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朧月夜に逢ひにゆく(改稿予定)  作者: 斎藤三七子
第五章 院の怒り
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第七十八話

「中将道雅様の一族の呼称だよ。その祖父になる道隆様を始めとして、娘の定子皇后様や伊周様、そして今の権帥隆家様もそうだね。話を戻すと、そこで女房をしていた養祖母の母親は、さっき出てきた呪詛未遂事件の首謀者とやはり道長様に疑われて投獄され、その後亡くなられたとか」

「投獄って、穏やかではないわね……」

「でも養祖母は子や孫にたくさん囲まれて幸せだからと、誰も恨んだりしたていないそうだよ。それに母親を失うきっかけになった呪詛になんて関わりたくないそうだ」

「だから断ったのね。惟義も道長様に恨みがあるのかしら?」

「彼は中将様の命を受けて動いているだけかも知れないね」

「道雅様も内心道長様を恨んでいるという事?」

 呪詛事件で道雅様の父君も失脚したから?

 人を恨むようなお方に見えなかったけど、私を拉致させた事といい、何を考えているのか分からない部分はある。

「あ、でも毒の件は? 道長様の紹介で来た女房が御膳に毒のようなものを入れていたのを、この目で見たわよ」

「その件は――分からない。もしかすると、この線もまだあり得るかも知れないね」

 顕成は、「大殿」から「当子内親王」へ直接向かう矢印を書き加えた。

 そこで私はハッとして顕成を見た。

「私がいない間、当子様に何もなかった?」

「それなんだけど……」

 顕成は顔を曇らせる。

「何か……あったの……?」

「実は……当子様はもう三条のお邸にはいらっしゃらない。二番目の兄君の、あつのり親王が見えて、半ば強引に母君の御所まで連れて行ってしまわれたらしい。上皇の命でね」

「上皇様って、当子様の父君よね? どうしてなの?」

「詳しい事は僕も分からない。君の件を聞くためにお邸に行ったら、片付けなどするために残っていた女房が教えてくれたんだ。丹波殿という女房以外は全員解雇になったって。もちろん君もだけど」

「丹波さん以外って、中将内侍さんもなの?」

「うん、そうなんだ……今は行方が分からない」

 当子様の母君の御所という事は、あの宴の会場だった小一条第か。

 御所が変わること自体は珍しいことではないけど、こんな短期間に、丹波さん以外を解雇して強制的に移されるなんて普通ではない。

 私がいない間に更に何かあったのだろうか。

 自分が解雇になっていた事よりそれが気がかりだった。


 夕方、父上が私の部屋に来た。

「月子、今よろしいか?」

 私はまだ横になっていた。

「はい、大丈夫ですが少しお待ちください」

 吉野が代わりに応え、私を起こし、さっと髪に櫛を入れた。春とはいえまだまだ寒い気候だけど、私の髪はまだ胸の下の辺りまでしか長さがないので、ほとんど乾いてしまっていた。

「実は先程まで顕成様に来てもらって話を聞いていたのだが」

「えっ? 顕成が来てるの? 今はどこに?」

「もう帰ったよ」

「そんな! なんでここに寄らずに帰るかなあ」

 がっかりしていると、父上は眉をひそめてため息をついた。

「お前は全く――とにかく、話を聞きなさい」

「はい」


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