1-19:▼足の短い犬
ーVの整備庫ー
サスセッティングの確認をしながら旧高速環状線B3をほぼ一周したエルがVの整備庫へとやってくる。
いつもの場所にEVCを停めるエル。
モーター冷却用のファンが回っていて騒々しい。
「いててて…おしりが…」
リヤサスペンションのセッティング不足と小一時間の高速走行が相まって尻を痛めたようだ。
「やっぱり微妙に硬かったかぁ…とりあえずダンパーだけやっとこ。」
サスにSPを繋ぎダンパー値を【90度マイナス】に再設定する。
「あとは戻ってやろうかな… ・・・ん??」
冷却ファンがある程度モーターを冷やし回転数を下げたせいか、
聞き慣れない犬の鳴き声が整備庫から聞こえる。
「犬?マジで??Vが?」
そっと整備庫の中を覗くエル。
その視線の先には胴長短足で白黒の犬が尻尾を振ってVの目の前に座っている様子が見える。
「待てだ、待て!えーっと…なんだ… よし、いいぞ。食え…」
Vの合図を待ってから勢いよくドッグフードを食べ始める犬の様子が見える。
顔を引っ込め顎に手をやり、しゃがみながらエルが呟く。
「マジか…あのVが犬を飼うなんてウソみたい…」
「ウソだよ、ウソ!!あー、めんどくせぇ!!」
驚き見上げたその先には頭を掻きむしるVが立っている。
「ぎゃーーーっ!!!」
庫内に響くエルの叫び声。
犬が一瞬食べるのをやめ2人の方を見るも気にせずまたすぐ食べ始める。
尻もちをついているエル。
「だーっ!もうびっくりしたーーーっ!!」
「あのヤロウ、久々に顔出したと思ったら、この犬を無理やり押し付けて行きやがった…岩猿が!」
呼吸を整える中でエルが気付く。
「言わ猿…って...え!? Aさん来てたの?!」
「バイクの新セッティング試しに旧環状流しに行くってよ!!サイドカーでも付けて犬も乗せてやりゃいいんだ。」
「何だぁぁぁ…Aさん来るんだったら先にVのところ寄るんだった… EVC見て貰いたかったな…」
「ったくよぉぉぉ… 朝一で雷休みだろうからって連れてきやがった。 ん?なんだMONO。もう食い終わったのか?もう飯はねぇぞ。散歩だ散歩。食ったら運動!」
気がつくと、食事を終えたMONOというウェルシュコーギー・カーディガンが嬉しそうに尻尾を振ってVを見上げている。
「そうだ、はいこれ。KEIさんが渡してくれって。」
「おう、ありがとな!やっぱりこれが無ぇと始まらん!」
渡された保冷ケースから金属の筒を取り出しその蓋を開けると、中には冷えたエスプレッソが満たされている。
それを一気に飲み干すV。
「くーーーっ、気合入ったぜ! ありがとな、KEI。 んじゃま行くか!」
そう言うとVとエルはMONOと共に表へと出て行く。





