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6.新たな覚悟と決意

ウォーレスの街並みから少し外れたここら一帯を、人々は「荒廃街」と呼ぶ。

華やかな街並みとは一転し、この荒廃街は多くの不良が住みついていた。

そのためまともな農民は、夜中に外出することはほとんどない。

明るい昼間ならまだしも、暗い夜に不良に遭遇してしまったら命が危ないのだ。

それほど荒廃街は名の通り、荒れすさんだ街であった。

しかし、いくら荒れすさんだ街といえど昼間は多少のにぎわいがあり、店をだしている人間も少なくはない。

中でも大通りと言われているところを、女性2人が話をしながら歩いていた。

「まさかこんなところに『ブラックモア』があるなんて思わなかったわ。貴族が行くような所ではない、ってこういうことだったのね」

「一番最初に場所をお教えしたじゃないですか。もしかしてお嬢様、ここが『荒廃街』と呼ばれているのを知らなかったんですか?てっきり私は知っていると・・・。すみません、もっとよくどんな場所か説明するべきでした。」

がくん、とうなだれるルナを必死になだめる。

「大丈夫よ!そこらへんの不良なんて、私の相手じゃないわ。一瞬で再起不能にしてみせるから、期待してて」

「いや、お嬢様・・・どうか大人しくお願いします・・・」

煌々と目を光らせるリアを見て、ルナは長い溜息をつく。

リアの変貌、いや気持ちの切り替えにはいつも驚かされる。

いつもはおしとやかで思慮深さがにじみでているリアだが、こういうときには子どものように無邪気で、どこか楽しそうだ。

ただリアの無邪気さというものは外見だけであり、頭の中では色々と考えているだろうが。

そんな彼女の今の恰好は、普段よりも数倍地味である。

生地が薄く、色も褪せたドレスは今にも破けてしまいそうだ。

足にはなぜか太ももからひざ下10㎝ぐらいまで包帯がまかれていた。

ドレスに隠されていてひざより下の部分しか見えないが、傍から見たら足の悪い少女に見える。

「お嬢様、本当にそのドレスでよかったんですか?動き回っていたらすぐ破けてしまいますよ」

「大丈夫よ。中にもう1枚しっかり着ているから。それよりも、この包帯はなに?」

「相手を油断させるためです。一見足が悪そうに見えるので、そうやって油断したところを仕留めるんです」

「そういうことだったのね。じゃあ私もちゃんと演技しなくちゃいけないわね」

「はい。でもそこは全く心配していません。お嬢様の演技力はバツグンですから」

「そんなにすごいかしら・・・?」

自分ではそんなに上手いとは思わないのだが。

思わず首をかしげる。

「すごいですよ!お嬢様は毎日状況に応じて雰囲気とか変えているじゃないですか」

「えっ?そうかしら・・・。自覚はないのだけれど」

そんな他愛もない話をしている途中、リアはふと違和感を感じた。

「なんだか、今まで通ってきた道よりだんだん綺麗になっているような気がするのだけれど。気のせいかしら?」

そう言われてルナは辺りをぐるっと見回す。

先ほどまで歩いてきた道は舗装されていない、でこぼこな道だった。

しかし、今歩いているところはそんなでこぼこはなく、平らである。

「確かに・・・綺麗ですね。新しく開拓された土地ではないようですし」

道路は綺麗でも、その周りにある民家はかなり古く見える。

ならばここらだけ道路が綺麗なのはなぜなのだろうか。

そんな疑問を抱えつつ、リアとルナの2人は歩調を速めて歩く。

「ルナ、あとどのくらいかしら?」

えっと・・・、と言いながらルナは手に持っていた地図を広げる。

屋敷でルナが情報をもとに書いた地図だ。

「ここを右に曲がって、突き当りの建物です」

「そろそろね・・・。結構歩いたから、少し疲れたわ」

ぎゅうっと背伸びをして、軽く屈伸する。

普通の華やかなドレスを着ていたらまずできないが、今は簡素なドレス。

ずっと使っていた足をほぐすように、軽く足をもむ。

その様子を見て、ルナは少しあせったように、

「大丈夫ですか!お嬢様っ!」

「大丈夫よ。いつも鍛えているんだからこれくらいなんてことないわ。ただ慣れないところを歩いて、少し疲れただけ。もうなんともないわ」

しかし!と声を荒げるルナを制して、しぃっと指をたてる。

「ここはもう『ブラックモア』に近い、危険な場所よ。そろそろお嬢様、って呼んでは駄目。私の事はリアでいいから。分かった?」

はっとしたようにルナは自分の口を押さえる。

いつもは冷静なルナだが、どうやらリアの事となると周りが見えなくなってしまうようだ。

疲れた、なんて言わなければよかったと少し反省する。

過保護なルナがそれを聞けば、大げさに心配しだすことは分かっていたはずなのに。

しかし、これからのことを考えると、少しのつらさでも口からでてしまうのだ。

(なんだか、恐いのよ。あの黒髪の人が・・・)

これがリアの本音だった。

これから会うことになる、あの男性。

エルマーの失踪と関係がありそうなのでここまで追ってきたのだが、いざとなるとやはり昨日のことを思い出して、手が震えてしまう。

―――冷たい瞳だった。

リアの碧い瞳よりはるかに濃い、ミッドナイトブルーの瞳。

彼の瞳に、リアは映っていなかった。

ただ、必死に何かを探そうとしているかのように。

(あなたは一体、誰なの?なぜあの時エルマーの家にいたの?)

これの答えを知るためにも、リアは「ブラックモア」に行かなくてはいけない。

がんばらなくちゃ、リアは震えた両手をにぎりしめた。

その時、ふわりとリナの両手を温かい手が包み込んだ。

「お嬢様、いやリア。小さいころから何でも一人で抱え込むクセは直っていないようですね。何のために私がいると思っているんですか」

ルナがふわりと包み込んでいた手を自分の胸にあてる。

「もう少し私を頼って下さい」

それはいつものようにリアに仕えているメイド、ではなく一回り大きいお姉さんのようだった。

優しく諭す姿はまるで昔のよう―――

「ルナ・・・・。私があなたを頼っていないときなんてないわ。いつも甘えてばかりなのよ、私」

そう言った途端、ルナにぎゅっと抱きしめられた。

背の高いルナはすっぽりリアを包み込む。

「これから先、何があろうと私がお守りします」

その温かさにリアは心から感謝した。



大通りから右に曲がって少し歩いただけで、辺りの雰囲気はがらんと変わった。

人が住んでいなさそうな建物に囲まれたこの道は、光が届かず昼間でも暗い。

もちろんそんなことは考え済みだったので、腰にさげれる頑丈なランプを持っていた2人はすぐにマッチで火をつけた。

ぼんやりとした光が辺りを明るくする。

「不気味ですね・・・。こんなとこに出入りしたがる人なんているんでしょうか?」

「不良にとってはいい環境なんでしょうね。彼らは暗闇を好むから」

―――なぜ不良が暗闇を好むのか。

それは実に単純明快で不愉快なものだった。

曰く、「暗闇にまぎれて人を襲うことができるから」である。

「お嬢・・・リア。ここです。ここが―――『ブラックモア』です」

目線の先には驚くほど大きい屋敷が、不穏な空気をまとって建っていた。

頑丈そうな扉の前には、門番らしき男が2人立っている。

エルマーの行方を捜すため。

そして・・・あの男の正体を知るため。

「ルナ・・・行くわよ―――」

連休中なのをいいことに、

宿題を放棄して小説の更新です(笑

あと1日なのに、全く終わっていないというのは

どういうことでしょうか。

そろそろやばい!

という危機感がでてきたので

今から頑張ってやっていきたいと思います。

今回もここまで読んで下さったみなさま。

本当にありがとうございます。

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