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元Sランク冒険者は、新人!? 無自覚少女アルの人生やり直しお一人様計画  作者: 枝豆子
第10章:神の名が揺れる街でーーヴァルハラ編

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196 神様の赤面と甘えん坊と私

「ふむ……教会というからには、強力な結界が施されていると思ったが……ここは結界が緩いのではないか?」



 ヴァンの呟きを聞いて、アリオスの口元がニヨニヨと歪む。これは、笑いたいのを必死で抑えている時の表情だ。



「ヴァン君……ここの結界、超強力だよ とても優しくて、強大な魔力で包まれてるから……ほらあそこの御神体が、結界の源だよ」



 目の前の光り輝く強大な魔力を帯びた御神体を指差した。私の指先に視線を誘導されたヴァンが、不思議そうな表情で首を傾げる。



「……お姉ちゃん……ただの魔力を纏った光石じゃん……あの程度なら、僕でも作れるよ?」



 惜しい……。ほぼ正解を導き出してるのに、答えに辿りつけてない。アリオスの肩が小刻みに揺れている。



「ほら……できた! 簡単だよ、お姉ちゃん!」

「あ!」



 アリオスに抱かれた状態で、ヴァンが魔力を練りはじめたかと思ったら、小さな手のひらの中に新たに生み出されたヴァンの魔力を存分に帯びた光り輝く石……。二個目の御神体……できちゃった。



 ドヤ顔のヴァン。その胸を張った姿が、残念すぎて堪らない。



「ぶはっ……ダメだ……耐えられねえ……」

「むむっ! アリオス……我を愚弄するか?」

「ヴァン君……違うから……ふふふっ……ち、違うから……」



 唇を尖らせ不貞腐れるヴァンが可愛すぎて、宥めようとする私までも笑いが込み上げる。私はヴァンの手から新たに生まれた御神体を受け取ると、ゆっくり目の前にあるもう一つの御神体のそばに歩み寄った。



 周りに視線を巡らせても礼拝堂には、私たち三人しか今はいない。



 私は、ヴァンが新たに生み出した御神体をそっと並べて置いた。




「ブハハハハハハ! 新たな伝説ってか!? 嬢ちゃん、面白すぎだろ! エルビスを過労死させる気か?」

「え!? ギルマスが、どうして?」



 ヒーヒーと目に涙を浮かべて笑い出すアリオス。だって、御神体だよ? 二個に増えたら効果が倍増じゃん。



 わざわざ()()()()()()自らが二個目の御神体を作ってくれたのに、一緒に祀ってもらったらいいじゃん!



「クククッ……さて、増えた御神体……エルビスとジェシカがどう慌てふためくか見ものだな……ざまぁねえや」



 青の衣を纏ったシスターたちが、パタパタと大慌てで御神体の周りに集まり出した。そして次々に膝をついて涙を流しながらお祈りを捧げていく。



「ああ……ヴァルハラ神が、たった今ご降臨なされました……」

「……我らの神に感謝を……」



 感極まって咽び泣く青い衣のシスターたちの様子にポカンと大きくお口を開けたヴァンが、ゆっくりと戸惑いの表情を浮かべ私とアリオスの顔を交互に見る。



「ヴァン君……まだ分からない?」

「自分のことを忘れた神様だから、分からねえんじゃねえか?」

「なぬ!?」



 ニヤニヤ、くすくすと笑う私たちを見て、ようやく悟ったヴァンが、もう一度身を乗り出して、二つの御神体に跪くシスターたちを見た。


 二度見、三度見……。繰り返すごとに、ヴァンの頬が赤く染まっていった。



 自分が生み出した光石と、祭壇の御神体から漂う魔力が “まったく同じ”だと気づいた瞬間、ヴァンの肩がピクリと震えた。




 ヴァンは、自らの魔力だったから、自分の魔力を元に張り巡らされた結界には気づかなかった。私は、ヴァンに魔力を循環し供給しているから、ヴァンの魔力を知っていた。アリオスは……野生の勘で知っていたのではなく、SSSランクとして培っていた情報により、最初から知っていた。



「……どおりで聞き覚えのある名だと思った」



 ぽすりとアリオスの胸に顔を埋め、大きな広い胸を小さな拳でポカポカと叩きはじめた。



「……赤い瞳の守護者、ってな 昔の文献にそう書かれてたのを、俺は覚えてただけだ」



 ヴァンの頭をぐりぐり撫でながら、アリオスが静かに呟いた。



 ヴァルハラ神としてヴァンが名乗り出ることはないのだろう。だけど、これからは御神体がこっそりと二つから三つ、三つから四つへと増えたりするんだと思うな。



「うぬぬぬ……お姉ちゃん……僕の頭を撫でて……」

「えへへ……ヴァン君は、とっても良い子です」



 ただ、それだけのこと。



 ヴァンがしばらく礼拝堂にいたいというので、私たちは一番後ろの席で並んで座る。



 マローの住人を「我が子」と慈しむ優しい赤い瞳をした領主様は、嬉しそうにシスターたちを見守っていた。



 そして、私たちの側に青い衣を纏ったシスターが、一人静かに近づいてきた。



 その瞳には、ただの挨拶ではない“決意”の色が宿っていた。





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