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9.甘い駆け引き

「どうすればいいの!何が自分に似合うかなんて分からないわ!」

「では俺が選んでやろうか?」

突然の見知らぬ声に驚き、声をあげようとしたその瞬間、リアの唇にやわらかい何かがおしつけられた。

「―――――!」

目の前には、ミッドナイトブルーの瞳がいじわるそうにリアの碧い瞳を見つめていた。

見た限り男、そしてこの状況、ということは・・・自分の唇におしつけられているものは――――!

キスされていることに気付いたリアはとっさに腕をふりあげようとする。

だが、目の前にいる男に後ろで両腕をがっしり捕まえられているせいで、おもうように動けない。

背には壁があり、逃げ出すことができない。

精一杯体をねじって抵抗するが、リアよりはるかに体格のいい男はびくともしない。

そして未だに続けられるこのキス。もう10秒以上はしているような気がする。

リアの思考は徐々にぼんやりとしてきた。

唇から伝わる熱が、リアの意識を朦朧とさせているのである。

(なに、この感覚・・・。――――そういえば私って、キス、したこと、一度もないわ・・・)

足からも力が抜け、リアは自然とその男にもたれかかる。

すると、それまでリアの唇におしあてられていたものが突然離れた。

「まさかキス1つでこんな風になるとは。どれだけ男への免疫がないんだ、こいつは」

あきれたようにその男は呟く。

(この、声・・・聞いたことがある・・・)

誰だったのだろう、そう思い顔をあげる。

そこでリアはまともにその声の持ち主の顔を見た。

――――漆黒の髪、ミッドナイトブルーの瞳。

(この人・・・あの時の!)

まさにリアが今探している人物であった。

そうやってリアが男の顔をじろじろと見ているとき、この男もリアをじっと見ていた。

「へぇ、意外にもかなりの美人だ。いや、待てよ。どこかで見たような気がするんだが・・・」

「見つけたわ、あのときの男!忘れたとは言わせないわよ!」

朦朧とした意識を振り払い、リアは男に向かって叫ぶ。

すると男はあぁ、と納得したようにうなずく。

「そうか、あのときの女か。そういえばお前みたいな瞳の色で金髪だったな」

あまりにもあっけらかんとしたその言い方にリアはパンチの姿勢に入る。

体術を得意とするリアのパンチはすさまじい。スピードとパワーが両方合わさった、名づけて『リアトルネードパンチ』だ。

「この最低男!」

思いっきり腕を振り上げたリアの拳が男の顔面にあたろうとしたその時、

目の前の男がすっと姿を消した。

「えっ―――――!?」

殴る対象がいなくなったことで、大きく空振りしたリアはそのまま床に体当たりしそうになった。

(ぶつかる!!!)

そう思いぎゅっと目をつぶる。

すると、後ろからぎゅっと力強く誰かに体を抱きこまれた。

「前のときも思ったが、お前威勢がいいな。大の男に殴りかかろうとするなんて」

勢いよく後ろを振り向くと、先ほど突然姿を消した男がリアの体を支えているではないか。

「あなた・・・瞬間移動でもしたの!?」

「いいや、してないぞ?お前がただトロいだけじゃないのか、なぁ」

男がリアの背中をすうっとなでる。

その瞬間、リアの全身にぶわっと鳥肌がたつ。

「な、何をするの!女性の体を、その、簡単に、触らないでくれる!?」

しどろもどろで言い返すと、今度は耳にふっと息を吹きかけられる。

「あっ・・・・・」

思わず声をあげてしまう。

それを聞いた男はにやりと笑い、今度は耳元でそっと囁く。

「なぜ俺がここにいると分かった?」

先ほどまでとは違った、低く、冷たい声。まさにリアがエルマーの家でこの男に会ったときと同じ声音だ。

突然の男の変貌にリアは体を強張らせる。

男は背中を向けているリアを自分の方に方向転換させ、くいっと顎をもちあげた。

またキスされそうな至近距離で男はしゃべりだす。

「お前はさっき『見つけたわ!』と言ったよな?ということは俺を探してこのブラック・モアまで来たんだろう。なぜ今日、俺がここに来ると分かった?」

その場の空気が一瞬で凍る。

リアは恐い、と本気で思った。たとえ女だろうが容赦はしない、と目で言っている。

(なぜここにいるか分かったのかなんて・・・本当のことは言えない)

ならばもっともらしい嘘をつくしかない。

「私のメイドは優秀だから。どんなことでもさくっと調べてくれるの。あなたが今日どこに行くなんて、彼女の情報網を使えば簡単に分かったわ」

「嘘だな」

間髪いれずにつっこまれる。

「お前今、嘘ついているだろう」

(な、なんで分かるの!?演技力にはだいぶ自信があるのに!)

「俺は今日、ここに行くとは誰にも言っていない。そしてここまで俺は徒歩で来た。だから馬車にも乗っていない」

そう言いながら、男は腰から折りたたみ式の小さいナイフを取り出す。

「誰も分かるはずがない。俺をじっと監視していない限り、な。まあ、監視されていることに俺が気づかないはずないから、結局なぜここにいると分かったのか、不思議でしょうがない」

ナイフを首元にそっとあてる。

リアの首元には昨日、この男にやれらた傷跡が包帯で隠されている。

「もう1回、昨日と同じようにしてやろうか?」

ぞくっと全身に寒気がはしる。身体が固まって、口ですら動かない。

昨日は有無を言わさずリアを傷つけたが、今日は相手の反応を楽しみながら脅している。

(助けて、ルナ・・・・・!)

この広すぎる部屋の中では、きっとルナにはリアたちの会話は聞こえてないだろう。

――――でも、ルナならきっと来てくれる!

ぎゅっと目をつぶって心の中で祈る。

すると、突然大量のドレスの中からでてきた、すらりと美しい足が、男に強烈なキックをくらわせた。

「お嬢様!大丈夫ですか!」

「ルナ!」

油断していたのだろう男はルナのキックが背中に直撃し、後ろの壁に叩きつけられた。

リアの首元にあてられていたナイフも吹き飛んだが、ルナが素早くそれを回収する。

やっと自由になったリアはルナにおもいっきり抱きついた。

「きっと来てくれる、って信じていたわ!」

「もちろんです、お嬢様。お嬢様のピンチにはどこにいようと必ず駆けつけてきます!!」

なんとも頼もしいルナの言葉にリアはほっと安心する。

「いってぇ・・・・。メイドがそんなんだから、主人がこんなんになってしまったんじゃないか?」

背中をさすりながら、男は立ち上がる。

「こんなんとは何ですか!お嬢様は世界一強く、美しく、華麗で凛々しい、自慢のお嬢様です!」

「ルナったら・・・、なんだか恥ずかしいわ」

「・・・・なんだ、こいつら」

美しい(?)主従愛を見せつけられた男は、思いため息をつく。

すると、腰から先ほどよりも大きいナイフを取り出す。

それを見たリアは、抱きしめていた手をほどき、ルナの後ろにそっと下がる。

――――後はルナに任せるのだ。

先ほどまでの雰囲気を一変させ、腰からルナ愛用の剣を取りだす。

「1度ならず2度までもお嬢様に刃物を向けたこと、絶対許しません!それにあんなにお嬢様に密着して・・・。未婚の女性になんと破廉恥な!覚悟しなさい!」

ルナが剣を振り上げ、男に斬りかかる。

男はそれをいとも簡単に避け、ルナの剣よりははるかに小さいナイフでわき腹を刺そうとする。

ルナはそれをバック転で避け、体制を立て直そうとしたその瞬間、ルナの視界が真っ暗になった。

男が瞬間移動でもしたようなスピードでルナに近づき、ひじで頭の急所をついたのだ。

あのときも男はこの異常なスピードでルナを気絶させた。

「ルナっ!大丈夫!?」

急いで駆け寄ると、すでにルナの意識はなかった。ぐったりしたように目を閉じて、浅い呼吸を繰り返している。

「これでまた2人きりだな」

突然の声に驚き後ろを振り返ると、そこにはすでに楽しそうに笑っている男がいた。

その笑顔のふるえあがるほどの冷たさに、リアは逃げ出そうとする。

しかし、手足がふるえて思うように動かない。

ルナでさえ、ほんの数分で気絶させてしまうのだ。リアが敵う相手ではない。

「では、教えてもらおうか。どうせここからは逃げられはしない」

けど―――――。

「早く言え。待っているこの時間が惜しい」

このままこの男の言う通りに話すのも嫌だ。

―――ならば、駆け引きをしてみるしかない。

「分かったわ・・・。どうしてあなたがここに来るのが分かったのか話す。けど、その前にあなたが何者なのか教えて」

「お前、今の状況が分かっているのか?」

つまり、無理矢理にでもはかせることができる、と男は言っているのだ。

「何者か教えてくれないんだったら、絶対にしゃべらないわ」

「殺されそうになってもか?」

「ええ、もちろん」

力強くうなずき、男を睨みつける。

「では先ほどのように、キスされそうになってもか?」

「―――!」

ぐっと顔を近づけられ、男のがっしりした手がリアの唇をすうっとなでる。

それだけでリアは強烈な寒気にみまわれた。

さっきから初めてのことばかりで、頭がパンクしてしまいそうだ。リア的にキスやその他もろもろのこの男の行動は容量オーバーである。

とうとうリアの目から一滴の涙が落ちてきた。

(全然上手くいかない・・・。駆け引きとか私には向いてないんだわ・・・)

死ぬ覚悟があると分かってくれれば、名前ぐらい教えてくれるのではないかと思っていたのだ。

―――もう、いや・・・。

リアはゆっくりと目を閉じた。

すると、あわてたような声が聞こえてきた。

「おい、泣くな。こんなことで泣いてどうするんだ。って、聞いてるのか!?――――ちっ、分かったよ、言えばいいんだろう」

えっ、と思い目を開く。

すると、困った顔をしている男がポケットからハンカチを取り出し、それをリアの目元にかぶせ優しくふいてくれているではないか。

「敵の前で怒ったり泣いたり笑ったり・・・。やりにくいな」

男は小さな声でぼそっと呟く。その声はリアには聞こえなかった。

「俺の名前はラディス・フォークナー。これでいいだろう?」

あー、言ってしまった、と男はうんざりしたように壁にもたれかかる。

一方それを聞いたリアはきょとんとしていた。

「ラディス、フォークナー・・・・。――――えっ?フォークナーって、あのフォークナー?」

グレイス共和国で最も有力な貴族。

それは国王から爵位の中で最も位が高い『公爵』をあたえられた、フォークナー家である。

リアの父が以前持っていた『侯爵』よりも1つ上であり、最高位だ。

ということはこの男は・・・・。

「あなたもしかして・・・フォークナー家長男のバークレイ伯爵!?」

すると、男はすっとリアの手をとり、軽い口づけをする。

「改めて、はじめまして。ベレスフォード家のお嬢さん」

そう言って彼はにやりと笑った。

こんにちは、杏樹です。

2日続けての更新ですが、明日からまた学校なので

さっぱり更新がなくなりそうです(おいおい

今回は自分なりに頑張りました(笑


ここまで読んでくださった皆さま。

本当にありがとうございます。

次話も見て下さると嬉しいです。

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