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8.ブラック・モア

ルナ・・・行くわよ―――て言いたいけど、ちょっと待って!」

門番からは見えない位置に2人でしゃがみこむ。

「なんですかお嬢様?」

大きい声でしゃべると、あの門番に聞こえてしまうので2人は小声でしゃべる。

「よくよく考えたけれど、私間違ってたかもしれないわ」

いきなりそう言いだす主をルナは不思議そうに見る。

「何をですか?」

「ここって貴族が行くような場所じゃないって1番最初に言ったわよね?」

「はい、確かにそう言いました」

「でもそのあと『表』の人間が行くような場所じゃないって言ったわよね?」

「はい・・・言いましたね」

「これって『表』の貴族が行くような場所じゃないってこと?」

「えっと・・・・」

ルナが言葉をつまらす。

「この建物とあの門番の恰好を見る限り、私たちこんな恰好じゃ入れないんじゃないの!?」

「あっ!!」

確かに、とようやくリアの言いたいことを理解する。

つまり、リア達はなんとも馬鹿な勘違いをしていたのだ。

普通のリアならばもっと早く気付きそうなのだが、やはり昨日のこともあり調子が悪いのだろう。

ルナもリアと同様、招待状のことで忙しかったため、そこまで考えられなかった。

つい、リアの言う通りに着替えてしまったが、確かにこの恰好はひどい。

一言で言えば―――ぼろい。

あの門番でさえ、高そうなスーツを着ているのだ。

なんという失態。

「お嬢様・・・すみません」

申し訳なさそうにルナが言う。

「ううん、私のミスよ。でも――ここで何か言っててもどうにもならないし・・・。覚悟を決めていくしかないわね。招待状にはしっかり私の名前が書いてあるし、私が貴族だって分かるんじゃないかしら」

「はい・・・行くしかありませんね」

「よし!じゃあ行きましょう」

ばっと立ち上がり、切り替える。

庶民の自分ではなく、

―――貴族、の自分に。



「ごめんなさい。通していただけるかしら?」

毅然とした態度で言い放つ。

恰好とは違ったその厳かなオーラが育ちの良さをにおわせる。

「招待状はお持ちですか?」

なんともいかつい顔をした門番の1人が問いかける。

すると、横に控えていたルナがすっと前にでて、門番に招待状を渡す。

それをさっと見ると、静かに自分の懐にしまう。

先ほどまで扉の前に立ちふさがっていた門番がリアのために道をあける。

「ベレスフォード様、どうぞお入りください」

―――成功。

内心つぶやき、扉に手をかける。

その時、ふともう一人の門番が口を開く。

「中に入られたら着替えの方をよろしくお願いします。控えの者にさせますので」

やはりこの恰好では駄目なのだろう。

しかしそこまでしてくれるとは。

「ありがとうございます、ぜひ頼みますわ」

そう言って、ルナが開いた扉の中に入っていく。

そのあと、リア達は中にいたメイドにつれられ、ある部屋の中に入る。

開けられたドアの中から部屋に入るとそこには―――膨大な数のドレスや小物が置いてあった。

「す、すごい・・・」

なんともきらびやかな衣装に圧倒される。

リアの家にも昔はたくさんあったが、とっくにお金に換金されているので、1着もない。

「ではこの中からお好きなものをご自由に着て下さい。私たちは他に仕事があるのでこれで失礼させていただきます」

「あ、ありがとうございます」

さっさと帰っていくメイドに礼を言い、あらためて室内を見る。

「それにしても・・・なんて広い部屋なの」

入ったときにはよく分からなかったが、ここはリアの部屋の3倍ぐらいの広さだ。

その中にぎっしり並んでいるドレスやアクセサリーの数々。

(・・・・・そんなにも儲かっているのかしら。それにしても阿保らしいぐらいのドレスの量ね)

リアが豪華なドレスやアクセサリーをあきれた顔で見ていると、すでに室内を回ってきたルナが興奮した様子でリアに言う。

「お嬢様、左奥にはメイク道具がたくさん置いてありました。せっかくなのでメイクもしていきませんか?」

「そんな悠長にしてる時間なんてないわ。早く着替えて行かないと、あの人帰っちゃうかもしれないじゃない」

そう言うと、ルナがぶんぶんと首を横に振る。

「こんなに豪華なものを貸してもらえるんですよ!?ドレスに合うようにメイクもするのは当然です!」

(す、すごい迫力・・・)

なぜそんなにもメイクにこだわるのだろう、ふとリアは考えた。

没落貴族だと馬鹿にされ、嘲笑われてきたリア。

華やかなドレスはもちろん、メイク道具も買うお金がなく、常にすっぴんだった。

いつもパーティーの隅の方で、綺麗に着飾った同じ年頃の女の子を見ているだけだ。

そんなリアを間近で見ていたルナだからこそ、今、ルナはメイクをしようと言ってくれているのだろう。

(ありがとう、ルナ)

そう、心の中でリアは呟いた。

「じゃあ、お願いするわ。私はあっちでドレスを選ぶから、それ以外のことはルナに任せる。いい?」

「はい!では早速―――あらかじめ良さそうなのをいくつか選んでおきます。あとはお嬢様が選んだドレスに合わせるということで」

「ええ、そうしましょう」

そう言って、ルナと別れる。

室内で別れる、というのはおかしいが、それほどこの部屋は広いのだ。

お互いが隅と隅にいたら、声でさえ聞こえなさそうである。

(本当に・・・広すぎだわ・・・。ドレスの数もやっぱり半端じゃないくらい多いし・・・。ちょっと、選ぶのが面倒くさいかも)

最近、豪華なドレスを着なさ過ぎて、美的感覚が衰えたような気がする。

カフェで働いているときはいつも制服なので、人前での服装を気にした事がない。

「どうしよう・・・、早く決めないと・・・」

そう呟きながら足を進めていると、とうとう部屋の端まで来てしまった。

部屋の端に来るまでには、1着ぐらい良さそうなのが見つかると思っていたのに。

リアはあせりだす。

「どうすればいいの!何が自分に似合うかなんて分からないわ!」

「では俺が選んでやろうか?」

突然の見知らぬ声に驚き、声をあげようとしたその瞬間、リアの唇にやわらかい何かがおしつけられた。

「―――――!」


お久しぶりです。

ようやく登場しましたこの男性。

次の話ではやりたいようにやるので(この男性が)

ぜひ見て下さい。


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