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1-3 探り合い


 大きく息を吸い込み、ゆっくりと息を吐く。冷たい空気が肺に充満して、脳が冴え渡っていく。

 深呼吸の後、私はひんやりしたドアノブをかじかんだ手で掴んだ。恐る恐るドアを開けると、温かな空気が部屋から漏れ出てきた。男はコートを脱いで、ワイシャツ姿でソファーに寝転がりテレビを見ていた。暗くて表情がよく見えない。窓から差し込む月明かりとテレビから出る光だけが、この部屋を照らしている。


 「おじゃまします......」


 部屋に入り、ドアを閉める。男は視線をこちらに向け、のっそりと近づいてきた。

 

 「あの、これ......お金とレシートと、水とケーキ。」


 玄関口にて、差し出した袋を受け取ることなく、男はじっと私を見つめている。


 「水。」


 男の言葉に、私は焦りながらお水を袋から取り出す。差し出されたその大きなペットボトルに、男はその切れ長の瞳を少し見開いた。


 あ、お兄ちゃんみたい。

 

 昔、家族で動物園に行ったとき、キリンを見て驚いた兄の表情にとてもよく似ていた。

 しかし、男から感じた人間らしさは一瞬で立ち消え、銅像のような無表情へ戻った。


 私が差し出したペットボトルを受け取るや否や、男は蓋を開け水を一気に半分ほど飲んだ。


 その様子を、私はじっと見ていた。いや、正確に言えば動けなかった。近づいてわかった男の顔は、完璧だった。真っ直ぐ立ち、大きなペットボトルを片手で傾け豪快に飲み干すその姿は雄々しいながらも、どこか優雅で洗練された大人の品位を醸し出していた。その均整な美しさに、私は見惚れていたのだ。


 立ちすくむ私を気にも留めず、男はソファーに戻りどさっと深く座り込む。かすかに聞こえるテレビでは、ヒロインが壮大なカーアクションを繰り広げていた。


 「おい。」


 男の声に、ビクッとなる。見ると、男が手招きしていた。

 私は玄関で靴を脱ぎ、端っこの方に、できるだけ目立たないように揃えて置いた。

 おずおず、一歩一歩、ゆっくり男に近づくと、男はソファーの隣にある小さな椅子の背をポンと叩いた。座れ、ということなのだろうか。


 男と目を合わせないようにしながら、私はおずおず椅子に座る。

 両足をキュッと閉じ、手は袋を持ったまま膝の上で揃える。


 小さいながらも椅子の座り心地は良かった。私はじっと目の前の丸テーブルの木目を見つめる。

 すると、横から男の長い手がにゅっと伸びてきて、私の手から袋をとった。袋からケーキを取り出すと、座ったまま手を伸ばして私の目の前に置く。さっき買った、ショートケーキ。丁寧に持って帰ってきたそのケーキの上に、いちごが綺麗にちょこんと乗っかっている。


 「食えよ。」


 差し出されたケーキに私は狼狽えた。

 私が、食べていいのだろうか。


部屋に入るとき、ノックしなかったのは「私」にそういう習慣が身についていないからです。

可哀想で可愛い子ですね。幸せにしたい。


皆様に質問です。男が切れ長の瞳を見開いた理由、わかりますでしょうか?

どこまで描写すべきかとても迷いました。語りすぎても人物に深みが出ず面白くないなと思いカットしましたが、いかがでしょうか?感想やレビューお待ちしています。


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