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朧月夜に逢ひにゆく(改稿予定)  作者: 斎藤三七子
第五章 院の怒り
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第七十七話

 顕成が手配してくれた牛車がきて正高兄上の邸に戻ると、正高夫妻に加えて、近江にいるはずの父上と母上も揃って迎えに出て来た。

 車を降りて一歩足を踏み出した時、膝がガクンとなってふらついてしまう。

 母上が前に出てきて私を抱きとめた。

「月子! ああ、良かった、無事で……」

 その声はかすれて震えている。父上や兄上も目を潤わせて私を見つめてきた。

 つられて私の涙腺もまた緩んでくる。

 父上も母上も私が心配で近江から来てくれたのか……。

「ご心配をおかけして……」

 声を出した途端ぽろりと涙が落ちた。

「話はまた聞くから今日はゆっくりと休みなさい」

 久しぶりの父上の声。

 その目線は私の後ろに移動した。

「顕成様。この度は世話になったようで……心から礼を言います」

 父上は深くお辞儀をした。

「そんな、先生、やめてください」

「私からもお礼を言うわ。今日はこちらに泊まって下さい。ねえ、正高、いいわよね?」

 母上が兄上を見て目配せするが、兄上が答える前に顕成は、

「いえ、私は自邸に戻りますのでこれで」

と背中を向けて行こうとする。

「顕成、ありがとう」

 私が声をかけると、顕成は振り向いて私をチラッと見て、小さくうんと頷いてから帰って行った。


 翌日――目が覚めた時には既に陽が高く上がっていた。何日もぐっすりと寝ていなかったので、久しぶりに深く眠れたような気がする。

 それから久しぶりの沐浴――

「姫様、少しふくよかになられましたね」

 着替えを手伝いながら吉野がそう言ってきた。

「本当ね。大変な目に遭って帰ってきたから、やつれてるかと思いきやねえ」

 隣に座る母上も吉野に同意する。

「え、太ったって事?」

「あなたは元々痩せすぎだったから、その位でちょうどいいわよ」

「そうですわ」

 連日肉だの菓子だの出され、部屋の中でほとんど動かない生活を送っていたんだから、当然太るわよね。おかげで筋力がなくなったのか、足の機能も衰えたようだ。

 私が足をさすっていると、

「まだ歩けませんか?」

と吉野が心配そうな顔をした。

「ううん。この通り、もう大丈夫よ」

 私は立ち上がって見せた。


 それから夕方まで、髪の毛を乾かすため、また私は横になった。天井を眺めてじっとしていると、

――標的は大殿の道長様だ――

と昨晩顕成が言っていたのを思い出す。

「近江での密談に参加していた人は全員道長様と因縁がある。まずは中将内侍。彼女の両親は、かつて今の帝やその母后に対する呪咀事件に加担したと道長様に疑われて、その結果伊勢に流されたんだ。実際は何も関与していなかったのに」

「だから中将内侍様は道長様を恨んでいるのかも知れないのね」

「僕にそんな事を一度も漏らした事はないけどね。次に、僕の今の養祖母。彼女の母親は昔、中関白家なかのかんぱくけで女房をしていたそうだ」

「中関白家?」

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