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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子
第10章:神の名が揺れる街でーーヴァルハラ編

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203/215

203 扉と歌声と私

 ヴァルハラ教会。マローの街にあるヴァルハラ神を祀るヴァルハラ教の総本山だ。ただ、ヴァルハラの神様が、今ここでアリオスに抱っこされている黒髪のほっぺぷにぷに少年だと言うことは、私たちチーム【白雪】以外は、誰も知らない。



 ヴァン自身が、自分が神様だと気付いたのもつい先日のことだしね。



「言われたからわかったけど、本当にヴァン君の魔力と一緒だわ……」



 何もかも悟りきった表情で、モナリィが呟いた。ヒーラーとしての経験からか、ヴァルハラ教会を包む魔力結界が、ヴァンの放つ魔力と同じものだと肌で感じているのだろう。



「それにしても、ここは精霊たちも不思議と集まっていますね……」



 精霊使いであるジュークが、小さな精霊たちが教会の奥へと誘われていると教えてくれた。



 私たちは、教会の受付でエンジュに会いにきたことを告げる。毛むくじゃら(ガル)やリオ、アーくんと従魔連れで、教会の中に入っていくのはまずいだろうと、バートにいきなり奥へと進もうとした私とアリオスが止められたことは内緒だ。



「ヴァルハラ神の御許へようこそ……アル様、アリオス様、先日ぶりでございます」



 程なくして受付に姿を現したマリアベルが、私たちチーム【白雪】を迎えに来てくれた。



「こんにちは! 今日は、ヴァン君がもう一度エンジュちゃんの歌を聴きたいらしく、せっかくなので私の仲間【白雪】のメンバーと一緒に来ました。エンジュちゃんに会えますか?」


 私たちの隣でアリオスの従魔毛むくじゃら(ガル)が、『わふっ』と鳴いて背筋を伸ばすと、隣でモナリィの従魔であるスピーダーパンサーのリオも『にゃうん』と背筋を伸ばす。私の従魔アーくんだって『ホッホー』と私の肩で、礼儀正しく背筋をピンと伸ばす。



「あら、お行儀が良いのですね。エンジュも動物たちがお好きなようですから、構いませんよ」



 マリアベルの許可に、なぜかバートが「ハァ……」と胸を撫でおろしながら安堵のため息を吐いた。



 みんな、お利口さんだから、大丈夫だって。相変わらず、バートは心配性だ。ジュークは、……バート以上に困惑した表情で、ガチガチに緊張してました。



「みなさま、どうぞこちらへ」



 マリアベルが私たちを神殿の中へと招き入れた。静かに歩く後ろ姿を追って、毛むくじゃらとリオが尻尾をゆらゆらと揺らしながら、彼女の真後ろをついて歩く。お耳を前にピコピコと、お髭レーダーがピピンと前に突き出して、お鼻をヒクヒクさせながら、中庭から静かに聞こえてくるエンジュの柔らかいメロディを感じているのだろうか?



 私の肩に乗っているアーくんが、ゆらゆら身体でリズムをとっているのだから、従魔たちにとって、よっぽど心地の良いメロディなのだろう。



「師匠、ねえ師匠! 毛むくじゃらとリオのしっぽ、お歌に合わせてお尻ふりふりしてとっても可愛いね!」

「あ? ああ……そうだな」


 私の問いかけに、一拍遅れてアリオスが返事をする。私の肩で、揺れるアーくんをじっと見つめる。



 アリオスの視線が気になり、私が首を傾げると、私とアリオスの間を緑の小さな光が駆け抜けていった。アリオスの視線が、小さな緑の光を静かに追った。



 マリアベルは、残念ながら精霊の姿を見ることはできないようで、追い越していく精霊たちのことには全く気がついてないようだ。こればかりは、もともと持っている魔力の量が違うからかもしれない。



「風の精霊……シルフか」

「……はい、アリオスさん、間違いないです。ここは、どうやら精霊たちが集まる場所のようです」



 ジュークが、アリオスの声に小さく応える。さすが、精霊使いなだけある。エンジュの柔らかな歌声に惹かれるなんて、風の精霊シルフも見どころあるじゃない! 


 ヴァンの鼻歌もそうだけど、ぜひぜひエンジュの綺麗な歌声は、みんなに聴いてもらいたい! 自分のことを褒められているみたいに嬉しくなって、アリオスと繋いでいる右手をブンブンと振る。



 中庭に近づくにつれ、私たちの耳にも微かにエンジュの歌声が、届いてくる。ゴクリと唾を飲み込むジューク。何やら囁きあっているモナリィとバートも、間近で聴いたらもっとびっくりするんじゃないかな?



 マリアベルが、扉の前に立って私たちを振り返る。



「ここが、当教会の中庭に続く扉でございます」



 並んで立つ私たちの表情を見て、マリアベルがコクンと頷いた。



 ギギギィ……



 マリアベルの手によって、重厚な扉がゆっくりと静かに押し開いていった。





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