていてこちらに気づく様子は全くない。


……そうだ、丸呑み! あれで丸ごと取り込めば……。

……いや、無理だろ。

蚊の口針でいくら頑張っても、瓶を丸吞みできるわけがない。せめてスライムみたいに体を柔らかくできれば……。


はっ、そうか! スライムだ!

以前スライムから吸った『形状変化』のスキル。MP不足で全く役に立たず、すっかり忘れていたけど……。

今なら絶倫補正のおかげでMPが2ある。口先の一部だけ変化させるなら……!


俺はポーションの小瓶に近づき、形状変化を発動させた。

口先がスライムのように柔らかく、ゼリー状に変化する。

そのまま小瓶の口を覆い被せ——


「丸呑み!」


すっと、小瓶が亜空間へと消えた。


「これは……いいぞ!」


勢いに乗った俺は、その場にあったものを手当たり次第に丸呑みしていった。

回復ポーション、毒薬、各種状態異常薬とその対抗薬、銀貨数枚……投げナイフはさすがに大きすぎて諦めた。

すると、急に眩暈がした。


「くっ、MP切れか……」


形状変化を解除し、ふらふらとテントの外に出る。

その瞬間、脳内にアナウンスが響いた。


『亜空間調合のスキルを獲得しました』


どうやら、何らかの条件を満たしたらしい。

少し休憩しないと動けないので、その場でたたずみながら鑑定を起動させた。


鑑定によると、亜空間内に調合素材(ポーション類)を大量に収納したことで、スキルが顕現したようだ。

できることは、収納してある素材を使っての調合。目の前にメニューが浮かび上がる。


現在生成可能なもの——

・ハイポーション

・各種毒薬とその毒消し

・どんな毒にも効く万能毒消し

・……強化精力剤


……最後のは、蛇とカエルとクモのエキスとポーションでできるらしい。

うん、見なかったことにしよう。


ついでに『形状変化』についても鑑定してみる。

身体全体を変化させるにはそれなりのMPが必要だが、部分的な変化ならほとんど消費しない。

ただし、自分の身体より大きく変化させると一気にMPが飛ぶ。

今回は口先だけで小瓶を覆った程度だったので消費は少なかったが、MP2では約3分が限界だったらしい。

偶然とはいえ、新たな可能性を見出せたことに感謝しないとな。


俺はテントに戻り、感謝の気持ちを込めて——というか、せめてもの罪滅ぼしに——リアナの胸の先端近くに針を刺した。


「ん……」


リアナの体がわずかにびくっと震えたが、深い眠りの中で意識は浮上しない。

熱を帯びた柔らかい肌に口針を沈めていく感触は、相変わらず不思議と心地よい。

先端の敏感な部分を狙ったのは、血流が豊富で毒消しを効率的に体内に届けられると思ったからだ……。

決して他の理由じゃない。絶対に。


「よし……いくぞ」


亜空間内で生成したばかりの万能毒消しを、ゆっくりと、慎重に流し込み始めた。

透明でわずかに甘い香りのする液体が、口針を通じて彼女の体内へ注がれていく。


一滴、また一滴。

俺の微小な体では一回に運べる量は極めて少ないが、根気強く繰り返す。

毒で荒れていた血流が、毒消しと混ざり、少しずつ正常なリズムを取り戻していくのが、吸血スキルを通じて感じ取れた。


リアナの額に浮かんでいた汗が引いていく。

荒かった呼吸が、徐々に深く、穏やかな寝息へと変わっていく。

頰の赤みも引いて、苦しげに歪んでいた眉が、ふっと緩んだ。


「……ふぅ」


俺は針を抜き、彼女の胸の谷間に軽く止まって様子を窺った。

立派な胸の谷間で羽を休めながら、妙な感慨に浸る。


(蚊の俺が、人間の女を助けるなんて……しかもこんな場所に針刺して薬流し込んで……)


なんだかんだで、リアナには世話になったしな。

魔法のスキルももらったことだし……これくらい、当然の礼儀だ。

リアナの寝顔が、まるで安心したように柔らかく微笑んでいるように見えた。


「よし、助かったか……」


小さく羽を震わせながら、俺はようやく安堵のため息をついた。

……女神様への文句はあるけど、一応感謝もしておくか……。

穏やかなリアナの寝顔を見ながら、そんなことを考えていた。



翌朝。

リアナはすっかり元気を取り戻し、何事もなかったかのように明るい顔で朝食を済ませていた。

昨夜の毒の件など、微塵も感じさせない。

俺が流し込んだ万能毒消しが、ちゃんと効いたようだ。


「よし、今日中に王都に着くぞ!」


戦士の掛け声とともに、冒険者たちは軽快な足取りで森を後にした。

俺はリアナの髪にそっとへばりついた。

普通に飛んでついていくなんて、到底無理だ。

蚊の翅で人間の歩行速度に合わせ続けるなんて、すぐにMPが尽きて落ちるに決まっている。

こうして髪の毛に掴まっているのが、現時点で最も省エネかつ安全な移動手段だった。

(……なんか、石鹸のいい匂いがする。贅沢だな、蚊の分際で)


道中、俺は昨夜に覚えたばかりの新技を試していた。

形状変化で口先を柔らかく変え、通りすがりの薬草や綺麗な水溜まりの水を、こっそり丸呑みしては亜空間収納に放り込んでいく。

薬草は新鮮なうちに収納したい。

水も、万が一の時のために少しずつ確保しておく。

小さな努力の積み重ねが、いつか大きな違いを生むはずだ。


森を抜け、開けた道を半日ほど歩いた頃——

夕暮れの茜色に染まる空の下、ようやく目の前に巨大な城壁が見えてきた。

王都だ。

石造りの威容を誇る城壁は、夕陽を浴びて黄金色に輝いている。

門の付近には多くの冒険者や商人、旅人たちが行き交い、活気にあふれていた。


「……ついに着いたか」


リアナの髪の間で、俺は小さく呟いた。

これでようやく、神殿に行ける。

無責任な女神様に、蚊に転生させたことへの文句をたっぷり言ってやるんだ。


……その前に、街に入れるかどうかが問題だけどな。

俺はリアナの髪にしがみつきながら、ゆっくりと息を吐いた。

心なしか、翅の震えが少しだけ大きくなっていた。

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