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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子
第10章:神の名が揺れる街でーーヴァルハラ編

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200 プリンと嫉妬と私

 アリオスは、朝が弱い。



 これは、アリオスと同じお部屋で眠るようになって気づいたことだ。私は、ベッドに潜り込めば、枕の香りに包まれて、すぴーっと瞼が重くなる。対してアリオスは、毛むくじゃら(ガル)だけならともかく、私やアーくんが一緒にお部屋で眠るようになって、人の気配が増えたことで寝付けなくなったのかもしれない。



 早く、現状に慣れればいいのにねと言ったら、思いっきりほっぺをつねられ、「お前の寝相が悪いせいだ」と怒られた。全くもって納得できない!朝、私に抱きついてるのはアリオスなのに……。



 あむ……



 そして、私は、本日の報酬であるプリンアラモードを大きくお口を開けてパクッと食べる。



 はぁ……、なんて幸せ。本当にこの依頼を受けて良かった。




「おい……嬢ちゃん……その膝に乗せているものはなんだ……」



 ようやくお寝坊さんのアリオスが起きてきたかと思ったら、私をジロリと睨んで朝の挨拶ではなくいきなりドスの利いた低いお声で凄まれてしまった。



 どこかで聞いたことのあるセリフだよ。



「師匠! おはようございます? お膝の上ってヴァン君とアーくんだけど?」

「うむ! アリオスも遅いお出ましじゃな」

『ホッホー』

「ああん!」



 ピキッとアリオスのこめかみに青筋が浮かんだ。



「お姉ちゃん……今日のプリンは、美味しい?」

「えへへ……とっても美味しい! 生クリームとカスタードプリンそしてちょっと苦味のあるカラメルソースがお口の中で一つに溶け合って……最高!」



 ギリギリと歯軋りが聞こえてきそうなほど睨みつけてくるアリオスだけど、このプリンアラモードは、ヴァンから頂いた報酬なので、お裾分けはありません! アリオスに見せつけるようにパクリと食べると「チッ」と舌打ちされた。



「おいコラ! クソ餓鬼にクソ悪魔! だから、なんでお前らがそこにいるんだ!」



 寝起きだからって、超不機嫌モードのアリオスに、「まあまあ」と声をかけるバート。ちなみにお隣のソファーに座るモナリィもヴァンからの差し入れのプリンアラモードを食べて、美味しそうにピコピコとツインテールを揺らしている。



「相手は子供っすよ、アリオスさん! そうだ、コーヒー……コーヒーを淹れますから、座ってください」

「ああん? 子どもだと……このクソ餓鬼が?」



 バートもモナリィも知らない。私のお膝の上で、ニコニコと愛想よく可愛らしさ全開のぷにぷにほっぺのヴァンが、実はヴァンパイアで、実は領主様で、実はトランバニア侯爵で……という事実を全く知らない。



「なんぞ……アリオスもプリンアラモードを食べたかったのか?」

「チッ……このクソ餓鬼! 本当に性格最悪だ……」

「だから……相手は子ども……子どもっぽくないとこもあるけど……子ども……かなぁ?」

「子どもじゃねえぞ!」



 あ……言っちゃった。だけど、お膝の上のヴァンは全く気にする様子もなく、「お姉ちゃん」と私のお胸にアーくんと一緒に頬をすり寄せてくる。本当に可愛らしいので、アーくんとヴァンの頭を交互に撫でてあげた。アーくんがふにゃりと私の身体に身を預けてくる。超絶可愛くてぎゅうっと二人まとめて抱きしめた。



「おい! クソ餓鬼とそこのクソ悪魔! テメエらわざとやってるだろう! シメられたいか?」

「アリオスも狭量じゃのう……夜は、お姉ちゃんを抱きしめて寝てる癖に……」

「ハウッ!」



 ヴァンの言葉に一気にお顔を真っ赤にさせたアリオスに、バートとモナリィが、アリオスを見て食いついた。うん、朝起きたらいつも抱っこされてるね。



「違う……違う……嬢ちゃんが勝手に……俺のベッドに……嬢ちゃんが寝相が悪いからじゃねえか!」

「ひ、ひどい……! 私、寝相悪くないもん! たぶん……」

「いんや……あっちへゴロゴロ、こっちへゴロゴロしてるぞ! ベッドから落ちないか毎回ヒヤヒヤしてるからな!」



 初めて明かされる私の寝相の真相。アーくんを見たら『ホッホー』とコクンと頷いた。



「アルさん……大丈夫よ! それくらいでアリオスさまは、アルさんを見捨てたりしない」

「モナリィ!?」



 プリンアラモードをパクリと食べてモナリィがニヤリと笑う。



「そうだぞ! アリオスさんは、男の苦行を喜んで受け入れている 相当な覚悟だぞ!」

「え?」

「バ、バート!」



 バートの言葉の意味がわからずコテンと首を傾げると、アリオスが慌ててバートのお口を塞いだ。お顔がさらに真っ赤に茹で上がるアリオスは、とても新鮮だ。



「クソ餓鬼! お前らのせいだ!」



 アリオスが、ヴァンに吼えるが、お膝の上のヴァンは、どこ吹く風で動じる様子もない。さすが、悠久の時を生きるヴァンパイア。アリオスを完全に手のひらで転がして楽しんでいる。



「仕方ないのう……」



 お膝の上からヴァンがぴょんっと飛び降りた。ヴァンの赤い瞳が冷たい光を帯びてゆらりと揺れる。



 ヴァンが、にっこり微笑んで、お辞儀をした瞬間、ヴァンの周りに霞がかかる。



「えっ?」

「何……何だ!?」



 モナリィとバートがヴァンを見て大きく瞳を見開いた。



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